死んでしまった彼女が遺したモノも知らず。ただ私は、遺族の無念を晴らしたかった。

 刑事である彼、卜部八月朔日は余命幾ばくを告げられた女子高生の絞殺事件を担当することになった。
 犯人探しが難航し、困り果てていたところにやってきたのは普段はおとなしいはずの後輩である男で。彼は意気揚々と、助言してきた。その内容は簡単に言ってしまえば業務外の聞き込みだった。
 最初こそ、後輩のそのあり得ない助言を馬鹿にしていたのだが、彼のあまりの気迫に押し負けてしまし仕方なく聞き込みをする事になった。

 彼女の弟に始まり。
 居候である料理人の男。土木業者の青年に。
 高校時代の友人や仲の良い学外の知人。幼馴染達。

 各方面にいる彼女の知人達と会話をしていく中で、卜部は腹の奥底に沸々と湧き上がってくるとある違和感に気がつき始めた。
 生前の彼女の濃く残った影の中に隠れている狂気が少しずつ垣間見えはじめた時、聞き込みを自ら積極的に行う様になっていき、後輩や他の部下とも更なる情報共有に乗り出していった。

 濃く残った影の中に隠れた狂気は、次第に膨れ上がっていき卜部の中にあった疑心が確信へと変わり始めると同時に、その狂気の中に恐怖さえ覚えてしまっている自分がいることに気がついてしまった。
 この一件から、早く後輩を引かせるべきだと思った矢先、後輩が行方を眩ましてしまった。
 妻子を残し突如姿を消した後輩を探していると、家から事件の詳細報告書が出てきて、事件解明がより一層早められる事態となった。
 だが、卜部は続けてきた聞き込みの中で、彼女の身の回りで起きた事件を知る。


  “中学女児童誘拐監禁殺人事件"

  "高校生誘拐行方不明事件"

  "高校立て篭もり殺人事件"

  "児童誘拐行方不明事件"


 過去5年間に起こった、彼女の身近で起こったその事件の全貌を卜部はその聞き込みの中で知ることとなってしまう。
 後輩の行方不明事件とその過去の事件の真相にじわじわと近づく卜部は次第に"彼ら"に狙われる立場になってしまっていた事に気がついてしまう。
 彼らから逃げ、隠れながらも彼女の死の原因を突き止めた卜部が最期に感じたこととは、一体何であるのか。


  あなた達はそれに気がつく事が出来るだろうか。






  これは、卜部八月朔日刑事が残した手記から、書き出した物語である。
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