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6巻
6-1
しおりを挟む第一章 レベッカさんとお出かけしよう。
僕、茅野巧は不慮の事故で死んでしまった元日本人。その事故の原因は、エーテルディアという世界の神様の一人である風神シルフィリールが、力加減を間違えてしまったからという何とも微妙なものだった。
シルフィリール――シルの提案で僕はエーテルディアに転生したのだが、転生後に送られた先はガヤという危険な森。
そこにはなぜか双子の子供がいて、僕は放っておけずに保護した。しかも、その子供達には名前がなかったので、僕はアレンとエレナと名づけて自分の弟妹として育てることにしたのだ。
そのアレンとエレナだが、実は水神ウィンデル様の子供であるらしい。
どういう経緯で二人が地上にいたのかは未だにわからないし、シルも口を開こうとしない。
当事者であるウィンデル様からは何の音沙汰もないので、これ以上はどうにもならない状態だ。
まあ、二人とも可愛いから、今さら下手な情報をもたらされて僕達の生活を壊されても困るんだけどね~。
そんな僕達は今、ガディア国の王都にあるルーウェン伯爵家――僕がこの世界で最初に訪れた街、シーリンで親しくなったグランヴァルト・ルーウェン様の実家に滞在しながら、冒険者稼業に勤しんだり街を散策したりと、ゆったりとした日常を楽しんでいる。
「タクミさん、今日、予定はあるかしら?」
ある日、ルーウェン家の食堂で朝食を食べていると、ヴァルト様の母であるレベッカ・ルーウェン伯爵夫人――レベッカさんが僕にそう尋ねた。
「いえ、特に決めていませんが……?」
ちょっと前までガディア国の隣にあるアルゴ国に仕事で赴いていたり、細々とした依頼を受けていたりした。だから、しばらくはのんびり過ごそうと思って、特に予定は入れていなかったのだ。
それを伝えると、レベッカさんは嬉しそうに手を合わせて微笑んだ。
「本当! じゃあ、私とお買い物に行きましょう!」
「え?」
「ね、タクミさん、いいでしょう?」
「え、ええ、大丈夫です」
「まあ、嬉しいわ~」
突然のことに戸惑いながらも提案に乗り、僕達はレベッカさんと一緒に買い物に出かけることになった。もちろん、レベッカさんに合わせたスタイル――馬車に乗って移動、侍女や護衛付きの買い物だ。
そんなわけで朝食後に身支度を整え、僕達は馬車に乗り込んで移動を始めた。
「「わーい」」
いつもと違ったお出かけに、アレンとエレナは大喜びだ。
「ほらほら、アレン、エレナ。危ないから座ってないと駄目だよ」
「「は~ぃ」」
座席を立って窓にへばり付いている子供達に注意すると、二人はしぶしぶ僕の隣に戻ってくる。
「ふふっ、見て、リジー。楽しそうね~」
「そうですね、奥様」
向かいの席に座っていたレベッカさんと、レベッカさん付きの侍女、リジーさんが微笑ましそうにアレンとエレナを見ている。
「ところで、今日はどちらに?」
「あら、言ってなかったかしら? まず行くのはタクミさんも知っているところよ」
「え、そうなんですか?」
レベッカさんに行き先を尋ねたが、なぜか〝どこ〟と具体的には教えてくれなかった。
「お?」
「「あっ!」」
だが、行き先はすぐに判明した。アレンとエレナにもわかったらしい。
馬車が停まったのは、先日コートを注文した衣装店『銀の糸』だったのだ。
「まあ! レベッカ様、どうなさったのですか!? お呼びくだされば、私どもがお邸に参りましたのに!」
店に入ると衣装店の奥さん――マリーさんがすぐに出迎えてくれた。
「ふふっ、たまにはお店に出向くのも良いものよ。マリー、急に来てしまったけれど、今、大丈夫かしら?」
「もちろんですとも!」
レベッカさんとの挨拶が終わると、マリーさんは僕達に笑顔を向ける。
「タクミ様達もようこそいらっしゃいました。とても良いタイミングですわ。以前にご注文いただいたコートができ上がり、連絡しようと思っていたところなんですの~」
「そうなんですか? ――アレン、エレナ、コートができてるって!」
「「ほんと!?」」
僕の言葉を聞いたアレンとエレナは大喜びで、〝早く早く〟とマリーさんを急かす。
マリーさんはレベッカさんに断りを入れると、すぐにでき上がったコートを持ってきてくれた。
「ふふっ、こちらがご注文の品ですわ!」
「えっ!?」
「「おおー!」」
「あら?」
トルソー、だったかな? 洋服を着せて飾っておく胴体だけのマネキン。それに着せてあるコートを見て、僕は驚愕した。
「じゅーるだ!」
「ふぃーとだ!」
僕の契約獣であるフェンリルのジュールに似せたアレン用のコートに、飛天虎のフィートに似せたエレナ用のコート。ここまではいい! ここまでは!
