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9章 お人形さんで遊びましょう
9-14 定期試験
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魔法って便利なものだ。
魔法学園の試験問題なのに、何でここまで情報がダダ洩れているんだろう。。。
検索魔法で調べると、過去問だけでなく、教師が作っている問題が引っ掛かるのだが。。。
前世だったら、試験問題がネットに流出しているのと同義な気がする。
どうして魔法で隠蔽しないのだろうか?
魔法学園なのに。
ハーラット侯爵家なんて、些細なことでも隠蔽しているのに。
学生の実力をお舐めになっているのですかね?
どうせ魔法で調べられないだろうと。
それともそれすらも試験の一部なんでしょうかね。
この世界は魔法でカンニングし放題、とも思えるが、試験問題自体が過去問からそう対して変わっていない。
ほんの少し数字や文言が変わる程度だ。
普通の学生でさえ上級生から過去問を借りたら、満点だって夢じゃない気がする。
魔法実技の方は過去問で対策練ってもどうにもならないが。
こればかりは仕方ない。
ペーパーテストの方は高得点取れば、ぐうの音も出まい。
きっと一年で卒業させてくれるだろう。
魔法学園でもう学ぶ必要はないと思われる点数を取れば、国王の特別許可ぐらい下りるだろう。
試験会場は普段の教室を使わない。
カンニング対策と言われているが、もっと他にやるべき対策があるだろ、というツッコミ待ちなのだろうか?
大教室でやったり、小教室で少人数にわかれたり、クラスの違う者同士が同じ教室で受けることもある。
会場は毎回すべて当日の朝、学園の玄関先で発表されるのだが、試験勉強でいっぱいいっぱいな学生たちは混乱する。
彼らは貴族だからこそ、ある程度の点数を取らなければ許さない家が多いのである。
たいていの教科は同じ学年の教室のどれかで試験を受けていれば許される。
今回は簡単だったな、という感想をもらした学生が、実は下の学年の試験を受けていたという笑い話も残っているが。もちろんこの学生は追試である。
試験監督官も休憩時間中に時間に余裕があるのなら教室を移動させるが、試験開始後に入ってきた学生を追い出すことはしない。この教室で人数が予定より多くても受けられるように試験用紙は余分に用意されているようだ。
試験監督官は通常の広さの教室ならば、教師一人に職員二人がつく。
大きい会場ならば、職員の数が増えていく。
俺の顔を覚えている教師がいる会場は不可。
一学年の教師が二学年の会場を担当している場合もある。
つまりは、俺はその時間の一学年の試験を早々と仕上げ、二学年の会場に移る、という手段を取る。
そして、二学年の会場といえども、王子がいる会場は避ける。
二学年の選択科目の試験は受けられるものは片っ端から受けておこう。
王子が選択しており、別の会場がないものだけはやめておく。
二学年の魔法実技はどうにもならないので、どうにもならないなあ。
実技の試験って、それぞれ名前を呼ぶし、一人一人魔法を実演する。
今年の二学年の魔法実技は三種類の魔法から得意なものを選ぶ。
攻撃魔法、空間魔法、鳥魔法。。。
鳥魔法って何だ?
鳥のように翼を生やして飛ぶ?天使みたいになるのかな?
え?そんなことできるの?
