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愛は変態を助長させる

12:ショップカードの店【真翔SIDE】

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 その日の夜、俺は自宅に帰ると
まずは一番に悠子ちゃんにメールを送った。

別に用事は無いけれど、
今日も無事に家に帰ったことと、
おやすみを言うためのメッセージだ。

俺がメッセージを送ると、
すぐに悠子ちゃんからも
「お疲れ様でした。
おやすみなさい」
と短いメッセージが来る。

たったこれだけのことで
俺は幸せな気分になるのだ。

それから俺は母の作った夕食を食べ
風呂に入って寝る支度をする。

俺はいつも帰宅が遅いので
夕食は一人で食べるのだが、
母が起きている時は俺が食べている前に座り、
一日の愚痴と、悠子ちゃんの話をする。

悠子ちゃんと母は昼間、
同じ工場で働いているので
俺の知らない悠子ちゃんの話を
母はこうして教えてくれるのだ。

「早くお嫁に来ないかしら?」

と母はいつも言うが、
俺は「同居はしないぞ」と返事をしている。

絶対にしないとは言わないが、
最初は二人っきりの新婚生活を味わいたいのだ。

「いやぁねぇ、邪魔なんてしないわよ」と
母は笑って言うが、俺は警戒してしまう。

「でも休みの度に悠子ちゃんのところに
泊まってくるんだもの。
籍だけでも入れておいたら?」

なんて言われ、
そう言うこともできるのか、と
俺は思った。

なんとなく一緒に住むのなら
結婚式をしてから、と思っていたが
このまま、籍だけ先に入れて
俺が悠子ちゃんのアパートに
一緒に住むと言うのもありなのでは?

「ちゃんと悠子ちゃんに相談して決めなさいよ」

と俺の顔を見て母は言うが、
俺は悠子ちゃんと一緒に住む未来を想像し
妙に浮かれてしまった。

だからだろう。

いつもなら寝る準備をしたら
翌朝のためにできるだけ早めに
ベットに入ることにしているのに、
今日はパソコンの電源を入れてしまった。

もし一緒に住むなら……と
家電量販店のホームページを見たり、
結婚式場のホームページを見たり。

俺の脳内は夢で膨らみ続ける。

「そうだ。先輩のおすすめの店」

俺は財布に入れていたショップカードを思い出した。

先輩に悠子ちゃんを会わせる気はないが
あんなに勧めてきたのだ。
良い店なのかもしれない。

俺は車は持っていないが免許はある。

もしよさそうな店なら
レンタカーを借りて、
悠子ちゃんと一緒に行ってもいいかもしれない。

その帰りに結婚式場を見に行くとか。

俺は妄想を広げながら
ショップカードを取り出し、
そこに書いてあるアドレスを打ち込んだ。

画面に表示されたサイトは
シティホテルのサイトのようだった。

都心から離れた場所にあるようで
先輩が「車で」と言ったのは
そういうことかと思う。

見ていると少し高級そうな
レストランやバー、プールや
ジムやエステなんかもあり、
仕事の疲れを癒すために
のんびり宿泊するのもそさそうだ。

先輩はここを良く
利用しているっぽかったけど
一人でじゃないよな?

彼女と良く利用するのなら
カップル向けの良いショップでも
このホテルにあるのだろうか。

俺はサイトをあちこちみたが、
どう見ても普通のシティホテルだ。

俺はもう一度ショップカードを見た。

打ち込んだアドレスを間違ったのかと思ったからだ。

俺はよく見るとショップカードに
書かれていたアドレスの下に
小さな数字とアルファベットの羅列に気が付いた。

「なんだこれ。暗号?」

その文字は手書きのように見える。
もしかしたら先輩が書いたのだろうか。

俺はもう一度、サイトを見た。

【特別会員はこちら】という
小さな文字を見たのを思い出したからだ。

通常のサイトであれば、
【会員の方はこちら】と言った文字は
大きく目立つような場所にあるが
その【特別会員はこちら】の文字は小さく
まるで隠れるように画面の隅に表示されていた。

俺はそこをおそるおそるクリックする。

すると別のポップアップ画面が出てきて、
俺はそこにショップカードの暗号を入れた。

「入れた!」

画面が切り替わり、俺は……目を見開いた。

目の前には先ほどと同じシティホテルの
ホームページが広がる。

ページの仕様は同じで、
トップページにはホテルの
外観の写真が広がり
概要が載っている。

だが。
ホテルの愉しみ方、ホテルの部屋の紹介、などと
書かれている見出しに載せられた写真は、
どうみても普通のホテルではない。

それはラブホテルのような、と
言えばいいのだろうか。

行ったことが無いのであくまで想像だが、
とにかく、エロいことをするための
部屋であろう写真が出てきたのだ。

俺は【お部屋一覧】と書かれた見出しを
おそるおそるクリックした。

画面には写真が並び、
部屋の特徴の説明と
【ご予約はこちら】の文字が出てくる。

俺は一番最初に出て来た部屋の写真を
クリックしてみることにした。

最初は驚いたが、
クリックした写真は
高級ホテルのようなベットの写真で
いかがわしい雰囲気ではなかったからだ。

でてきた部屋の写真は
アンティーク調の家具で統一されていて
見るからに豪華だった。

大きなベットが特徴らしく
天蓋付きのキングサイズベットと
寝室から直通で行けるジャグジー風呂の
説明が書いてある。

どうやらホテルの最上階の部屋らしく
ジャグジー風呂はバルコニーっぽいところにあり
夜は夜景を見ながら風呂に入れるらしい。

すごい。

こういうところで悠子ちゃんと
一晩過ごせたら……。

そんな妄想を脳内で描きつつ、
俺は【次へ】をクリックする。

すると、次に出てきた部屋は
あの動画を彷彿させるような部屋だった。


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