「「わーい! おにーちゃんもおそろーい!」」
「……ははは~」
問題は僕用のコートだ。デザインは店にお任せでお願いしていた。でき上がったものはフード付きの黒のロングコート。
だが、フードにはなんと! 垂れ耳が付いていたのだ!
喜ぶ子供達の横でがっくりと肩を落としていると、コートの製作者であるマリーさんは悪戯が成功した子供のような表情をしていた。
「どうします? お兄様のコートの耳は外すことが可能ですわ。お外ししましょうか?」
「「だめー!」」
子供達は大変気に入ったようで、外すことに即座に反対した。
「あら、お気に召していただけたのかしら?」
「「うん!」」
こうなってしまっては、外してくださいとは言いづらい。
「ほほほ~」と微笑むマリーさんは、この展開を確実に狙っていたのだろう。
まあ、フードを被らなければ耳が付いていることに気づかないし、被ったとしても垂れ耳だからそこまで目立たない……のかなぁ~? いや、だがな~……。
「う~ん……」
「「とっちゃうのー?」」
どうするべきか悩んでいると、アレンとエレナが上目遣いで見てくる。
「ん~、いやぁ……えっと~。……アレンとエレナはこのままのほうがいいのか?」
「「うん! おそろーい!」」
「……うっ」
こんなに嬉しそうな笑顔を見たら、説得しづらい。
「あらあら、これはタクミさんの負けかしら?」
子供達の態度に怯んでいると、レベッカさんからトドメの一言。
「ふふっ、お兄ちゃん、お揃いのままにするって。良かったわね~」
「「おそろーい!」」
僕が悩んでいるうちに、垂れ耳はそのままにすることが決まってしまった。
こうなったら仕方がない。人目があるところでフードを被らないように気をつけよう。
「付けた甲斐がありましたわ~。では、サイズに問題がないか、着て確認させてくださいね」
――そう思っていた矢先、マリーさんの言葉で試着することに。そこで早速フードを被ることになってしまった。
「あらあら、アレンちゃん、エレナちゃん、良く似合っているわ~」
「「えへへ~」」
レベッカさんに褒められて、アレンとエレナは照れたように笑う。
「あのね、アレン、じゅーるなの!」
「エレナはね、ふぃーとなの!」
「アレンちゃんのはフェンリルかしら? で、エレナちゃんのは飛天虎ね」
「「うん!」」
「両方とも良く特徴を捉えているわ~。――マリー、良い仕事をしたわね」
「ありがとうございます、レベッカ様」
次は自然と僕のほうに視線が集まる。
「タクミさんが着ているものは、特に何かを模しているわけではないのね?」
「ええ、お色は黒とのご注文でしたが、それ以外はお任せいただきましたので」
それを聞いたレベッカさんは笑みをこぼす。
「ふふっ、遊び心を入れつつ、あまり目立たないように垂れ耳を選択したってところかしら?」
「あら、やはりおわかりになります?」
「もちろんよ。こちらも良い仕事をしたわね、マリー」
「レベッカ様にそうおっしゃっていただけて光栄ですわ~」
やはりマリーさんは狙ってこのデザインにしたようだ。
コートのデザイン自体はかなり僕好みで、文句の付けどころなどない。ケモノ耳だって、アレンとエレナからすれば満足の品だ。
「タクミ様、窮屈なところ、逆にダブつきを感じるところはございませんか?」
「……とても着心地がいいです」
まさにぴったりのサイズで、ほどよく身体にフィットしていて違和感などまったくない。