見てみたい。
そんな魔法もあったんだね。
そういや本の表紙に天使の絵が描かれている魔法書があった気がする。
天使?何だこれ。ぽいっ。
みたいな感じで放っておいた。
宗教的な魔法かと思うじゃん。それが鳥魔法の魔法書だったのか。。。
そういや天使って概念、この世界にはなさそうだな。
天使という概念がなくても、俺が天使まがいの格好をしたら笑われそう。
鳥魔法か。。。
背に翼を生やすので、かなり難しい魔法なのだそうな。。。
俺なら空間魔法かな。小さな収納鞄を作るとか。
暑さが多少和らいだ王都の魔法学園。
緊張した面持ちの学生が、、、というよりお付きの人々が会場を間違わないようにしっかりとメモしている。それでも、会場を間違える学生が後を絶たないって、どういうことなのだろう。
俺もチェックする。
さすがに昨晩もチェックしたので変わりがない。うん、魔法でチェックしていた。だって、隠していないんだもんっ。
一学年は三日で終了するが、二学年は選択科目もあるし卒業試験でもあるので五日ほどかかる。
一学年はそのまま秋休みまで、一学年の総復習と秋休みの課題についての講義がある。
二学年はこの試験が終わると、卒業論文の説明等で多少の日程を費やした後、試験の結果発表、そして、卒業論文を書くための秋休みとなる。
どちらの学年も追試があり、追試に合格しないと秋休みに補講があるらしい。
補講まで受ける貴族の子弟はなかなかいない。
追試は魔法学園の配慮がかなりあるからだ。
魔法学園の成績上位者はその成績のおかげで将来を決める者も存在するが、魔法学園を卒業しただけでは特に何もない。就職に有利だとか、家で厚遇されるとかは卒業の肩書だけで得られるものではない。
貴族も実力が物を言う世界だ。
さて、俺も彼らと違った意味合いでドキドキ。
頑張って試験会場の梯子をするぞー。
試験会場をメモする横で、なぜかバージくんが俺を白い目で見ている。
ま、昼食の休憩時間はいつも通りあるのだから、寮の厨房で会おうぜ。
一学年の試験はごくごく普通に。
けど、さっさと書き終えたら、試験用紙を裏返しして机に置いて教室を出る。
と同時にダッシュして、こっそりこそこそ二学年の試験会場に入る。
職員のあー、今年もまた教室を間違えた学生がいるのかー、という視線が痛いが、後ろの方の席で二学年の試験を受ける。
試験時間が終わる前に試験用紙を裏返しして教室を出る。
学生たちが周囲を見たら、さすがに俺が二学年の者じゃないと気づかれる可能性がある。
さっさと逃げて、次の一学年の試験を受けて、二学年の試験の途中に入室するの繰り返し。
一学年の試験がない時間でも、ギリギリに会場に入室する。
試験監督官に移動を命じられないようにね。
何か指摘を受けそうな場合は、さっさと逃走する。
そして、試験はなく、レポート提出の講義もある。
学年を書かずに、こっそり俺が書いたものをレポートの束に突っ込んでおいた。
一週間後。
学長室に俺はいる。
学園長を脅しに来ているわけではない。
「なぜ、一学年のキミが、しかも今の時期に卒業論文を持って来るのかね?」
確かに二学年の学生たちも卒業論文の提出は、秋休み後である。
「俺の卒業を検討してもらおうと思って。もしくは二学年の講義免除?」
「、、、ここにうちの甥を呼んでもかまわないか?」
学園長が渋い顔で言った。
頷いたら現れました、我がクラスの副担任ことヴァリ・ガーバッド。
副担任ではないらしいんですがね。その説明は受けてないので。
学園長と二人で俺の卒業論文をパラ見する。
「コレは確実に冒険者ギルドから関係者以外の閲覧禁止を要求される卒論になるな」
「いや、冒険者ギルドだけじゃなく、国からも言われますよ」
「あー、冒険者ギルドで見せてもらったのと、王子のナイフの空間転移の魔法陣を参考に描いてありますからねー」
アレは社外秘の魔法陣。
そして、クジョー王国の努力の結晶とされていた王子のナイフに描かれていた魔法陣も記載しておいた。
元になった魔法陣を描いておかないとどう変えたのかわからない。
ハーラット侯爵家の魔法陣も参考に見てみたかったが、冒険者ギルドの魔法陣は上位互換だろう。
それに、ハーラット侯爵家の魔法陣は微かにさえ表に出すのは嫌がると思われるのでやめる。腹黒侯爵にケンカを売っても大変なだけだ。
もちろんそれだけではない。空間転移魔法の時代背景やら変遷とかズラズラと書いておいた。
この魔法は失敗すると、肉体が崩壊する等の問題点も指摘しておいた。リスクが大きすぎて、実験に囚人等が使われたこともあったという。
超分厚くなった。
これで殴られたら、けっこう痛いぞ。
「このテーマを卒業論文で選ぶこと自体、無理があるのだが」
「魔法研究所の研究員が一生をかけて追いかけるテーマですからね、コレ」
「これで魔石さえあれば、砦に行き来することもできるようになる」
俺のこの言葉で、ヴァリが卒論から顔を上げた。
「ああ、そういえばリアム・メルクイーンの名で二学年の試験を受けた者がいると報告が上がってましたね。本人ですか?」
「一応俺が受けた二学年の試験とレポート提出先のメモです」
ヴァリがメモを見る。
「とりあえず聞きますが、この二学年の試験の首席になった場合、卒業生代表の挨拶ってしてくれますか」
「駆け足で試験を受けた俺が首席なわけないじゃないですか。何を言っているんですかー」
「やる気はないと」
ヴァリが思案する顔つきになる。
あれ?挨拶すると答えていたら、卒業させてくれた?
