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本編
532.アル様とお出かけ4
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「タクミ、森は諦めるべきだな」
「いやまあ、そうなりそうですね」
数歩進むたびに脱線していれば、確実にそうなるだろう。
今もちょっと茂みで一生懸命に薬草を採取しているしな。
「ところで……あの子達は、今度は何を採取しているんだ?」
「見える限りでは、リリエ草とかフェンゼ草のような一般的な薬草ですかね」
「そうか、それなら安心だ」
よく見つかる薬草とわかって、アル様はわかりやすく安堵していた。
「アル様、アル様、ブラン茸とノワール茸があったぞ!」
「はぁ!? またかっ!!」
アレンとエレナの採取物で安堵していたアル様だが、カイザーの採取物を見て驚愕していた。
しかも、今回は両方のキノコが複数個あるようだ。カイザーはブラン茸とノワール茸をよく見つけるな~。
「カイザー、その二つのキノコは魔力で育てないといけないから、元は生えてきたばかりの小さなものだろう? よくそんなに見つけられたな」
「む? 何となくコツを掴めてきたので、わりと簡単だぞ?」
「そうなのか?」
「うむ、周辺に魔力を撒くように放出するのだ。そうすると、元は小さなキノコでもにょきっと大きくなる。それを見逃さずにさらに魔力を注いで育てるという寸法だ!」
「わ~……見つけてから魔力で育てているんじゃなかったんだな」
見つける前に魔力を放出していたのか~。ということは、結構な魔力な無駄遣いをして見つけていたんだな。だがまあ、効率は悪くないのかな?
「「おぉ~、カイザー、凄いねぇ~」」
「そうであろう、そうであろう」
いつの間にかに戻ってきていたアレンとエレナがカイザーを褒め称え、カイザーは嬉しそうに胸を張る。
「アレンも探してみたい」
「エレナも見つけたい」
「うむ、ではやってみるか?」
「「うん!」」
止める暇もなく、アレンとエレナ、そしてカイザーはブラン茸とノワール茸を採りに行ってしまった。
「魔力は少しで構わない。周囲に薄く放出するだけで良い。大事なのは、その魔力によって変化するものがないかどうかを見逃さないことだ」
「「わかった~」」
僕達から少し離れた場所でカイザーのレクチャーを受けて、早速キノコ探しを始めたようだ。
「「むむむ~~~…………とりゃあ!」」
「うむ、魔力の放出は問題なさそうだな。あとは周囲の変化を観察する」
「ん~? ……アレンのほうはなさそう?」
「あっ! あれ! エレナのほうはあった!」
「では、エレナ。その個体に魔力を」
「うん!」
エレナが変化のあった場所に集中的に魔力を送ると、にょきっと大きくなったキノコが出現した。
「やったー。ブラン茸だ!」
「うむ、立派なキノコが採れたな」
エレナがブラン茸を見事に採取した。
しかし……実際に採取方法を見ると、とんでもないやり方だよな~。
「む~、アレン、もう一回やってくる!」
エレナだけが採取できたことが悔しかったのか、アレンは場所を移動してまた魔力を放出していた。
「エレナももう一回やってくる~」
エレナも場所を移動して、再度挑戦するようだ。
「アル様、ブラン茸とノワール茸がたくさん手に入りそうな予感がします」
「私も同じ予感がするな。子供達はもう一回ずつくらいで終わる性格ではないよな?」
「絶対に終わらないと思います」
「だよな~」
確実に、間違いなく、自信を持って言える。一個や二個じゃ終わらずに、たくさんのキノコを採取してくるだろうと!
