不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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8・婚約者のガイ

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 その日はガイディスと
ゆっくりとした時間を過ごした。

屋敷の中を案内して、
応接室でガイディスの話も聞いた。

優秀な兄がいて、
ガイディスは公爵家のお荷物に
ならないように生きて来たって
辛そうな顔をして言うから、
僕と同じだって思った。

僕も、って告白したら、
ガイディスは僕の手を握り
「一緒じゃありません。
存在するだけで尊い存在と
俺とでは比べることすらおこがましい」と
よくわからない理論を述べる。

でも、沢山話をしたことで
僕とガイディスの間に
友情は芽生えたと思う。

ガイディスは敬語も無くなったし、
「私」ではなく「俺」って言うようになったし。

お互い優秀な兄に対する
複雑な気持ちは共感できる。

伴侶というのが何をするものなのか
僕にはわからなかったけれど、
もう一人の兄ができたような
気持になった。

僕がそういと、
ガイディスは「光栄です」と
顔を赤くして言う。

でも、光栄です、なんて
兄弟でも、伴侶でも言わないと思う。

僕がそう指摘すると、
今度は顔を真っ赤にしたまま
「嬉しいです」と言い直した。

なんか、可愛い、と思う。

兄様には感じたことが無い、
年上の人なのに、可愛いというか、
不思議な感覚。

僕と同じだ、って思えたからかな。

対等な感じがするんだ。

それに、僕は応接室で話している間、
はしゃぎすぎて疲れてしまった。

でも僕が眠くなったり
疲れているとわかったら、
ガイディスが帰ってしまうと思って
僕は何も言わなかった。

そしたら、ガイディスは
「疲れてませんか?」って
僕をソファーで横になるように
言ってくれたのだ。

「団長とも約束しましたし、
眠っている間もお傍でお守りします。
目が覚めたら、一番最初に
その可愛い目に俺が映るように
おそばにおります」

真剣な顔で僕の手を握って
そう言ってくれるものだから
僕はなんだか安心してしまって、
そのまま眠ってしまったんだ。

でも目を覚ましたら
ちゃんと僕の手はガイディスに
握られていて、優しい顔が
すぐに目に入って来た。

それが嬉しくて。

僕はガイディスの腕を引っ張った。

ガイディスが身をかがめて
僕の前に顔を持って来たので
そのまま首に腕を回して
抱きついた。

兄様にするように
嬉しい、大好きって
伝えるように、ぎゅってする。

僕がぎゅっとしたら
大きな体が、強張ったような
気がするけれど。

ゆっくりと背中に腕が回されて
僕は、大きな胸に顔をする寄せる。

兄様や父様とは違う、
もちろん、母様とも違う
男性の筋肉質な身体だった。

香りも、兄様とは違う。

でも安心する感じは同じ。

僕はほっぺたを胸、肩、
腕と、あちこちに押し付けて
ガイディスの感触を確かめた。

うん、やっぱり安心する。

そう僕が確信したとき、
扉をノックする音が聞こえた。

「なにもしておりません!」

急にガイディスが叫んで
僕の身体から手を離すと
両手を上げて万歳している。

扉が開き、
セバスが入って来た。

「夕食のご用意ができております」

「うん、ありがとう」

僕が返事をしてソファーから下りると、
セバスは優しい顔で僕を促す。

ちらり、と万歳しているガイディスに
視線を向けたけれど、
何も言わずに「御客人もこちらへ」と
ガイディスに声をかけた。

「行こう」と僕が言うと、
ガイディスは両手を下ろして
ぎこちない様子で足を動かす。

どうしたんだろう、っと思ったけれど、
食堂に行くまでに兄様の帰宅が知らされて
僕はガイディスのことも忘れて
玄関に走ってしまった。

「兄様、おかえりなさい」

「ただいま、いい子にしてたかい?
お出迎えは嬉しいが、
走ると危ないぞ」

抱きつくと、兄様は
僕を抱きとめてくれる。

でも昼寝をしたばかりだから
走っても大丈夫だ。
元気元気。

「待たせたな」

兄様が僕の後ろに声をかける。

「は! 命を懸けてお守り致しました」

その声に、そうだ、と
ガイディスと一緒だったことを思い出す。

僕の様子に兄様は笑い、
「おまえの騎士はどうだった?」という。

僕は「守られました」というのも
オカシイ気がして
「仲良くなりました」と返事をした。

すると兄様は、ふーん、と声を出し、
ガイディスを見る。

「やましいことは何一つしておりません!」

ガイディスは叫ぶように言うけど、
やましいこと、ってなんだろう?

僕は兄様を見上げたが、
兄様は僕の頭をポンポン、と撫でる。

「さぁ、夕食にしよう。
着替えたら行くから、
先に行って待ってておくれ」

背中を押されて、僕は頷いた。
そしてガイディスに手を伸ばす。

忘れてごめんね、という意味も込めて
ガイウスの手を握って食堂に
連れて行ってあげたのだが、
肝心のガイディスは

「嬉しい。だが騎士団長が。
嬉しい。いや、怖い。
だが妖精が」

とよくわからない言葉を
ぶつぶつ呟いていた。

大丈夫だろうか。

兄様が怖いってことだよね。

もし兄様がガイディスを叱ろうとしたら
僕が庇ってあげないと。

僕の初めての友達だもん。
ううん、伴侶? だっけ。

結婚相手とか伴侶って、友達とか
兄弟とは何が違うんだろう。

一緒に住んで、家族になるんだから
もしガイディスと僕が伴侶になるなら
兄様と同じってことだよね?

一緒に住まないのが友達で、
一緒に住むのが伴侶。

……こんな考え方でいいのかな?

家庭教師の先生も、結婚とか
伴侶とかそう言うことに関しては
あんまり教えてくれなかった。

以前、女の先生が持っていた
恋愛小説を読ませてもらった。

その小説に、「赤ちゃんができた」って
書いてたから、先生に赤ちゃんって
どうやったらできるの?と聞いてみたけれど。


その先生は顔を真っ赤にして
「成人したら自然にわかります」
と早口で僕に言ったのだ。

僕はもう15歳。
来年には成人するけれど、
自然にわかる、なんて無いと思う。

わからないことは、
聞くか調べるしかないのだから
自然に理解するなんてありえない。

この家の図書室には沢山
本があるし、何でも調べられるけど
子どもができる方法に関して
書いてある本は無かった。

2部屋もある図書室の蔵書を
全て読んだのだから、間違いはない。

一度、兄様に聞いたけれど
兄様は「エレが心配することではないよ」
といわれて、頬にキスされた。

なんで子どもができる話が、
僕の心配に繋がるのか理解できない。

でもそれ以上は聞けなくて、
僕は、うん、って言った。

僕は食堂に着いて、
ガイディスの手を離してから
ちらり、と金色の瞳を見た。

ガイディスなら教えてくれるかな?

今日は泊ってくれたらいいのに。
そしたら、夜中にこっそり聞きに行こう。


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