魔法学園の試験問題なのに、何でここまで情報がダダ洩れているんだろう。。。
検索魔法で調べると、過去問だけでなく、教師が作っている問題が引っ掛かるのだが。。。
前世だったら、試験問題がネットに流出しているのと同義な気がする。
どうして魔法で隠蔽しないのだろうか?
魔法学園なのに。
ハーラット侯爵家なんて、些細なことでも隠蔽しているのに。
学生の実力をお舐めになっているのですかね?
どうせ魔法で調べられないだろうと。
それともそれすらも試験の一部なんでしょうかね。
この世界は魔法でカンニングし放題、とも思えるが、試験問題自体が過去問からそう対して変わっていない。
ほんの少し数字や文言が変わる程度だ。
普通の学生でさえ上級生から過去問を借りたら、満点だって夢じゃない気がする。
魔法実技の方は過去問で対策練ってもどうにもならないが。
こればかりは仕方ない。
ペーパーテストの方は高得点取れば、ぐうの音も出まい。
きっと一年で卒業させてくれるだろう。
魔法学園でもう学ぶ必要はないと思われる点数を取れば、国王の特別許可ぐらい下りるだろう。
試験会場は普段の教室を使わない。
カンニング対策と言われているが、もっと他にやるべき対策があるだろ、というツッコミ待ちなのだろうか?
大教室でやったり、小教室で少人数にわかれたり、クラスの違う者同士が同じ教室で受けることもある。
会場は毎回すべて当日の朝、学園の玄関先で発表されるのだが、試験勉強でいっぱいいっぱいな学生たちは混乱する。
彼らは貴族だからこそ、ある程度の点数を取らなければ許さない家が多いのである。
たいていの教科は同じ学年の教室のどれかで試験を受けていれば許される。
今回は簡単だったな、という感想をもらした学生が、実は下の学年の試験を受けていたという笑い話も残っているが。もちろんこの学生は追試である。
試験監督官も休憩時間中に時間に余裕があるのなら教室を移動させるが、試験開始後に入ってきた学生を追い出すことはしない。この教室で人数が予定より多くても受けられるように試験用紙は余分に用意されているようだ。
試験監督官は通常の広さの教室ならば、教師一人に職員二人がつく。
大きい会場ならば、職員の数が増えていく。
俺の顔を覚えている教師がいる会場は不可。
一学年の教師が二学年の会場を担当している場合もある。
つまりは、俺はその時間の一学年の試験を早々と仕上げ、二学年の会場に移る、という手段を取る。
そして、二学年の会場といえども、王子がいる会場は避ける。
二学年の選択科目の試験は受けられるものは片っ端から受けておこう。
王子が選択しており、別の会場がないものだけはやめておく。
二学年の魔法実技はどうにもならないので、どうにもならないなあ。
実技の試験って、それぞれ名前を呼ぶし、一人一人魔法を実演する。
今年の二学年の魔法実技は三種類の魔法から得意なものを選ぶ。
攻撃魔法、空間魔法、鳥魔法。。。
鳥魔法って何だ?
鳥のように翼を生やして飛ぶ?天使みたいになるのかな?
え?そんなことできるの?
