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10.やっぱり

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 レイさんと王子が仲良くなって良かったと思っていたはずだった。
 だけどやっぱり、なんだか胸が痛い。

 レイさんと王子が結婚するらしい。
 2人の距離が縮まったせいで、こんなに早く結婚式を行うことになったのだろうか。

 式が数日後にせまったある日、レイさんに声をかけられた。
「2人でこうやって話すのは久しぶりですね」
 私がそう言うと、レイさんは寂しそうに微笑みつつ頷く。
「そうですね……。……あのね、私……変なこと言うけど、こんなこと“友だち”のカナさんにしか言えなくて……」
 変なこと? と私が聞き返す。
「あのね、なにか……私がきらきらした舞台に立っている記憶があって。街の劇場とはまた少し違って、なんか……客席も光ってるんだ。そこで俺は歌って踊って……」
 そうレイさんが語った『記憶』に、私は覚えがあった。
「すごく、楽しかったなあ……。だから今、なんて言うかさ、変って言うか。……王子と結婚するの、なんか違う感じがして」
 ふ、と息を吐くとレイさんは呟く。
「王子と結婚、したくないなあ……、なんて」

 それを聞いて私は目を見開いた。
 ああ、やっぱり『れい』君は、レイ君なんだ! 私の好きになったれい君はレイさんの中に存在していたんだ。
 レイの居場所は、そして私の居場所はここじゃないんだ。
「あ、あのね、私、その記憶知ってるの! あなたは事故に遭ってあの世界からここへ転生してきてしまっただけなの。だから……」
 また死ねばきっと、もとの世界に戻れる。

「そっか……、だから俺はこんなにみんなと合わなかったのかな……」


 学校の屋上、れい君と2人きり。
「大丈夫だよ、私も一緒だから」
「…そうだね。カナとなら……カナとあの世界に行けるなら、俺も……」
 2人で手をつなぎ、1歩外へ踏み出した。



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