異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉

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18巻

18-3

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「まずはお土産を渡しに王都に帰るっていう予定は変えないからな」
「「それがおわったら!」」
「うむ、我も一度は巣に戻るが、すぐに王都に参ろう! 合流できる頃にはタクミ達も身軽になっているのであろう?」
「「なってるとおもう!」」
「……」

 ドラゴン探しの予定が既に組まれている!?

「はぁ……じゃあ、僕は王都で留守番をしているから、三人で行っといでよ」
「「「えっ!?」」」
「「お兄ちゃんはいかないの!?」」
「タクミは行かんのか!?」

 思い切って突き放す言い方をしてみると、三人は慌てたように僕のほうを見てくる。

「戦力や移動力が欲しいなら、ジュール達に行くか確認してあげるよ」

 全員ではないとは思うが、契約獣達の中にも行きたいという子はいるだろう。

「「お兄ちゃんは?」」
「だって、僕は行きたくないもん」
「「「えぇ!?」」」

 子供っぽい言い方になるが、自分の気持ちを素直に伝えておく。
 今日はいつものように流されているばかりの僕じゃないぞ!

「「いっしょがいい!」」
「アレンとエレナがドラゴンを探しに行かないなら、一緒にいるぞ」
「「ドラゴンさがしはー?」」
「それは一緒に行かないかな」
「「どうしても?」」
「うん、どうしても」
「「うぅ~~~」」

 子供達もねばってくるが、僕もそれを拒否する姿勢を崩さない。
 子供達がほんのり泣きそうな表情をしているが、まだ流されないぞ~~~。

「タクミ、本当に駄目なのか?」
「うん、一緒には行かない」

 今度はカイザーが確認するように問いかけてくるので、それを即座に否定で返す。

「ドラゴンの肉は美味かっただろう?」
「まあ、美味しかったけど、カイザーがお土産でくれたブルードラゴンがたっぷりあるから、それで充分だよ」
「だ、だが、上位種はきっともっと美味しいはずだし、別のドラゴンだとまた味が違うかもしれないだろう? 気になるではないか!」
「気になりはするけど、調達しに行こうとまでは思わないかな」
「「おもうよ!」」

 すると、泣き落とし系で攻めてくるかと思った子供達が、怒った風の表情になった。
 あれ? これって……逆ギレってやつか?

「「お兄ちゃんのいじわる!」」
「お兄ちゃんは、アレンといっしょにいくの!」
「エレナはお兄ちゃんといっしょにいくの!」
「……えぇ~」

 思っていた方向と違うほうへ進みだし、このあとはどう収めればいいのかわからなくなってきた。

「えっと……」
「「むぅ~~~……」」
「……」

 子供達はわかりやすくむくれていた。
 ほおをぱんぱんにふくらませてうなっている姿は可愛いとしか言いようがない。
 だが、それで心を許して子供達をなぐさめてしまうと、最終的にドラゴン狩りに行くことになってしまいそうなので、ここは心を鬼にして黙って見守ることにする。

「「……」」

 子供達はちらちらと上目遣うわめづかいで僕のほうを見てくる。
 これは完全に僕が折れるのを待っているな。

「「むむむ……おへやにかえる!」」

 僕が折れないでいると、子供達が突然部屋に向かって歩き出した。
 しかも、無言で。それも早歩きだった。


「「お兄ちゃん! ジュールたちをよんで!」」

 部屋に戻るなり、子供達はそんなことを言い出した。

「え? ジュール達を? まあ、いいけど……とりあえず、奥の部屋に行こうか」

 子供達が何をしたいのかよくはわからないが、僕はフェンリルのジュール、飛天虎ひてんこのフィート、サンダーホークのボルト、スカーレットキングレオのベクトル、フォレストラットのマイル、グリフォンのラジアン……と、僕が契約している契約獣達を呼び出すことになった。
 ただ、談話室だとパトリックさん達が入ってきた時に驚くので、寝室のほうで呼び出した。

《ん? お兄ちゃん、ここはどこ?》
《見たことのない部屋ね》
《ここは宿ですか?》
《え~、迷宮じゃないの?》
《も~、迷宮は終わったの!》
《あそんでくれるの~?》
「ここはガディア国に帰る船の中だよ。みんな、静かにな」

