【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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1.似ていて異なるもの

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「千尋の事、好きなんだ」

「多分……」

「千尋は?」

「やめてよ。私は――」

「わかってるよ」

 あきらが私の言葉を遮った。

 あきらは知っているから。

 私が不倫を繰り返していることも、その理由も。

 私が幸せを求めていないことも。



 だから、私から比呂を解放してあげなきゃ……。



 比呂は、私とは違うから。

 似ているのは名前だけ。

「あきらは? 飲み会に来るってことは、あきらにも龍也たつやにも恋人がいないってこと?」

「うん」

 あきらはOLCの仲間の一人、龍也とセフレの関係にある。

 龍也がどう思っているかはわからないけれど、あきらは『セフレ』だと言っている。

 それは、お互いに恋人がいない時だけの関係で、どちらかに恋人がいる間は『他人』なんだそう。

 OLCの飲み会にも、来ない。

 前回は、あきらに恋人がいた。その時の龍也には、恋人はいなかった。

「龍也、しばらく彼女いないよね」

「合コンとかには行ってるみたいだけどね」と、あきらが少し寂しそうに言った。

「龍也と落ち着いちゃえば?」

「それこそやめてよ」

「どうして? 龍也に拒否られたこと、あるの?」と言いながら、私はレタスを口に入れた。

「だから、私たちはそんな関係じゃないって。気が合って、都合がいいだけ」と言いながら、あきらもレタスを噛んだ。

「龍也ってそんなに器用なタイプだっけ?」

「同時進行してるわけじゃないし、楽じゃない? 恋愛は若い子として、隙間を私で埋めるだけでしょ」

「本気で思ってる?」と、私はフォークの先をあきらに向けて、ジロリと睨んだ。

 龍也はあきらが好きなのだ。少なくとも、大学の頃はそうだった。

 けれど、その頃のあきらには高校時代からの彼氏がいて、龍也もあきらへの想いを吹っ切るように彼女を作った。

 私の見る限り、龍也は今でもあきらが好き。

 以前好きだった人とセックスしていながら、恋愛感情を思い出さないなんてこと、あるはずがない。

「あきらとそういう関係になってから、龍也が誰と付き合っても長続きしないの、気づいてないわけじゃないでしょ」

「私のせいじゃないわよ」

「そう? あきらがフリーの時、龍也に彼女がいること、あったっけ?」

 あきらが言葉に詰まった時、店員が料理を運んできた。私の前にシーフードグラタンとパン、あきらの前にビーフシチューとパンを置く。

 ごゆっくりお召し上がりください、と一礼して、会計伝票をテーブルに置くと、店員は足早に去って行った。

 十二時を過ぎて、店内が混みあって来たのだ。

 私はシーフードグラタンをスプーンですくい、息を吹きかけた。

「龍也が彼女と長続きしないの、私のせいかな」と、あきらが呟いた。

「龍也自身が自覚してるかは、わからないけどね」

「私ももう……潮時かな」と、あきらは無理が見え見えの笑顔で言った。

 あきらもまた、龍也が好きなのに、決して認めようとはしない。

 理由は、わかっている。

 わかっているから、ツラい。

 二人は大切な仲間だから幸せになってもらいたい。

 けれど、あきらの心の痛みもわかるから、無責任なことは言えない。

「龍也が納得する?」

「納得も何も……」

「龍也、泣かさないでよね」と、私は龍也の姉か何かになった口ぶりで言った。

「どうして龍也が泣くの!?」

「じゃあ、あきらが泣くの?」

 あきらは泣いたりしない。

 きっと、どんなに泣きたくても、あきら自身がそれを許さないだろう。

 気持ちは、わかる。

「仕事、頑張ろ」と、私は呟いた。

「うん」

 あきらが、笑って頷いた。
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