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42.終わりの時
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来た────
階層を破壊し、轟音とともに1人の青年が現れた。
アスベル。
アークライドの大切な人。
地下に封印されていたせいで、色の白さが際立つ。長身の彼のダークブロンドの髪の毛は、緩やかに波打ち背中辺りまで伸びていた。
切長の紅の瞳が、じっと僕を見つめた。
「お前は誰だ?アークの匂いがしたが、別人か?」
どうする?
アーク、言いたい事を言う?自問自答のように、心に問いかける。
目を瞑り、ゆっくりと開く。
「俺の事忘れた?」
声のトーンが変わったのが、自分でも分かった。
今の瞳の色は、ワインレッドになっているだろうか?
「何故だ?何故混ざり者なんだ?」
「あれから何年も経ったんだよ。アスベルは、長い事封印されてたから。俺の肉体が消えたの知らなかったか?」
切れ長の目を見開き、じっと見つめてきた。
「アークの思念?ふぅん。
その指輪からが強い。
そうか、今度は、お前を錬成すれば良いんだ。」
嬉しそうに笑った。
「1人残されるのは、嫌だしな。なら、この先ずっと一緒にいる為に、アークも俺と同じになろう?」
一歩一歩近づいて来る。
僕の前に立って、手が肩に置かれた。
今───
足元の魔法陣が発動した。
グルグルと真ん中の図面に置かれた魔石に色が点灯していくかのようだ。外側へ外側へと魔石に添いながら点灯していくさまは、火薬に火が走っていくみたいだ。
違うのは、そのまま消えずに色が付いている事だ。
《聖域》
「叶夢!!!」ノアが叫ぶ。魔法陣自体が聖域と化し、魔石から、蔦が芽吹いていく。
ずっと、アシェルが集めてきた魔石もある。
エミリーが冒険者や魔術師達と集めたものもある。帝国の王子や敵国の魔術師が協力してくれたものも、かなり量だ。
魔石には、種を植え付けていた。
相手から魔力を吸い出しそれを養分として育つように。
枯れるまで、だ。
どんどん成長して、アスベルに絡みついていく。尋常じゃない成長速度と聖域の力なのか、アスベルは動けない。
ただ目を見開き、僕の顔を見つめている。
絡みつくと同時に、魔力を吸い出し、成長し続ける。
そして、またさらに巻きつき成長していく。
アスベルの魔力はとんでもない量だから、蔦は、木の様に太く育って伸びていく。
僕自身にも巻きつき伸びて、とうとう大樹のように育った。
小さき魔物の魂である魔石が悪魔化したその魂の塊に絡み付き自由と魔力を奪っていく。
魔術を発動しようとした、アスベルの指に僕の指を重ねて繋ぐ。
彼の想いを伝える。
2度も苦しめて、ごめん。
俺も一緒に行くから。ずっと、側にいさせて──
どうか、アークライドを許してあげて。
貴方の側に、アークの魂を届けたい。
すでに魔法陣を超えそうな太さになっている。
飲み込まれた2人の姿は見えない。
「叶夢、叶夢───!!」
ノアが、叫ぶ。
ディランがノアを魔法陣の中に入れさせないように押さえつけた。
「アシェル様、アークライド様、何もかも叶夢から奪い過ぎだ!返してくれ。」
その時、微かに聞こえた。
『ノア、ディラン。逃げて──』
拳を握り締め、歯を食いしばる。
地面を殴りつけた。
ノアが、顔を上げて大樹を睨みつけた。
「まだだ。まだ、叶夢は、生きてる。
──今なら間に合う!!」
ノアが、吐き捨てるように叫んだ。
《瞬間移動》
《略奪》
「な、ノア!!」
ディランが叫ぶ。
ノアが大樹の中に消えた。
しばらくして、叶夢を抱き上げたノアが現れた。
伸びた蔦で擦り切れた傷があちこちにある。
服もいたる所破れて、血が滲んでいる。
追いかけて来るように叶夢に向かって蔦が伸びてくる。
ノアは、すぐに叶夢の指輪を引き抜いた。
ディランが驚く。
ノアは黙ったまま──ガルシアの瞳を魔法陣の中へと投げ入れた。
「契約が途切れたのが、見えたんだ。」
指輪が、大樹に触れた瞬間に一気に燃え上がる。
「逃げるぞ。ディラン!」
叶夢を真ん中に3人で支え合う。
《瞬間移動》
そして、地上へと向かった。
階層を破壊し、轟音とともに1人の青年が現れた。
アスベル。
アークライドの大切な人。
地下に封印されていたせいで、色の白さが際立つ。長身の彼のダークブロンドの髪の毛は、緩やかに波打ち背中辺りまで伸びていた。
切長の紅の瞳が、じっと僕を見つめた。
「お前は誰だ?アークの匂いがしたが、別人か?」
どうする?
