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5章 必要とされない者
5-7 需要はあるのか?
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装飾案のコピーをクリスに渡すと、やはり一度戻って検討してくることになった。
どの装飾案でも魔石に光を当てると見える図案については、妹ちゃんが好きなウサギの顔のシルエットを入れることもできるし、侯爵家の紋章を入れることもできるよー、とメモを書いておく。紋章の場合は紋章が描かれた紙を持って来てねー、と横に添える。
「この二択はウサギになりそうだけど」
クリスがボソッと呟いた。
俺もそう思う。だから、言っておく。
「ウサちゃん案を入れておかないと、ウサギのペンダントにしたらーと妹ちゃんが口にしたら、、、と思ってさあー」
「うっ、ウサギのペンダントをして歩く侯爵関係者か。。。ありがとう、リアム。兄の中では私もペンダントの数に入っているのかわからないが、自分がウサギのペンダントをしている姿は想像したくない」
コレは他人なら笑いごとで済むが、自分に降りかかってくる災難だと思うと笑えないよね。
「さり気に入れるのが大人の女性だよー、とか何とか妹ちゃんをクリス様が言い包めてねー。じゃないと、ウサギのペンダントをするハメになるのは侯爵家の皆様だよー」
うちの砦の職人たちのテンションもダダ下がりになりそうだから、クリス様には頑張っていただこう。
「それはそうと、この魔道具の値段はこのままなの?倍ぐらいにならないの?」
「ふっふっふっ、クリス様のご心配はわかってます。砦がメンテナンス費用をぼったくらないか心配だったんでしょう?砦ならペンダントを損傷しても修理できますし、魔力がなくなったときには魔石交換も致しております。リーズナブルな価格表を用意しました。クリス様用の価格設定なので、他には漏らさないでくださいねー」
クリス様がメンテナンスの価格表を受け取ると、テーブルに突っ伏した。
「リアム、、、そうじゃない、そうじゃないんだ」
おや?アフターフォローが心配だったんじゃなかったのかな?
まあ、いいや。
クリス様の愚痴はナーヴァルかリージェンに聞いてもらおう。
俺はまだ未成年、お酒を付き合える年齢ではない。もうそろそろだけど。
クリス様が倍にしたいと言うから、この魔道具一式が格安だと思っているかもしれないが、かなりお高めだからね。庶民ではまったく手の届かない値段だ。侯爵家だから二倍を払うと言えるのだ。
まったくもってお金持ちは違うね。心にも財産にもゆとりがあるよ。俺には存在しないものだよ。
ペンダントの装飾が決定し、採用者には職人たちに拍手で祝われていたが、特に何か出す予定でもなかった。俺、賞品とかまったく考えてなかった。
仕方ないので、ちっちゃい魔石をあげておいた。
これからもお客様の立場に寄り添って、素晴らしいデザインを作ってください、と。
賞品があるとモチベーションも上がるだろう。今後のためだ。
クリスの妹ちゃんがあの候補六点から選び、侯爵家の紋章ではなくウサちゃんを選択したそうな。妹ちゃんが選択したら、侯爵の決定事項になる。
靴のサイズが徐々に大きくなっているので、妹ちゃんも成長しているとは思うのだが。。。
家庭教師も大勢ついているから、俺より頭は良いと思うのだが。。。
ある意味、馬鹿なのだろうか。
侯爵には絶対聞けないけど。
ペンダントを持つのが侯爵関係者だとすると、大人の男性が多いだろう。女性はいても少数だと思われる。
やはり、隠れたウサギで提案して良かったな。
クリス様が白馬に乗った王子様風の顔でウサギのペンダントをつけている姿を想像すると、、、笑いだしたくなっちゃう。目の前にいられると、笑いを堪えるのが大変だ。うん、それだけはならなくて良かった。
大きい魔石を半分に割り、それを三十等分する。それらを職人たちに渡して、俺の仕事はとりあえず待機となった。
「息子用に一つ欲しい」
馬鹿なことを言い出した親バカがいた。
今は数がねえ、って最初に説明したと思ったが、ビーズには言い忘れていただろうか。
「ビーズ、、、」
「願い事を言うだけは良いじゃんっ。たとえ、実現不可能なことであっても。リアムに言っておけばいつかは購入可能になるかもしれないじゃん」
「ビースに渡したペンダントは貸与なんだが」
「だからー、星に願い事を言うのは自由じゃん。貸与でも月々利用料を払っても、使いたいって奴は他にもいると思うぞ。この通信の魔道具、この街は網羅しているからなあ」
俺は星か?
