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17.指輪に誓う永遠
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しおりを挟む「けど、妊娠中だよ? 半端に関わって迷惑をかけるようなこと――」
「――それを承知で誘ってるんだよ。それに、さなえとも相談して、事務所の一部屋を育児室にしようと思ってるんだ。産後も働けるぞ?」
「育児室?」
「そ!」
さなえが声を弾ませる。
「事務所の二階を片付けて、一部屋を育児室にするの。そうしたら、子供を保育園に預けなくてもいいし。大和のお母さんも、仕事より孫の世話の方がしたいって言ってくれて。千尋が手伝ってくれたら、私が二人の面倒を見てもいいし」
「家族経営の個人事務所だからできる働き方だろ?」
「確かに」
「有川も安心するんじゃないか? 自分の目の届かないところで働かれるより、さ」
私は、自分が専業主婦に向いているとは思えない。
最低限の家事は出来るけれど、得意でも好きでもない。
ずっと、がむしゃらに働いてきて、これからもそうだと思っていたから、結婚した今も違和感しかない。
フリーで仕事をすることも考え始めていたから、大和とさなえの誘いは、私にとってこの上ない好条件だ。
「ありがとう」と、私は素直に礼を言った。
「やってみたい」
「ホント! やった!!」
さなえが満面の笑みで言った。
「けど! 友達だからって特別扱いはされたくないの。試用期間中は時給か日給、もしくは出来高制で――」
「――わかった、わかった。それは、おいおい、な?」
「ね、週明けにでも事務所に来てよ。で――。あれ? 麻衣ちゃん、泣いてる?」
さなえが首を傾げる。
私と大和が振り返ると、麻衣が鶴本くんにしがみつくようにうずくまっている。
「あ! おいっ! なに、麻衣を泣かせてんだよ!」
大和が麻衣のそばに駆け寄った。
「麻衣、どうした?」
「俺と離れるのが寂しいってさ」と、陸。
「限定しないでください!」と、鶴本くん。
「俺がいるぞ、麻衣!」と、大和。
「お前はどうでもいいんだよ」
「なんでだよ!」
まったく。
大和と陸の、麻衣への過保護っぷりは十年経っても変わらず。
私とさなえも立ち上がる。
「ちょっと、大和! 静かにして!! 麻衣ちゃん、大丈夫?」
さなえが大和を押し退けて、麻衣の肩に触れる。
「そんなに泣くんなら、イギリスに連れてくぞ、麻衣」
冗談っぽく言っているけれど、陸の目は真剣で、しかも、鶴本くんを見据えている。
昔っから、陸にとって麻衣が特別なことはわかっていた。
麻衣が鼻をすすりながら、顔を上げた。
「行かない……」
「だったら、泣くな」
「だって……寂しいもん……」
「じゃあ、行くのやめっかな」と、陸が言った。
何でもないことのように、ビールを飲む。
「麻衣を泣かせてまで行かなくてもなぁ」
「なに、言ってんのよ! ダメだよ!!」
「じゃあ、笑って送り出してくれよ」
陸が手を伸ばし、麻衣の頭を撫でた。
「うん……」
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