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肆拾参 笑い女
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毎月、一日と九日と十七日は、その山に入ってはいけない。
笑い女がでるから。
ここら一帯に伝わる言い伝え。
だが、いつの時代も、言い伝えに背く者は現れる。
二十人の団体が、一日だというのに山へと入っていく。
人間があまり入らないが故に整備の行き届いていない山道を、団体は恐れることなく進んでいく。
一見すると、何の変哲もないただの山道。
草木が揺れる音。
体を吹き抜ける風。
葉の隙間から注ぎ込む太陽。
そして。
「クスクス」
何かの笑い声が聞こえてきた。
「クスクスクスクス」
山奥から、その声の正体が歩いてくる。
十八歳の頃だろう女が、団体を指差しながら歩いてくる。
「アハハハハハハハ!」
近くに来るにつれて、その笑い声は大きくなる。
「キャハハハハハハ!」
笑い女の笑い声に呼応するように、周囲から次々と笑いが巻き起こる。
「クスクス」
「アハハ」
「カカカカ」
「ウフフフ」
団体の人々が周囲を見渡せば、石が、木が、水が、風が、大口を開けて笑っていた。
まるで人間のように。
そして笑いは、団体にまで波及する。
「うへ……うへへへ!」
「あはははは!」
「ぎゃーっはっはっは!」
一人、また一人と、つられて笑っていく。
涙を流し、腹を抱え、笑いたくもないのに笑っていく。
山は、笑いに包まれた。
「以上で、笑いセミナーを終了します。皆さん、今日の笑い方、しっかり覚えて帰ってくださいねー」
そして夜。
様々な事情で笑うことができなくなった人間に向けた笑いセミナーは、無事終了した。
セミナーの参加者たちは、久々に心の底から笑えたことに満足しながら帰路についた。
笑い女がでるから。
ここら一帯に伝わる言い伝え。
だが、いつの時代も、言い伝えに背く者は現れる。
二十人の団体が、一日だというのに山へと入っていく。
人間があまり入らないが故に整備の行き届いていない山道を、団体は恐れることなく進んでいく。
一見すると、何の変哲もないただの山道。
草木が揺れる音。
体を吹き抜ける風。
葉の隙間から注ぎ込む太陽。
そして。
「クスクス」
何かの笑い声が聞こえてきた。
「クスクスクスクス」
山奥から、その声の正体が歩いてくる。
十八歳の頃だろう女が、団体を指差しながら歩いてくる。
「アハハハハハハハ!」
近くに来るにつれて、その笑い声は大きくなる。
「キャハハハハハハ!」
笑い女の笑い声に呼応するように、周囲から次々と笑いが巻き起こる。
「クスクス」
「アハハ」
「カカカカ」
「ウフフフ」
団体の人々が周囲を見渡せば、石が、木が、水が、風が、大口を開けて笑っていた。
まるで人間のように。
そして笑いは、団体にまで波及する。
「うへ……うへへへ!」
「あはははは!」
「ぎゃーっはっはっは!」
一人、また一人と、つられて笑っていく。
涙を流し、腹を抱え、笑いたくもないのに笑っていく。
山は、笑いに包まれた。
「以上で、笑いセミナーを終了します。皆さん、今日の笑い方、しっかり覚えて帰ってくださいねー」
そして夜。
様々な事情で笑うことができなくなった人間に向けた笑いセミナーは、無事終了した。
セミナーの参加者たちは、久々に心の底から笑えたことに満足しながら帰路についた。
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