 実際のところ、船に申請して料金を支払えば従魔も乗船できる。だが、僕はそれをしていないので、今は無賃乗船している状態だ。途中から申請できるかはわからないが、できたとしても……どのみち自由に出歩くことはできないのでしないつもりだ。

「で、みんなを呼んだのは、アレンとエレナの希望だよ」
「「さくせんかいぎをするの!」」
《作戦会議? 何の作戦の?》
「「お兄ちゃんをせっとくするの!」」
「ふむ、なるほどな~。それはしっかりと話し合いをしなくてはならないな」

 カイザーはもちろんだが、ジュール達も巻き込んで、ドラゴン討伐に行くべく僕を説得するための話し合いをするらしい。

「お兄ちゃんは、あっちにいってて!」
「お兄ちゃんは、きいちゃダメ!」

 それも、僕には聞かせない形でだ。
 まあ、僕を説得するための作戦会議なのだから、内容を僕に聞かせては意味がないか。

「了解。じゃあ、僕は談話室にいるから、終わったら教えてな」

 いつもと違う子供達の行動に僕は成長を感じたので、僕は大人しく部屋から出ていくことにする。

《あら、それでは兄様が一人になっちゃうわ。なら、私は兄様といようかしら?》
《それなら、わたしがタクミ兄といるの! フィートはみんなの話を聞いていて欲しいの!》

 すると、優しい女の子組が、僕が一人にならないように気を遣ってくれる。

《話が変な方向に進んだ場合、フィートのほうが止められるの! だから、こっちに残って欲しいの!》
《ふふっ、マイルったら。ジュールやボルトだって、話が変な方向に進んだら止められるわよ?》
《そうだよ! ボクだってそのくらいできるよ!》
《頑張ります?》
《ジュールは場合によっては話に乗っかっちゃうの! そして、ボルトはみんなの勢いが凄すぎると押し切られる可能性があるの!》

 しかし、マイルの気の遣い方が、何というか……事故というか、脱線防止のためだった。
 ジュールとボルトはマイルの言い分にと苦笑いしている感じだ。

《あらあら。でも、確かにそうね。じゃあ、私が残るから、マイルは兄様をお願いね》
《任されたの!》
「ははっ、じゃあ、フィート、みんなのことをお願いな」
《ええ、任せてちょうだい》

 作戦会議についてはフィートにたくし、僕はマイルを連れて談話室へ移動した。
 フィートに託していれば、マイルの言う通り、話し合いが変な方向へ進むのは止められるだろうし、後から情報を共有してもらえるだろうから安心だ。


《それで、タクミ兄、何があったの?》

 僕はとりあえず寝室を出ると、談話室へと移動した。

「ああ、アレンとエレナ、それとカイザーがさ、ドラゴンを倒しに行くって言うから『僕は行かない。行くなら僕以外のメンバーで行ってきなよ』って言ったのが始まり。どうにか僕もドラゴンのところまで連れて行こうと算段しているんだよ」
《もしかして……お肉のためなの?》
「そうだね」
《わ~なの! その話なら、ベクトルとラジアンもノリノリになりそうなの! それにジュールもなの。フィートに残ってもらって正解だったの!》
「ははは~、そうだな。マイル、いい仕事をしたよ」

 本当に良い仕事をしてくれたと思うよ。

「さて、僕は何をしようかな?」
《ゆっくりするの?》
「マイルは何かしたいことはあるかい?」
《ん~なの……美味しいものを用意しておくの?》
「ああ、それはいいな」

 子供達の話し合いが終わった時に食べる、甘いものでも作って待っているかな。

「じゃあ、何を作るかな~? マイル、何が食べたい?」
《タクミ兄の作るものは、何でも美味しいから迷うの! あ、でも、カリカリしたものが食べたいの!》
「カリカリ……ん~、木の実にほろ苦いキャラメルをまとわせたものなんてどうだい?」
《美味しそうなの! 食べたいの!》

 本格的なおやつというよりは、甘いものを欲した時、ちょっと小腹が減った時などに口に放り込めるあめやキャラメルみたいなものになるが、マイルのリクエストには最適だろう。

「よし、作るか」
《わ~いなの!》

 僕はマイルを連れて簡易キッチンに移動し、材料を《無限収納インベントリ》から取り出す。
 まずはアマンの実――アーモンドに、コトウの実――くるみ、カシュの実――カシューナッツをひとつぶずつキャラメルでコーディングしたものを作っていく。
 砂糖を焦がす作業は見極めが難しいので、苦味が強かったり足りなくなったりするが、それはご愛敬あいきょうってことで!