夜、俺が街に帰っても、連絡がつくのだ。ついてしまうのだ。夜は緊急連絡以外するな、ボケっ、と言ったら、止んだが。
便利な道具は、使う人間が節度を守らないといけないよね。
取説に注意書きを加えておいた。
親しき間にも礼儀あり。相手の都合も考えましょう。
今はA級、B級冒険者のパーティリーダー、そして、砦の関係者がペンダントを持っている。
それは砦からの無償貸与で今後も問題ないだろう。
この街限定の通信機器か。あると便利と言えば便利だろうな。
砦にある工房や店だって、街にある家や店に連絡を取るときに走っていかなくても済む。
購入とすると、魔石は高価だからペンダント一つでもかなりの高額になってしまう。街の住民が気軽に手を伸ばせるかというと難しい金額だろう。
となると、貸与だが。
その借りているペンダントを売ってしまえば、かなりの金になってしまう。が、誓約魔法があれば、勝手に売却するということは不可能になるはずだ。
街の住民用の個々のサイズはそこまでの大きさは必要ない。彼らは魔の大平原には行けないからな。
「やっぱり、中継機ができるかどうかが、この通信の魔道具の数が増やせるかどうかの分かれ道ってところだな」
「魔石を使っているから高価なのはわかるよ。けど、A級、B級冒険者なら買えない価格ではないだろう」
「それは確かに」
俺は庶民的な考えしか持たないからなあ。そもそも、A級、B級冒険者なら上質な魔石と交換でも良いくらいか?
売却の場合は本体価格とは別に、ケータイのように月々の使用料を取るべきだろうか?
回収するのも面倒だから、それなりの金額で永年使用として魔石が壊れるまで使えることにしておいた方が管理が楽か?
それよりも。。。
「先を考えるのも、基地局になっている魔石同士の中継機が作れるかどうか、なんだよなあ。まずは侯爵家の魔道具を作ってみてからだな」
ケータイなら基地局をつなぐ大元の交換局という役割が、俺の考える中継機なのだろうけど、通信の魔道具同士が同じ魔石を使わなければならない時点で作成にかなりの制限が加えられている。その辺りがこの世界でもネックだったのだろう。
「それが成功すれば、俺が魔の大平原に行っていても、リースの様子がわかる日が来るな」
「、、、ソウダネ」
感慨深げにビースが言ったが。
いや、それはどうだろう。完成して、一般にも貸与か販売する頃にはリースは成人していたりして。あまりにしつこく着信すると、連絡入れるのは緊急時だけにしてくれ、とかリースも言いそう。
はて、そのときは砦からの無償貸与品での私的利用はどうしようか。前世でもそんな問題があった気がする。あまりにも長時間の通話は魔石の魔力を喰うからなあ。恋人同士で長話されると困るなあ。
今は使ったとしても、冒険者同士の情報交換ぐらいだろうが。
使い慣れるには、まだまだ時間がかかる。
まずは侯爵家用通信の魔道具。
中継機の実験、だな。
一か月後、クリス様に三十個すべてを砦で試運転してもらった。
砦では確実に動いたという証明である。
光で照らすとウサちゃんの顔のシルエットが浮き出るのも確認してもらった。謎の偽物が出ても、それで真贋を判断してもらおう。それもマネしたら、裏面に番号とともに極西の砦の刻印もしているので大丈夫だろう。
とりあえず、王都で使うつもりらしい。
無事に納品できて良かった。
後ろからのナーヴァルや補佐の目が痛かったが、気にしてはいけないのだ。
実験に使ったことなんか、言わなきゃバレないんだから。
どの装飾案でも魔石に光を当てると見える図案については、妹ちゃんが好きなウサギの顔のシルエットを入れることもできるし、侯爵家の紋章を入れることもできるよー、とメモを書いておく。紋章の場合は紋章が描かれた紙を持って来てねー、と横に添える。
「この二択はウサギになりそうだけど」
クリスがボソッと呟いた。
