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しおりを挟む「あれ? まだ二人だけか?」
大和が言った。隣には、さなえ。
「全員来るんだろ?」
「うん」
私はさなえから二人分の会費、二万円を受け取り、封筒に入れた。
「忘年会は会費なしでできそうか?」
「よっぽど高い店にしなきゃ、大丈夫だろ」と、陸が言った。
「次はあきらか?」
「そ」
「じゃ、龍也だな」
「だね」
あきらと龍也の関係は誰も知らないけれど、龍也があきらを好きだったことはみんな知っていて、知らないのはあきら本人だけ。
今の龍也の気持ちはどうであれ、あきらが幹事の時は龍也をペアにする。
あきらはどうしていつも龍也とセットなのかと文句を言うけれど、たまにしか来ないあきらに拒否権はない。
「大斗くんは元気?」
私は隣に座ったさなえに聞いた。
「うん。今ちょっと風邪気味だから、寝るときぐずるようなら早めに帰るかも」
「最近、寒いもんね」
大斗くんは大和とさなえの息子で、二歳。
半年くらい前に会った時は、人見知り全開で大泣きされてしまった。
大学時代のさなえは、一歳年下とは思えないほど幼くて、天然で、その危なっかしさからサークル内ではお嬢様のような存在だった。
見た目も、腰まである栗色の髪に、白やピンクの服を着て、そこにいるだけで癒された。同年代の同性からは『ブッてる』とか『男受けを狙ってる』とか言われてツラい時期もあったようだけれど、少なくとも私と麻衣とあきらは、さなえが可愛くて堪らなかった。
だから、さなえが大和を好きだと知って応援したし、二人が付き合いだした時は嬉しかった。
そのさなえも現在は一児の母で、大和の実家の設計事務所の手伝いもしている。
ネイルと靴が好きで、さなえのアパートの一室は全て服と靴で埋まっていた。
だから、ネイルどころか短い爪に、Tシャツとジーンズ、スニーカーで自転車に乗っている姿を見た時には、本当に驚いた。
さなえがここまで変わるとは。
「あ! 麻衣ちゃん」
相変わらず高くて甘いさなえの声に顔を上げると、麻衣が入ってきたところだった。さなえの声に気が付いて、店員の案内を断った。
「龍也とあきらはまだ?」
「ああ」と、陸が答える。
「今日、寒いね」
麻衣はジャケットをハンガーに掛け、壁のフックに引っ掛けた。
「麻衣ちゃん、先週は大斗がごめんね」と、さなえが言った。
「ううん、大丈夫だよ」と言いながら、麻衣が会費を私に差し出した。
「ん? 大斗?」と、大和。
「ほら! 勝手に私のスマホ弄って、麻衣ちゃんに電話しちゃったって言ったじゃない」
「ああ、言ってたな」
「大斗くんがスマホ弄るの?」と、私は麻衣の会費を封筒に入れながら、聞いた。
「そうなんだよ。動画見たくて」
「今時の二歳児って、みんなそうなの?」と聞きながら、麻衣がさなえの隣に座った。
「うちはあんまり見せないようにしてたんだけどさ」と、大和がため息交じりに言った。
「あ、また私のせいにしようとしてる」と、さなえが少しムッとして言った。
「大和だって――」
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