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18巻
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しおりを挟む第一章 船で帰ろう。
僕は茅野巧。不慮の事故で死んでしまった元日本人。
そもそもその事故は、エーテルディアの神様の一人、風神シルフィリールが起こしてしまったもので、僕はただただ巻き込まれてしまったようだ。シルフィリール――シルはそのことに責任を感じ、僕をエーテルディアに転生させてくれたのだ。シルの眷属としてね。
そして、僕がエーテルディアに初めて降り立ったところは、ガヤの森という危険な場所で、しかもそこで双子の子供達と遭遇した。
後からわかったのだが、その子達は水神様の子供だったんだけどね。シルの作為を感じたが、子供達を放り出すことはできず、僕は弟妹として一緒に生活することにした。
そんな僕達は、冒険者としていろんなところを旅したりして、景色を楽しんだり、美味しいものを食べたりと充実した生活をしている。
現在は仮の契約獣であるリヴァイアサンのカイザーと共に、レギルス帝国のグラッドの街にある『貴石の迷宮』の攻略に勤しんでいたのだが、攻略は一旦中断して、ガディア国に帰ることにしたのだった。
「「しゅっぱーつ!」」
わざわざ見送りに来てくれた冒険者ギルドのギルドマスターのクリスさん、迷宮管理本部の本部長のイーサン殿、グラッドの街で仲良くなった冒険者のディルさんに別れを告げ、僕達の乗った船がグラッドの街を出港した。
「「たんけんしたい!」」
「了解。でも、ゆっくり探険しないとすぐに見るところがなくなるからね」
「「わかってるよ~」」
ベイリーの街までは、順調に進んで十日ほど掛かるようだ。
ガディア国の王様、トリスタン様が他国にいる僕達を心配して派遣してくれた文官で、僕の後見をしてくれているリスナー伯爵家の次男、パトリックさんが手配したこの船は、立派な大型船だ。大きな船ほど船足は遅くなってしまうものらしいが、この船は最新型のためそこそこ速いらしい。
レギルス帝国に来た時は、カイザーが一日も掛けずに連れてきてくれたので、いかにカイザーが凄いのかがわかるよな~。
「じゃあ、まずは船室からかな?」
「「おへや~」」
「では、案内しますね」
パトリックさん達が先に部屋の確認をしたので、実は僕達は取ってくれた部屋をまだ見ていないのだ。
「こちらになります。まずは登録ですね」
パトリックさん達に案内してもらって部屋に到着すると、まずは扉のオートロック系の魔道具に魔力登録を行う。
そして部屋に入ったのだが……あまりの豪華さに僕は言葉を失った。
「「おぉ~」」
「……え?」
前回乗った船でも特等室に泊まったが、その時よりも遥かに豪華な部屋に見えたのだ。
「ちょっと待ってください! もしかして、この部屋って特等室ですか!?」
たぶん、あの時の船よりも大きくてさらに最新型だという関係で、等級に違いがあると思うが、この部屋は間違いなくこの船で一番良い部屋だと思う!
いや、払えない料金ではないとは思うが、問題は僕がその料金を払わせてもらえないことなのだ!
「言っておきますけど、支払いはこちら持ちです。タクミさんから金銭は一切受け取りませんからね」
「やっぱり! いや、でも、これは駄目ですよ。払わせてください!」
「私も上からの指示を受ける立場ですので、それはできませんね」
「えぇ~~~」
パトリックさんは僕が言い出すだろうと、先回りして支払いについて断ってきた。
「おかね、はらえないの?」
「おみやげ、ふやす?」
「っ!!」
「うむ、代金の支払いができないのであれば、それに代わるものを渡すということか! 子らよ、それは良い考えだ!」
「「うん!」」
子供達の提案は、とても良いものだった。カイザーも頷いている。
僕はお土産として、貴石の迷宮の一階層で手に入れた枝を増量することに決めた。あ、どうせなら大粒の真珠も混ぜておこうかな。……たくさん秘蔵しているしね。
「私達は四人部屋を借りていますが、寝室のみになりますので、何か話し合いなどがある時はこの部屋をお借りするかもしれません」
「使ってください。というか、話し合いがなくても、ここで寛いでもらっていいですから!」
パトリックさんと一緒に文官がもう一人、マシューさんと、騎士が二人、ランサーさんとユージンの計四人が僕のところに派遣されて来ている。たぶんパトリックさん達の借りた部屋は、二段ベッドが二つだけしかないような、完全に寝るためだけの部屋だろう。
それに比べてこの特等室は、ゆったりとした寝室とは別に、これまたゆったりと寛げるように広めのリビング、テラスに浴室、簡易キッチン付きの食事スペースまであるのだ。
「よろしいのですか?」
「もちろんですよ! あ、扉の登録も全員してあります?」
「いえ、私だけですね」
「じゃあ、すぐにでも全員の登録をしてください」
「ありがとうございます」