見てみたい。
そんな魔法もあったんだね。
そういや本の表紙に天使の絵が描かれている魔法書があった気がする。
天使?何だこれ。ぽいっ。
みたいな感じで放っておいた。
宗教的な魔法かと思うじゃん。それが鳥魔法の魔法書だったのか。。。
そういや天使って概念、この世界にはなさそうだな。
天使という概念がなくても、俺が天使まがいの格好をしたら笑われそう。
鳥魔法か。。。
背に翼を生やすので、かなり難しい魔法なのだそうな。。。
俺なら空間魔法かな。小さな収納鞄を作るとか。
暑さが多少和らいだ王都の魔法学園。
緊張した面持ちの学生が、、、というよりお付きの人々が会場を間違わないようにしっかりとメモしている。それでも、会場を間違える学生が後を絶たないって、どういうことなのだろう。
俺もチェックする。
さすがに昨晩もチェックしたので変わりがない。うん、魔法でチェックしていた。だって、隠していないんだもんっ。
一学年は三日で終了するが、二学年は選択科目もあるし卒業試験でもあるので五日ほどかかる。
一学年はそのまま秋休みまで、一学年の総復習と秋休みの課題についての講義がある。
二学年はこの試験が終わると、卒業論文の説明等で多少の日程を費やした後、試験の結果発表、そして、卒業論文を書くための秋休みとなる。
どちらの学年も追試があり、追試に合格しないと秋休みに補講があるらしい。
補講まで受ける貴族の子弟はなかなかいない。
追試は魔法学園の配慮がかなりあるからだ。
魔法学園の成績上位者はその成績のおかげで将来を決める者も存在するが、魔法学園を卒業しただけでは特に何もない。就職に有利だとか、家で厚遇されるとかは卒業の肩書だけで得られるものではない。
貴族も実力が物を言う世界だ。
さて、俺も彼らと違った意味合いでドキドキ。
頑張って試験会場の梯子をするぞー。
試験会場をメモする横で、なぜかバージくんが俺を白い目で見ている。
ま、昼食の休憩時間はいつも通りあるのだから、寮の厨房で会おうぜ。
一学年の試験はごくごく普通に。
けど、さっさと書き終えたら、試験用紙を裏返しして机に置いて教室を出る。
と同時にダッシュして、こっそりこそこそ二学年の試験会場に入る。
職員のあー、今年もまた教室を間違えた学生がいるのかー、という視線が痛いが、後ろの方の席で二学年の試験を受ける。
試験時間が終わる前に試験用紙を裏返しして教室を出る。
学生たちが周囲を見たら、さすがに俺が二学年の者じゃないと気づかれる可能性がある。
さっさと逃げて、次の一学年の試験を受けて、二学年の試験の途中に入室するの繰り返し。
一学年の試験がない時間でも、ギリギリに会場に入室する。
試験監督官に移動を命じられないようにね。
何か指摘を受けそうな場合は、さっさと逃走する。
そして、試験はなく、レポート提出の講義もある。
学年を書かずに、こっそり俺が書いたものをレポートの束に突っ込んでおいた。
一週間後。
学長室に俺はいる。
学園長を脅しに来ているわけではない。
「なぜ、一学年のキミが、しかも今の時期に卒業論文を持って来るのかね?」
確かに二学年の学生たちも卒業論文の提出は、秋休み後である。
「俺の卒業を検討してもらおうと思って。もしくは二学年の講義免除?」
「、、、ここにうちの甥を呼んでもかまわないか?」
学園長が渋い顔で言った。
頷いたら現れました、我がクラスの副担任ことヴァリ・ガーバッド。
副担任ではないらしいんですがね。その説明は受けてないので。
学園長と二人で俺の卒業論文をパラ見する。
「コレは確実に冒険者ギルドから関係者以外の閲覧禁止を要求される卒論になるな」
「いや、冒険者ギルドだけじゃなく、国からも言われますよ」
「あー、冒険者ギルドで見せてもらったのと、王子のナイフの空間転移の魔法陣を参考に描いてありますからねー」
アレは社外秘の魔法陣。
そして、クジョー王国の努力の結晶とされていた王子のナイフに描かれていた魔法陣も記載しておいた。
元になった魔法陣を描いておかないとどう変えたのかわからない。
ハーラット侯爵家の魔法陣も参考に見てみたかったが、冒険者ギルドの魔法陣は上位互換だろう。
それに、ハーラット侯爵家の魔法陣は微かにさえ表に出すのは嫌がると思われるのでやめる。腹黒侯爵にケンカを売っても大変なだけだ。
もちろんそれだけではない。空間転移魔法の時代背景やら変遷とかズラズラと書いておいた。
この魔法は失敗すると、肉体が崩壊する等の問題点も指摘しておいた。リスクが大きすぎて、実験に囚人等が使われたこともあったという。
超分厚くなった。
これで殴られたら、けっこう痛いぞ。
「このテーマを卒業論文で選ぶこと自体、無理があるのだが」
「魔法研究所の研究員が一生をかけて追いかけるテーマですからね、コレ」
「これで魔石さえあれば、砦に行き来することもできるようになる」
俺のこの言葉で、ヴァリが卒論から顔を上げた。
「ああ、そういえばリアム・メルクイーンの名で二学年の試験を受けた者がいると報告が上がってましたね。本人ですか?」
「一応俺が受けた二学年の試験とレポート提出先のメモです」
ヴァリがメモを見る。
「とりあえず聞きますが、この二学年の試験の首席になった場合、卒業生代表の挨拶ってしてくれますか」
「駆け足で試験を受けた俺が首席なわけないじゃないですか。何を言っているんですかー」
「やる気はないと」
ヴァリが思案する顔つきになる。
あれ?挨拶すると答えていたら、卒業させてくれた?
応援ありがとうございます!
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