「一応確認しておきますけど……全部いります?」
「…………保留でもいいか? 私では薬にしたものが日持ちするかどうかも、材料として保管できるかどうかもわからないのでな」
「あ~、それは重要ですよね。まあ……売るにしても、使うにしても、あと……食べるにしても? アル様からの返答を待ってからにします」
「食べるのか!?」
「……食用できるみたいなので、一応候補に入れてみました」
まあ、薬の材料なので、食材として使うつもりはないんだけどな。
「「美味しいの?」」
「っ! 食べられるキノコだけど、美味しいかどうかはわから……――えっ!?」
再び、いつの間にか戻ってきていた子供達が、背後から声を掛けてきたので一瞬驚いたが、食用について話しつつ振り返った。
そして、二人の頭の上に異変が起きていて、僕は言葉を詰まらせてしまった。
「アレン、エレナ……それは何だ?」
アレンとエレナのそれぞれの頭の上に、大人の握り拳サイズのモモンガが乗っかっていた。
「「シュガーモモンガ!」」
「いや、種族を聞いたわけじゃないんだけど……」
シュガーモモンガは、甘いものが好物なFランクの魔物だ。これまたパステルラビットと同様にあまり戦闘を好まない種族である。
「どうして頭の上にシュガーモモンガがいるんだ?」
「「仲良くなったの」」
『『キュイ』』
「そうか、仲良くなったか」
シュガーモモンガは、アレンとエレナから貰ったのか、両手で飴玉を抱えて夢中で舐めている。森の中での甘いものと言えば果実や樹液などで、飴玉は初めてだからだろうな。
「念のために聞きたいんだが、この仔達はどうするんだ?」
「一緒に行きたいって」
「アル様、いい?」
『『キュイ』』
ふれあい広場でのペット候補らしい。
「……タクミ」
「……アル様、駄目なら駄目って言って良いですよ。その場合は、責任を持って僕が飼い主を探すか、僕の契約獣にしますから」
ふれあい広場が駄目でも、もしかしたらルーウェン家で受け入れられるかもしれない。それが駄目でも、飼いたいっていう人はいるかもしれない。あとは普段は影の中ばかりになってしまうが、シロ達のように僕の契約獣にしてもいい。
「いや、まあ……大人しそうな魔物だから大丈夫だとは思うが、返答は後日にさせてくれ」
「もちろんです。どちらになっても、責任を持って面倒を見ますから!」
「私としては、喜んで受け入れたいんだがな~」
「ああ、アル様好みでした?」
「っ!」
小動物好きのアル様の心はがっちり掴んでいるようだ。
そうなると、ふれあい広場行きが濃厚かな? アル様が交渉を頑張りそうだしな。
「そういえば、キノコ採りは終わったのか?」
「「満足した!」」
「うむ、頑張ったぞ~」
待っていました! とばかりに、カイザーがブラン茸とノワール茸が入った籠を差し出してくる。
「……えっ? いつの間に、こんなに採取したんだ?」
「子らが少々魔力を放出させ過ぎてな。運の良いことに、そこに群生していたキノコが一気に育ったのだ」
「……群生地にかち合ったか~」
思っていた以上のキノコを差し出されて驚いたが、どうやら強運が作用したようだ。
「と、とりあえず、魔物もだが、キノコや薬草も今日はこれ以上増やさないでくれ」
「ははは~」
アル様の精神は、かなりすり減っている様子である。
パステルラビット十匹に、グラトニーラビット二匹、シュガーモモンガ二匹。それに幻のキノコがたっぷり。うん、疲れるかもな。
「よし、アレン、エレナ、カイザー、今日はもう帰るよ」
「「えぇ!?」」
「なぬ!?」
さすがにこれ以上はアル様の負担になりそうなので、驚く子供達を言い聞かせて、僕達は森の入り口にすら辿り着く前に引き返すことになった。
「いやまあ、そうなりそうですね」
数歩進むたびに脱線していれば、確実にそうなるだろう。
今もちょっと茂みで一生懸命に薬草を採取しているしな。
「ところで……あの子達は、今度は何を採取しているんだ?」
「見える限りでは、リリエ草とかフェンゼ草のような一般的な薬草ですかね」
「そうか、それなら安心だ」
よく見つかる薬草とわかって、アル様はわかりやすく安堵していた。
「アル様、アル様、ブラン茸とノワール茸があったぞ!」
「はぁ!? またかっ!!」
アレンとエレナの採取物で安堵していたアル様だが、カイザーの採取物を見て驚愕していた。
しかも、今回は両方のキノコが複数個あるようだ。カイザーはブラン茸とノワール茸をよく見つけるな~。
「カイザー、その二つのキノコは魔力で育てないといけないから、元は生えてきたばかりの小さなものだろう? よくそんなに見つけられたな」
「む? 何となくコツを掴めてきたので、わりと簡単だぞ?」
「そうなのか?」
「うむ、周辺に魔力を撒くように放出するのだ。そうすると、元は小さなキノコでもにょきっと大きくなる。それを見逃さずにさらに魔力を注いで育てるという寸法だ!」
「わ~……見つけてから魔力で育てているんじゃなかったんだな」
見つける前に魔力を放出していたのか~。ということは、結構な魔力な無駄遣いをして見つけていたんだな。だがまあ、効率は悪くないのかな?