部屋についてはもう借りているものだし、あとは利用し尽くすしかない。
「さて、部屋の確認も終わったし、どうする?」
「「たんけん、たんけん!」」
「というわけですので、僕達は船を少し回ってきますね」
「ええ、楽しんできてください」
パトリックさん達も一旦自分の部屋に戻るということなので、部屋を出たところで別れて僕達は適当に足を進めた。
「「ここはー?」」
「えっと……遊戯室かな?」
「ゆうぎしつ?」
「なにそれ?」
「自由に遊ぶ部屋だね。ほら、椅子に座っている人は本を読んでいるし、こっちの人は体操かな? 身体を動かしているだろう」
その後もいろいろ見て回ったが、あとは食堂や船の生活で必要になりそうな日用雑貨の店があるだけだった。
まあ、船の大半は客の船室か立ち入り禁止区域になるので、もともとそこまで見て回るような場所は少ないのだ。
「お、良い風だな~」
「「きもちいいね~」」
「うむ、このようにのんびり海を堪能するのは初めてだ」
最後に甲板に出ると、気持ちの良い風が吹いていた。
「「……むむっ」」
子供達が船首へ行き、手すりに登ると、海を覗き込んだ。
すると、二人からとても不満そうな声が聞こえてきた。
「どうしたんだ?」
「「とおい~」」
「え?」
「「……うみが、とおく」」
「ああ、船が大きい分、海面から遠いのか」
前に乗った船の甲板では、海面から飛ぶ水飛沫で遊んでいた。
だが、今回の船ではそれができないようだ。
「ん~、下の側面の通路だったら水飛沫はあるかな?」
「「いってみよう!」」
側面だったら下のほうにも開けた通路があることを伝えると、子供達はすぐさま移動を始める。
しかし――
「「……むぅ~」」
「残念。水飛沫はないね」
良い船だからか、水飛沫がかかるような設計はされていないようだ。
「いっそのこと、飛び込んでしまうか?」
「……カイザー、さすがにそれはやめて」
カイザーの危険な提案は、即座に却下する。
危ないのもあるが、船の運航の問題にもなりかねないからな。
「ほらほら、元気出して。甲板に戻って、おやつでも食べようか」
「「……たべるぅ~」」
落ち込んでいてもおやつには反応する子供達は、早足で甲板に戻っていった。
「「おやつ~、おやつ~」」
「何にする?」
甲板には好きに寛げるように、テーブルと椅子が置いてある区間も用意されている。そこの空いている席に座る頃には、子供達はすっかり元気になっていた。
「「えっとね……」」
「我は、おにぎりが良い!」
「「……おやつじゃない」」
「む?」
リクエストは子供達に聞いたのだが、我先にと答えたのはカイザーだった。
しかも、子供達から思いっ切り突っ込まれていた。
「アレンとエレナのおやつと言えば、甘いものが普通かな」
「おにぎりでは駄目か?」
「「あまいのがいい!」」
「……まあ、同じものを食べないといけないわけじゃないから、カイザーはおにぎりでもいいよ。――で、アレンとエレナは何がいいか決まった?」
カイザーにおにぎりを出してから、もう一度子供達にリクエストを聞く。
「「アイス!」」
「了解。味はどうする? まだいろいろあるよ」
アイスは作り置きをたっぷりした時期があったので、味の種類は豊富に揃っている。
「アレン、チョコあじ!」
「エレナ、はちみつあじ!」
「それぞれの味? それとも盛り合わせにする?」
「「もりあわせ!」」
「我も!」
「「「……え?」」」
おやつにはおにぎりをリクエストしたカイザーだが、アイスクリームも食べるようで、子供達に倣うように手を挙げた。
その行動に、僕も子供達も無意識に声を上げてしまった。
「……だ、駄目か?」
「いや、まあ……いいけどさ~」
間違いなくカイザーの食いしん坊度合が高くなっていることが発覚した出来事だった。
◇ ◇ ◇
渡航二日目、今日は部屋の簡易キッチンで料理をすることになった。
「さて、いろいろ作るか~」
「「いっぱいつくるぞぉ~」」
「うむ、我も頑張るぞ」
迷宮用の作り置きの料理、おやつ。あとはカイザーがお持ち帰りする料理を量産する予定だ。
「タクミ、お願いがあるのだが……」
「ん? どうしたんだ?」
「ブルードラゴンの肉で、何か料理を作ってもらえぬだろうか?」
「ブルードラゴンか~」
「うむ、ただ焼いたものでも美味かったが、もう少しタクミが手を加えたのなら、きっともっと美味くなるはずなのだ」
確かに、ただ焼肉として食べたブルードラゴンは美味しかった。
「「おぉ~、たべたい! たべたい!」」
「アレンね、カレーがたべたい!」
「エレナはね、あれがいい! えっと、かばやき!」
海のものだからシーフードカレーと言うのか? まあ、ドラゴンカレーか。それも美味しそうだが、甘じょっぱいタレで蒲焼風にしても美味しそうだ。
「ん~……」
「「ダメ?」」
「いや、匂いがな~。豪華な部屋にカレーの匂いが染みついてしまったら大変だろう」
そもそもカレー以外の料理でも、その問題は発生するのか? 常に空気の換気をしていれば、問題ないかな?