俺もそう思う。だから、言っておく。
「ウサちゃん案を入れておかないと、ウサギのペンダントにしたらーと妹ちゃんが口にしたら、、、と思ってさあー」
「うっ、ウサギのペンダントをして歩く侯爵関係者か。。。ありがとう、リアム。兄の中では私もペンダントの数に入っているのかわからないが、自分がウサギのペンダントをしている姿は想像したくない」
コレは他人なら笑いごとで済むが、自分に降りかかってくる災難だと思うと笑えないよね。
「さり気に入れるのが大人の女性だよー、とか何とか妹ちゃんをクリス様が言い包めてねー。じゃないと、ウサギのペンダントをするハメになるのは侯爵家の皆様だよー」
うちの砦の職人たちのテンションもダダ下がりになりそうだから、クリス様には頑張っていただこう。
「それはそうと、この魔道具の値段はこのままなの?倍ぐらいにならないの?」
「ふっふっふっ、クリス様のご心配はわかってます。砦がメンテナンス費用をぼったくらないか心配だったんでしょう?砦ならペンダントを損傷しても修理できますし、魔力がなくなったときには魔石交換も致しております。リーズナブルな価格表を用意しました。クリス様用の価格設定なので、他には漏らさないでくださいねー」
クリス様がメンテナンスの価格表を受け取ると、テーブルに突っ伏した。
「リアム、、、そうじゃない、そうじゃないんだ」
おや?アフターフォローが心配だったんじゃなかったのかな?
まあ、いいや。
クリス様の愚痴はナーヴァルかリージェンに聞いてもらおう。
俺はまだ未成年、お酒を付き合える年齢ではない。もうそろそろだけど。
クリス様が倍にしたいと言うから、この魔道具一式が格安だと思っているかもしれないが、かなりお高めだからね。庶民ではまったく手の届かない値段だ。侯爵家だから二倍を払うと言えるのだ。
まったくもってお金持ちは違うね。心にも財産にもゆとりがあるよ。俺には存在しないものだよ。
ペンダントの装飾が決定し、採用者には職人たちに拍手で祝われていたが、特に何か出す予定でもなかった。俺、賞品とかまったく考えてなかった。
仕方ないので、ちっちゃい魔石をあげておいた。
これからもお客様の立場に寄り添って、素晴らしいデザインを作ってください、と。
賞品があるとモチベーションも上がるだろう。今後のためだ。
クリスの妹ちゃんがあの候補六点から選び、侯爵家の紋章ではなくウサちゃんを選択したそうな。妹ちゃんが選択したら、侯爵の決定事項になる。
靴のサイズが徐々に大きくなっているので、妹ちゃんも成長しているとは思うのだが。。。
家庭教師も大勢ついているから、俺より頭は良いと思うのだが。。。
ある意味、馬鹿なのだろうか。
侯爵には絶対聞けないけど。
ペンダントを持つのが侯爵関係者だとすると、大人の男性が多いだろう。女性はいても少数だと思われる。
やはり、隠れたウサギで提案して良かったな。
クリス様が白馬に乗った王子様風の顔でウサギのペンダントをつけている姿を想像すると、、、笑いだしたくなっちゃう。目の前にいられると、笑いを堪えるのが大変だ。うん、それだけはならなくて良かった。
大きい魔石を半分に割り、それを三十等分する。それらを職人たちに渡して、俺の仕事はとりあえず待機となった。
「息子用に一つ欲しい」
馬鹿なことを言い出した親バカがいた。
今は数がねえ、って最初に説明したと思ったが、ビーズには言い忘れていただろうか。
「ビーズ、、、」
「願い事を言うだけは良いじゃんっ。たとえ、実現不可能なことであっても。リアムに言っておけばいつかは購入可能になるかもしれないじゃん」
「ビースに渡したペンダントは貸与なんだが」
「だからー、星に願い事を言うのは自由じゃん。貸与でも月々利用料を払っても、使いたいって奴は他にもいると思うぞ。この通信の魔道具、この街は網羅しているからなあ」
俺は星か?