「「おぉ~、カイザー、凄いねぇ~」」
「そうであろう、そうであろう」
いつの間にかに戻ってきていたアレンとエレナがカイザーを褒め称え、カイザーは嬉しそうに胸を張る。
「アレンも探してみたい」
「エレナも見つけたい」
「うむ、ではやってみるか?」
「「うん!」」
止める暇もなく、アレンとエレナ、そしてカイザーはブラン茸とノワール茸を採りに行ってしまった。
「魔力は少しで構わない。周囲に薄く放出するだけで良い。大事なのは、その魔力によって変化するものがないかどうかを見逃さないことだ」
「「わかった~」」
僕達から少し離れた場所でカイザーのレクチャーを受けて、早速キノコ探しを始めたようだ。
「「むむむ~~~…………とりゃあ!」」
「うむ、魔力の放出は問題なさそうだな。あとは周囲の変化を観察する」
「ん~? ……アレンのほうはなさそう?」
「あっ! あれ! エレナのほうはあった!」
「では、エレナ。その個体に魔力を」
「うん!」
エレナが変化のあった場所に集中的に魔力を送ると、にょきっと大きくなったキノコが出現した。
「やったー。ブラン茸だ!」
「うむ、立派なキノコが採れたな」
エレナがブラン茸を見事に採取した。
しかし……実際に採取方法を見ると、とんでもないやり方だよな~。
「む~、アレン、もう一回やってくる!」
エレナだけが採取できたことが悔しかったのか、アレンは場所を移動してまた魔力を放出していた。
「エレナももう一回やってくる~」
エレナも場所を移動して、再度挑戦するようだ。
「アル様、ブラン茸とノワール茸がたくさん手に入りそうな予感がします」
「私も同じ予感がするな。子供達はもう一回ずつくらいで終わる性格ではないよな?」
「絶対に終わらないと思います」
「だよな~」
確実に、間違いなく、自信を持って言える。一個や二個じゃ終わらずに、たくさんのキノコを採取してくるだろうと!
「一応確認しておきますけど……全部いります?」
「…………保留でもいいか? 私では薬にしたものが日持ちするかどうかも、材料として保管できるかどうかもわからないのでな」
「あ~、それは重要ですよね。まあ……売るにしても、使うにしても、あと……食べるにしても? アル様からの返答を待ってからにします」
「食べるのか!?」
「……食用できるみたいなので、一応候補に入れてみました」
まあ、薬の材料なので、食材として使うつもりはないんだけどな。
「「美味しいの?」」
「っ! 食べられるキノコだけど、美味しいかどうかはわから……――えっ!?」
再び、いつの間にか戻ってきていた子供達が、背後から声を掛けてきたので一瞬驚いたが、食用について話しつつ振り返った。
そして、二人の頭の上に異変が起きていて、僕は言葉を詰まらせてしまった。
「アレン、エレナ……それは何だ?」
アレンとエレナのそれぞれの頭の上に、大人の握り拳サイズのモモンガが乗っかっていた。
「「シュガーモモンガ!」」
「いや、種族を聞いたわけじゃないんだけど……」
シュガーモモンガは、甘いものが好物なFランクの魔物だ。これまたパステルラビットと同様にあまり戦闘を好まない種族である。
「どうして頭の上にシュガーモモンガがいるんだ?」
「「仲良くなったの」」
『『キュイ』』
「そうか、仲良くなったか」
シュガーモモンガは、アレンとエレナから貰ったのか、両手で飴玉を抱えて夢中で舐めている。森の中での甘いものと言えば果実や樹液などで、飴玉は初めてだからだろうな。
「念のために聞きたいんだが、この仔達はどうするんだ?」
「一緒に行きたいって」
「アル様、いい?」
『『キュイ』』
ふれあい広場でのペット候補らしい。
「……タクミ」
「……アル様、駄目なら駄目って言って良いですよ。その場合は、責任を持って僕が飼い主を探すか、僕の契約獣にしますから」
ふれあい広場が駄目でも、もしかしたらルーウェン家で受け入れられるかもしれない。それが駄目でも、飼いたいっていう人はいるかもしれない。あとは普段は影の中ばかりになってしまうが、シロ達のように僕の契約獣にしてもいい。
「いや、まあ……大人しそうな魔物だから大丈夫だとは思うが、返答は後日にさせてくれ」
「もちろんです。どちらになっても、責任を持って面倒を見ますから!」
「私としては、喜んで受け入れたいんだがな~」
「ああ、アル様好みでした?」
「っ!」
小動物好きのアル様の心はがっちり掴んでいるようだ。
そうなると、ふれあい広場行きが濃厚かな? アル様が交渉を頑張りそうだしな。
「そういえば、キノコ採りは終わったのか?」
「「満足した!」」
「うむ、頑張ったぞ~」
待っていました! とばかりに、カイザーがブラン茸とノワール茸が入った籠を差し出してくる。
「……えっ? いつの間に、こんなに採取したんだ?」
「子らが少々魔力を放出させ過ぎてな。運の良いことに、そこに群生していたキノコが一気に育ったのだ」
「……群生地にかち合ったか~」
思っていた以上のキノコを差し出されて驚いたが、どうやら強運が作用したようだ。
「と、とりあえず、魔物もだが、キノコや薬草も今日はこれ以上増やさないでくれ」
「ははは~」
アル様の精神は、かなりすり減っている様子である。
パステルラビット十匹に、グラトニーラビット二匹、シュガーモモンガ二匹。それに幻のキノコがたっぷり。うん、疲れるかもな。
「よし、アレン、エレナ、カイザー、今日はもう帰るよ」
「「えぇ!?」」
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