「タクミは光魔法が使えるのであろう? それなら浄化の魔法を使えば良いのではないか?」
「浄化で匂いも取れるものなの?」
「清めることを目的とした魔法であるし、我はいけると思うな。そもそも魔法は使用者の思考に大きく左右されるものだから、タクミが空気も綺麗にすると考えながら行使すれば良いと思う」
「……なるほど」
確かに、魔法を使う上で思考は大事だ。以前〝作り出す〟と〝操る〟の違いを考えなかっただけで、水魔法が使えなかったくらいだからな。
「じゃあ、匂いが少なさそうな料理から始めて、浄化を試してみようか。それで問題なさそうなら、最後にカレーを作るか~」
「「やったー!」」
というわけで、まずはスープやおやつから作り始めることにした。
「アレン、トゥーリのスープがいい!」
「エレナ、ぐはね、かいがいいな!」
「お、いいね」
一品目は貝のトマトスープに決まったので、早速作っていく。
――ピロンッ♪
「ん?」
トマトスープができあがった頃、脳裏に聞き覚えのある音が聞こえた。
「「お兄ちゃん?」」
「タクミ、どうかしたのか?」
「シルからメッセージカードが来たみたいだな」
「風神様からか。何と書いてあるのだ?」
「えっと……料理が欲しいらしい」
正確には〝部下達に料理か甘味を食べさせてあげたいので、何か作ってもらうことはできないでしょうか? もちろん、それなりのお礼はさせていただきます〟という、神様から来たとは思えないほど丁寧な内容だった。
「ふむ、タクミの料理は神も虜にするのだな!」
「お兄ちゃんのりょうり、おいしいからね!」
「さすが、アレンとエレナのお兄ちゃんだ!」
普通のことじゃないと思うが、カイザーもアレンとエレナも、すんなり受け入れていた。
「部下達に配るっていうことは、それなりの量が必要だよな?」
「スープ?」
「ごはん?」
「それがいいかもね。それじゃあ~……具だくさん豚汁……じゃないな、ミソスープと炊き込みご飯とかでいいかな?」
「「いいね、いいね」」
料理の指定はなかったんだよな~。それなら数が決まっているものじゃなくて、人数によって配分しやすそうなものにしよう。
「汁は……オーク肉、タシ葱、マロ芋、シロ葱、ゴボウ、ダイコン、ニンジン。キノコも入れよう。あ、コンニャクの実を手に入れたから、それも切って入れて……」
「「たっぷり!」」
「具だくさんだろう? で、ご飯は何が良いかな?」
「「かい?」」
「いいね。貝の炊き込みご飯にしようか」
「アレンもたべたい」
「エレナもたべたい」
「そうだね。自分達の分も作ろう」
魚介をたっぷりと仕入れたばかりだからか、思いつく料理が海の素材を使ったものに偏っている気がする? まあ、それが駄目っていうわけじゃないんだけどね。
「トゥーリのスープではアサリを使ったから、ご飯はホタテにしようか」
「「わ~い」」
炊飯器は二つ用意して、両方でホタテご飯を作っていく。
「よし、完成!」
「「おぉ~」」
豚汁……じゃなくて、オーク汁だな。オーク汁も自分達の分を取り分け、残りは大鍋ごと。ご飯も炊飯器のままシルのところへ送る。あ、炊飯器はできれば返して欲しいと、貼り紙をしておいた。
――ピロンッ♪
送ってすぐに反応が返ってくる。
――ピロンッ♪
――ピロンッ♪
――ピロンッ♪
「おぉ?」
しかも、複数回。
何事かと思い、すぐに調べてみると何やらいろいろ届いていた。
その中にまたメッセージカードがあったので、まずはそれを読んでみた。
内容は感謝の言葉と、とりあえずのお礼の品を送るということ。あとは、他にもお礼をするので、何かあったら伝えて欲しいと書いてあった。
「えっと……うわっ! 転移の魔道具だ!」
とりあえずのお礼の品は、鍋やフライパンなどの調理道具もあったが、それに紛れるように転移の魔道具が一台あった。迷宮で手に入れた魔道具は後見してくれているルーウェン家に、もう一つ手に入れた時は同じく後見してくれているリスナー家に渡したいと思っていたが……またシルに心を読まれたかな?