夜、俺が街に帰っても、連絡がつくのだ。ついてしまうのだ。夜は緊急連絡以外するな、ボケっ、と言ったら、止んだが。
便利な道具は、使う人間が節度を守らないといけないよね。
取説に注意書きを加えておいた。
親しき間にも礼儀あり。相手の都合も考えましょう。
今はA級、B級冒険者のパーティリーダー、そして、砦の関係者がペンダントを持っている。
それは砦からの無償貸与で今後も問題ないだろう。
この街限定の通信機器か。あると便利と言えば便利だろうな。
砦にある工房や店だって、街にある家や店に連絡を取るときに走っていかなくても済む。
購入とすると、魔石は高価だからペンダント一つでもかなりの高額になってしまう。街の住民が気軽に手を伸ばせるかというと難しい金額だろう。
となると、貸与だが。
その借りているペンダントを売ってしまえば、かなりの金になってしまう。が、誓約魔法があれば、勝手に売却するということは不可能になるはずだ。
街の住民用の個々のサイズはそこまでの大きさは必要ない。彼らは魔の大平原には行けないからな。
「やっぱり、中継機ができるかどうかが、この通信の魔道具の数が増やせるかどうかの分かれ道ってところだな」
「魔石を使っているから高価なのはわかるよ。けど、A級、B級冒険者なら買えない価格ではないだろう」
「それは確かに」
俺は庶民的な考えしか持たないからなあ。そもそも、A級、B級冒険者なら上質な魔石と交換でも良いくらいか?
売却の場合は本体価格とは別に、ケータイのように月々の使用料を取るべきだろうか?
回収するのも面倒だから、それなりの金額で永年使用として魔石が壊れるまで使えることにしておいた方が管理が楽か?
それよりも。。。
「先を考えるのも、基地局になっている魔石同士の中継機が作れるかどうか、なんだよなあ。まずは侯爵家の魔道具を作ってみてからだな」
ケータイなら基地局をつなぐ大元の交換局という役割が、俺の考える中継機なのだろうけど、通信の魔道具同士が同じ魔石を使わなければならない時点で作成にかなりの制限が加えられている。その辺りがこの世界でもネックだったのだろう。
「それが成功すれば、俺が魔の大平原に行っていても、リースの様子がわかる日が来るな」
「、、、ソウダネ」
感慨深げにビースが言ったが。
いや、それはどうだろう。完成して、一般にも貸与か販売する頃にはリースは成人していたりして。あまりにしつこく着信すると、連絡入れるのは緊急時だけにしてくれ、とかリースも言いそう。
はて、そのときは砦からの無償貸与品での私的利用はどうしようか。前世でもそんな問題があった気がする。あまりにも長時間の通話は魔石の魔力を喰うからなあ。恋人同士で長話されると困るなあ。
今は使ったとしても、冒険者同士の情報交換ぐらいだろうが。
使い慣れるには、まだまだ時間がかかる。
まずは侯爵家用通信の魔道具。
中継機の実験、だな。
一か月後、クリス様に三十個すべてを砦で試運転してもらった。
砦では確実に動いたという証明である。
光で照らすとウサちゃんの顔のシルエットが浮き出るのも確認してもらった。謎の偽物が出ても、それで真贋を判断してもらおう。それもマネしたら、裏面に番号とともに極西の砦の刻印もしているので大丈夫だろう。
とりあえず、王都で使うつもりらしい。
無事に納品できて良かった。
後ろからのナーヴァルや補佐の目が痛かったが、気にしてはいけないのだ。
実験に使ったことなんか、言わなきゃバレないんだから。
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