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愛は変態を助長させる

4:恋人が可愛すぎて婚約者になる【真翔SIDE】

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俺と悠子ちゃんは、
いつも立ち寄る公園を歩いていた。

冬に何故か満開になった白い花は、
春になり、夏が来ようとしているのに
まだ咲いている。

不思議な花だけど、
悠子ちゃんが、この花を見るたびに
嬉しそうな顔をするので、
あのエロの女神が関係しているのかな、
と、勝手に俺は思っていた。


手を繋いで、
俺たちは並んで白い花を見る。

「この花はね、真翔さん」

悠子ちゃんが笑った。

「僕が真翔さんに
愛されてるって証拠なんですよ」

って。
俺の心臓を撃ち抜くぐらい
可愛い顔をするから。

俺はつい、キスしてしまう。

悠子ちゃんは
真赤になって、唇を尖らせた。

拗ねた様子が、可愛い。

でも、俺が悠子ちゃんを
好きだから花が咲くのなら。

ずっとこの樹木は
満開だと思う。

俺が悠子ちゃんを
嫌いになる日なんて
来るはずがないのだから。

俺は悠子ちゃんの指に
自分の指を絡ませた。

恋人繋ぎで手を繋ぎ直し、
悠子ちゃんを抱きしめる。

「ユウが大好きすぎて困る」

って耳元で言ったら、
悠子ちゃんも、僕もです、って
言ってくれた。

嬉しすぎて舞い上がってしまう。

「行こう」

俺は悠子ちゃんの手を引いて
公園を後にした。

今日は平日で、
店長さんの居酒屋は休みだ。

もともと店長さんが
個人で経営している店なので
お客があまり来ない日曜日は
定期的に休んでいるが、

それ以外は店長さんの都合で
たまに休みになる。

例のOL嬢の都合で
お店を休みにする日もあるので
店長さんもかなりの溺愛ぶりだと思う。

そして今日も、
そのOL嬢のおかげで
お店は休みになった。

理由は俺と悠子ちゃんの
婚約発表会だからだ。

OL嬢が俺と悠子ちゃんの仲が
進展したことを知って、
お祝いをしたい、と
言ってくれたのだ。

お祝いの品に何が欲しいと
聞かれて、欲しい物もなかったので
悠子ちゃんと相談して
「美味しいお酒を飲ませて」
って冗談半分で言ったら、


OL嬢は店長さんに
話をして、珍しいお酒を
手に入れてくれたらしい。

ただし、自分の飲みたいから
お店で飲もう、との提案付で。

それは構わないのだけれど、
店長さんには迷惑をかけまくりだ。

俺は遠慮しようとしたが、
OL嬢は「いいの、いいのー。
私が迷惑をかけるほど、
アイツ、喜ぶんだから」
なんてケラケラ笑った。

店長さんの様子から
そうかもしれない、と
思ったけれど。

さすがに…
そのいい方はどうかと思う。

悠子ちゃんも心配そうに
そんなOL嬢を見ていたが、
すぐに「じゃあ、決定ね」
と笑顔で言われて、
俺も悠子ちゃんも断れなかった。

しかもお店を
わざわざ休んでまで
飲ませて貰おうなんて
全く思ってなかったのに。

俺と悠子ちゃんは
相談して、手土産を持って
行くことにした。

店長さんも、OL嬢に
プロポーズしているらしいが
返事はまだ貰ってないようだ。

いや、何度告白しても
無かったコトにされていた過去を
顧みると、プロポーズも
無かったことになってるかもしれない。

その心配は店長さんも同じらしく
以前、
「おまえはいいよな。
悠子ちゃんは、
結婚しよう、って言ったら、
ちゃんと理解してくれるんだから」

とぼやいたことがある。

それを聞いたとき、
俺は…店長さんの肩を叩いて
なぐさめ…ようとしたが、
言葉が出なかった。

「わかります」とも言えないし
「大丈夫ですよ」とも言えなかった。

何しろ、あのOL嬢は強敵だ。

そんなこともあり
俺と悠子ちゃんの今日の手土産は
『店長さんとOL嬢にお揃い』の何か。
にしようと考えていた。

駅前のショッピングモールに
来ると、ちょっとだけ
悠子ちゃんの手がこわばる。

悠子ちゃんは人混みが苦手なのだ。

俺はそれを知ってるから、
大丈夫、って意味を込めて
繋いだ手に力を入れる。

すると悠子ちゃんが俺を見て
ふにゃ、って笑った。

……可愛い!

そこから俺たちは、
色んなものを見た。

最初は小物を見ていたのに、
だんだん悠子ちゃんと結婚したら
こんなんがいいなー。

なんて妄想を掻き立てられて
食器や家具、電化製品まで
見て歩いてしまった。

仕事で帰ったら
エプロン姿で料理をしている
悠子ちゃん……可愛すぎる。

妄想しながら
家電売り場を見ていたら
悠子ちゃんが俺の手を引っ張った。

「真翔さん、あれ、どうですか?」

視線の先にはエプロンがあった。

え?
俺の裸エプロンの妄想が見えた!?

って焦った。

「はい。
さりげなくお揃いで、
いいと思いませんか?」

お揃い?
裸エプロンが?

いや俺が裸でエプロンって…
……笑えるし…?

混乱する俺の前で
悠子ちゃんが夫婦箸と箸置きの
セットを見せた。

あ、エプロンの傍に
箸売り場もあったのか。

「一緒にお揃いって
恥ずかしいと思うんですけど、
お互いに一人の時、
お揃いの箸を使ってる、って
思えたら嬉しくなると思うんです」

頬を染める悠子ちゃんが可愛い。

「そうだね。
俺も離れている時、
悠子ちゃんとお揃いの箸で
ご飯を食べてると思ったら
嬉しくなるよ」

って言ったら、
悠子ちゃんの頬がさらに赤くなる。

「じゃあ、店長さんたちのと
俺たちのを一緒に選ぼう?」

って提案したら
悠子ちゃんは嬉しそうに頷いた。

嬉しい。
悠子ちゃんも俺と離れている時、
寂しいって思ってくれてたのかな?

だから俺とお揃いのお箸って
思ってくれたんだろうか。

もう可愛いし、愛しいし、
抱きしめたいし…いや、抱きつぶしたい!

よし。
今日は飲むぞ!

いや、飲ませるぞ!

酔って酔ってへべれけになった
悠子ちゃんに、あんなこととか
こんなこととか、しまくってやるっ。

え?
酔った女性にそんなことを
するのは犯罪だって?

そりゃそうだけど、
俺と悠子ちゃんは両想いだからな!

恋人だからな。

問題ないぞ。

恋人なんだからなっ。

……恋人。

いい響きだ…。

いや違う。
婚約者だ!

婚約者。

嬉しすぎる!







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