転移の魔道具は地上では貴重品だ。だが、シルの領分だったはずだから手に入りやすく、僕が欲しがっていたからお礼の品になると思ったかな? 心を読まれた疑惑もあるが、同時に覗きもされていた疑惑が浮上した。
「……はぁ」
覗きはシルだけじゃなくて他の神様達もしているみたいだし、これは諦めるしかないんだろうな~。
とりあえず、転移の魔道具はありがたく貰い、後見してくれている家に平等に渡すことができそうだ。
「さて、次の料理を作ろうか。おっと、そうだった。――《ピュリフィケーション》」
すっかり忘れそうになっていたがふと思い出したので、一回浄化魔法を試してみる。もちろん、消臭をイメージしてね。
「「おぉ~、すっきり!」」
「うむ、空気が綺麗になった感覚があるな!」
「上手くいったみたいだね。これならカレーを作っても問題ないな」
「「やった!」」
浄化魔法はしっかりと空気も清浄にしてくれたので、リクエストされたブルードラゴンのカレーもたっぷり作った。
今日のおやつは甘味ではなく、できたばかりのカレーを食べてみたが、我ながら絶品だった。やはり、ドラゴン肉はかなり美味しいと再認識した。
「「んにゃ?」」
「アレン、エレナ、どうしたんだ?」
おやつ後も引き続き料理を続けていると、何故かアレンとエレナが部屋の扉をじっと見つめていた。
「「いっぱい?」」
「うむ、人の気配があるな」
「ま、まさか!」
子供達とカイザーの言葉を聞き、僕は嫌な予感がして慌てて扉を開けてみた。
「パトリックさん!?」
すると、扉のすぐ傍にパトリックさん達四人がいた。
「何をしているんですか?」
「その……談話室をお借りしていたら、とても良い匂いがしてきましたので……」
パトリックさん達はリビングにいたようで、ずっと僕達が作っていた料理の匂いを嗅いでいたらしい。そして堪えきれなくなり、扉の前に来てこちらの様子を窺っていたようだ。
「……普通に入ってくれば良かったじゃないですか」
知らない人ではないんだから、普通に入ってきて普通に声を掛けてくれたら味見くらいさせてあげたのにな。
「「まだいるね~」」
「「「「「ん?」」」」」
子供達の言葉に僕はもちろん、パトリックさん達も首を傾げた。
「この部屋の外、廊下に出る扉のほうだな。そこにも数人おるな」
「「「「「えっ!?」」」」」
カイザーの言葉で、慌てたようにランサーさんとユージンが走っていった。たぶん部屋の外を確認するためだろう。
「……部屋に残らないよう匂いを消しても、匂いを発生させた時点で駄目ってことか」
初めてカレーを作ったリスナー邸でのように、匂いで人を集めてしまったようだ。
「タクミさん、私が言うのもおかしいかもしれませんが、良い匂いをさせるのは問題ありませんよ。その匂いで集まる者がいたとしても無視していればいいんです。煩わしいようなら、今のようにランサー殿とユージン殿が追い払ってくれますから」
「ははは。じゃあ、お願いしようかな」
まあ、異臭をさせたのならともかく、良い匂いだから遠慮はいらないか。
「「さいかい?」」
「そうだね。料理の続きをしようか」
「アレンね、つぎはあまいのがいい!」
「あまいの! エレナはね、チーズケーキをつくりたい!」
「お、いいね」
マリアノーラ様に貰ったお菓子のレシピ集には、チーズケーキの種類がたくさんあった。まだまだ作っていないものがあるので、挑戦してみるのもいいだろう。
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