《カリカリして美味しいの!》

 できあがったばかりのキャラメルアマンを一粒マイルに渡すと、両手でしっかり持ってカリカリと食べ始める。リスっぽいマイルが木の実をかじる姿は可愛いとしか言いようがない。

「コトウとカシュも食べていいからな」
《やったなの!》

 もともとマイルは誰よりも食べる量が少ないので、ここで先にどれだけ食べてもずるくはないだろうと全種類の味見をしてもらう。

「さてと、次は……あ、これだな、フロランタン」

 続いて、クッキーの上にキャラメルのナッツを敷き詰めた感じのお菓子、フロランタンを作ることにした。マリアノーラ様から貰ったレシピ集にあったのを思い出したのだ。

薄切うすぎりにしたアマンを使うのか」

 レシピではスライスしたアーモンドを使うことになっているが、僕は粗めに刻んだ三種のナッツを混ぜて作ることにした。

「「おいしそうなにおいがする!」」
《タクミおにーちゃん、なにつくってるのー?》

 フロランタンを焼いていると、甘い匂いが子供達のいる部屋まで届いたのか、全員で駆けつけてきた。

「作戦会議は終わったのか?」
「「おわった!」」
《ふふっ、正確には中断した、ね。美味しそうな匂いに我慢がまんできなくなったみたいよ》
「ははは~、そうなのか」

 子供達の会議は途中で終わったようだが、フロランタンを作りながらフィートから話を聞いた感じ、とにかくおねだりするという話しか出なかったようだ。

「よし、できたぞ~。飲みものも用意するから、談話室で待ってな」
「「「《《《《《 《は~い》 》》》》》」」」

 甘いミルクティーでお茶タイムを満喫してから、ジュール達にはまた影に戻ってもらった。


 ◇ ◇ ◇


「今日の夕方にはベイリーの港に到着できる見込みだそうですよ」
「あ、そうなんですね」
「「おぉ~」」

 渡航九日目。
 船は順調に進み、予定より一日早くベイリーに到着することがパトリックさんから伝えられた。

「ですので、今夜からの宿泊場所はリスナー邸です。何泊でもどうぞ……と兄から伝言を預かっています」
「ははは~」
「テオドールくんと」
「ラティスくん」
「「げんきかなー?」」

 既に僕達がベイリーの街を訪れることはリスナー家には知らせてあるようで、宿泊予定もしっかり組まれていた。さすがである。

「会うのが楽しみだね」
「「たのしみ~」」
「とはいっても、まだ半日以上はあるんだよね~。今日はどうする?」
「「ん~、べんきょうする?」」

 そうして今日は真面目に勉強するということになり――

「ガディアこく、セルディークこく、アルゴこく、クレタこく、ベルファルトていこく、グレーティアこく!」
「ドワルゴンれんごうこく、エリザベートこく、ハーシムせいこく、ファルスおうこく、レギルスていこく、ジャカルれんごうこく!」
「「いえた?」」
「ええ、正解です」

 アレンとエレナは現役文官であるパトリックさんから、図だけを描いた地図を使って地理を教わっている。

「では、各国の王都の位置はわかりますか?」
「ここ、ここ、ここと……」
「ここ、ここ、ここと……」
「正解です。――タクミさん、この子達、きちんと覚えていますね」
「本当ですか。――二人共凄いねぇ~」
「「えへへ~」」

 ウィンドウ画面頼りの僕とは大違いだ。いや、まあ、国名くらいは覚えているけど、縁のない国の王都の位置は……たぶんあやふやだろう。

「次は、各国の特色や特産物などを覚えていきましょうか」
「「は~い」」

 ……ふと思ったが、これって家庭教師代を支払ったほうがいいんだろうか?