アーク、言いたい事を言う?自問自答のように、心に問いかける。
目を瞑り、ゆっくりと開く。
「俺の事忘れた?」
声のトーンが変わったのが、自分でも分かった。
今の瞳の色は、ワインレッドになっているだろうか?
「何故だ?何故混ざり者なんだ?」
「あれから何年も経ったんだよ。アスベルは、長い事封印されてたから。俺の肉体が消えたの知らなかったか?」
切れ長の目を見開き、じっと見つめてきた。
「アークの思念?ふぅん。
その指輪からが強い。
そうか、今度は、お前を錬成すれば良いんだ。」
嬉しそうに笑った。
「1人残されるのは、嫌だしな。なら、この先ずっと一緒にいる為に、アークも俺と同じになろう?」
一歩一歩近づいて来る。
僕の前に立って、手が肩に置かれた。
今───
足元の魔法陣が発動した。
グルグルと真ん中の図面に置かれた魔石に色が点灯していくかのようだ。外側へ外側へと魔石に添いながら点灯していくさまは、火薬に火が走っていくみたいだ。
違うのは、そのまま消えずに色が付いている事だ。
《聖域》
「叶夢!!!」ノアが叫ぶ。魔法陣自体が聖域と化し、魔石から、蔦が芽吹いていく。
ずっと、アシェルが集めてきた魔石もある。
エミリーが冒険者や魔術師達と集めたものもある。帝国の王子や敵国の魔術師が協力してくれたものも、かなり量だ。
魔石には、種を植え付けていた。
相手から魔力を吸い出しそれを養分として育つように。
枯れるまで、だ。
どんどん成長して、アスベルに絡みついていく。尋常じゃない成長速度と聖域の力なのか、アスベルは動けない。
ただ目を見開き、僕の顔を見つめている。
絡みつくと同時に、魔力を吸い出し、成長し続ける。
そして、またさらに巻きつき成長していく。
アスベルの魔力はとんでもない量だから、蔦は、木の様に太く育って伸びていく。
僕自身にも巻きつき伸びて、とうとう大樹のように育った。
小さき魔物の魂である魔石が悪魔化したその魂の塊に絡み付き自由と魔力を奪っていく。
魔術を発動しようとした、アスベルの指に僕の指を重ねて繋ぐ。
彼の想いを伝える。
2度も苦しめて、ごめん。
俺も一緒に行くから。ずっと、側にいさせて──
どうか、アークライドを許してあげて。
貴方の側に、アークの魂を届けたい。
すでに魔法陣を超えそうな太さになっている。
飲み込まれた2人の姿は見えない。
「叶夢、叶夢───!!」
ノアが、叫ぶ。
ディランがノアを魔法陣の中に入れさせないように押さえつけた。
「アシェル様、アークライド様、何もかも叶夢から奪い過ぎだ!返してくれ。」
その時、微かに聞こえた。
『ノア、ディラン。逃げて──』
拳を握り締め、歯を食いしばる。
地面を殴りつけた。
ノアが、顔を上げて大樹を睨みつけた。
「まだだ。まだ、叶夢は、生きてる。
──今なら間に合う!!」
ノアが、吐き捨てるように叫んだ。
《瞬間移動》
《略奪》
「な、ノア!!」
ディランが叫ぶ。
ノアが大樹の中に消えた。
しばらくして、叶夢を抱き上げたノアが現れた。
伸びた蔦で擦り切れた傷があちこちにある。
服もいたる所破れて、血が滲んでいる。
追いかけて来るように叶夢に向かって蔦が伸びてくる。
ノアは、すぐに叶夢の指輪を引き抜いた。
ディランが驚く。
ノアは黙ったまま──ガルシアの瞳を魔法陣の中へと投げ入れた。
「契約が途切れたのが、見えたんだ。」
指輪が、大樹に触れた瞬間に一気に燃え上がる。
「逃げるぞ。ディラン!」
叶夢を真ん中に3人で支え合う。
《瞬間移動》
そして、地上へと向かった。
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