「……パトリックさん、教師代――」
「いりませんよ」
「……」

 言い切る前に断られた。どうして、誰もが用件を言い切る前にさえぎってくるんだろう?
 みんなの察しが良いのか、僕がわかりやすいのか……是非とも前者であって欲しいものだ。

「リスナー家にお土産を奮発しておきます」
「兄に断られないといいですね」

 こうなるとパトリックさんがお金を受け取ってくれないのだろうと、僕はリスナー家へお土産という形で払おうと決めた。
 断られる可能性もあるが……押し切れるように頑張ろう。

「五こだね」
「そうだね」
「アレンくん、エレナさん、何が五個なんですか?」
「「いったくに!」」
「ああ、行ったことのある国ですか」
「「そう」」

 僕とパトリックさんがやり取りしている間に、子供達は行ったことがある国を数えていたようだ。

「それは凄い。私よりも多いですよ」
「「おぉ~、かった~」」

 二人はちゃんと自分達が行った場所のことを覚えているんだな~。僕がアレンとエレナと同じ年頃だった時、違う県に行ったとしてもちゃんと認識していたんだったかな? ……全然記憶にないな。

「むむ、我はガディアとレギルスだけだ……」
「アレンのかち~」
「エレナのかち~」

 何故かカイザーも行ったことのある国勝負? に参加してきた。
 カイザーの場合、陸地はそれほどでもないが、海の中だったら大陸そのものを何周もしているんだろうな。

「「ぜんぶいきたいねぇ~」」
「二人の歳で既に五カ国に行っているんでしたら、あと数年で実現しそうですね」
「「がんばる! お兄ちゃん、よろしく」」
「うむ、それは楽しそうだ。タクミ、行く時は我も誘ってくれ」
「……よろしくって、言い方が違うような気がするけど、まあ……順番にな」
「「うん!」」

 とは言っても、ガディア国以外は一つの街に行っただけで、国内を巡ったわけでもない。なので、行ったことのある国でも、もう一度行って違う街を観光するっていう選択肢はある。
 地球と比べたら飛行機などはなく、交通面で未発達であるはずなのに、エーテルディアでのほうがあちこち行っているんだよな~。あ、飛行機がない分、ドラゴンやグリフォンなどの魔物が活躍しているかな?

「「あっ! ついた?」」

 こうして雑談しながら勉強しているうちに、ベイリーの港に到着した。

「「とうちゃく!」」
「船旅というのは、なかなか疲れるものだな~。では、我は言っていた通りにここで一旦帰るとするか」
「「えぇ!? ここで?」」

 港に到着して街に入る前に、カイザーが別行動を宣言する。

「うむ、早く身体を動かしたくてたまらないのでな」
「ああ、それはそうか」

 リヴァイアサンであるカイザーの普段の運動量は、間違いなく多いだろう。ほとんど激しい動きができない船旅で九日間も過ごしていたら完全に運動不足だな。

「「むむ……それはわかる」」
「……」

 運動量が多めの子供達は、カイザーの気持ちに共感できるようだな。

「うん、わかった。じゃあ、カイザー、また気が向いたら【念話】で連絡してね」
「うむ、タクミと行動するのは楽しかったゆえ、そう遠くないうちに連絡する。――子らよ、次に会う時まで息災そくさいでな」
「「そくさい?」」
「元気で、っていう意味だな」
「「うん、そくさいしてる!」」

 ちょっと使い方が違うが……まあ、いいか。

「あれ、カイザーさんはどこへ?」

 街から離れていくカイザーを見て、ユージンが不思議そうに首を傾げている。

「ここから別行動。ちょっと用事を済ませてくるってさ」
「え、もしかして、今から別の場所に移動するんですか? 一泊して明日の朝では駄目だったんですか?」
「ああ、うん、船の中が暇すぎて身体を動かしたいって。だから、まあ……夜通し走るんじゃないかな」
「えぇ!?」

 正確には〝泳ぐ〟だけどね。

「動かなすぎて動きたくなるのはわかりますけど、僕は今から走れって言われたら辛いです」
「動かないでいるのも疲れるっていうしね~。僕もそっち側だよ。今から走れっていうのは辛い。まあ、アレンとエレナなら、このまま冒険者として依頼を受けるって言っても、喜んで行きそうだけどね」
「「いらい、いく?」」
「行かない、行かない。今日はこのままリスナー家に行くよ」

 冗談なのに本気にされそうになった一面もあったが、僕達は無事にベイリーの街へと到着した。


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