アレンとエレナのほうは少し大きめに作ってもらっているため、多少ダブついているところはあるが、動きの邪魔になる箇所はなさそうだ。
「素敵な品をありがとうございます」
僕がお礼を言うと、マリーさんは嬉しそうに微笑んだ。
それからコートの代金を支払い、僕達の用事は終了した。
その後、もともとこの店で僕達の衣服を何か頼むつもりだったらしいレベッカさんは、アレンとエレナ用の着ぐるみタイプの部屋着を注文した。しかも、動物の種類と色を変えて数着ずつ。どうやら、レベッカさんはケモノ耳付きのものが気に入ったようだ。
僕用のお揃いの部屋着も頼もうとしていたから、それはさすがに断固阻止したけどね~。
代わりに「ヴァルト様用はどうですか?」と冗談で提案してみると、レベッカさんは面白そうな顔をして本当に注文していた。……でき上がったら本当にヴァルト様に着せるのだろうか?
間違いなくヴァルト様は拒否するだろうが、相手はレベッカさんだからな~。
実力行使で着ぐるみを着せられるであろうヴァルト様の姿を想像して、少々申し訳なくなった。
『銀の糸』を出ると、次のお店に移動する。
「パン屋ですか?」
「ええ、そうよ」
行き先は普通のパン屋であった。
「……えっと?」
貴族婦人であるレベッカさんと、街にあるパン屋はとても不釣り合いだ。だが、レベッカさんはこのお店に用があるらしい。
「「いいにおーい!」」
レベッカさんに続いてお店に入ると、焼き上がったパンの良い匂いが鼻をくすぐる。
「いらっしゃいませ! ――あっ!」
入店した僕達に気づいた三十歳くらいの男性店員さんが、慌てて駆け寄ってきた。
「レベッカ様、今日はどうなさったのですか?」
「ちょっと様子を見に、ね」
店員さんは明らかにレベッカさんを見知っているようである。
レベッカさんも、何だかこのお店に通い慣れている感じが窺えた。
「あらあら、売れ行きは良いみたいね~」
「ええ、あれらはやはり焼き上がるとすぐに完売してしまいますね」
「?」
レベッカさんの視線の先には、たくさんの種類のパンが並べられていた。
完売……ということは、あの棚の一部の、がっぽりと空になっているところだな。
「……あれ?」
「「んにゅ?」」
よくよく見れば、空になっている場所には『クリームパン』や『あんパン』と書かれた札があるではないか!
「ああ! もしかして、ここって!」
「あら、気がついた?」
このパン屋は、お城の厨房でパン職人をしているシドさんの兄弟子のお店であった。
シドさんから兄弟子の店でクリームパンとあんパンを販売する許可を求められ、僕はそれを承諾した。そして、それらのパンを販売するにあたって、シーリンにあるロードさんのお店『金の小麦屋』の二の舞にならないように、ルーウェン家にお店の後ろ盾になってもらいたいと頼んだのだ。
なるほど、そういうことだったのか。だったら、レベッカさんがこのお店を見知っていてもおかしくはないよな~。
「レベッカ様、このお連れの方々は……?」
「こちらはタクミさん。そう言えばわかるかしら?」
「っ! お初にお目に掛かります。僕は店主のジェイクと申します。この度はクリームパンとあんパンの販売の許可をいただきありがとうございます! お蔭で店は救われましたっ!!」
レベッカさんが僕の名前を言った途端、店員さんは――がばりっ、と僕のほうを向いて頭を下げた。しかも、店長さんだったらしい。
「え? じゃあ、あなたがシドさんの兄弟子……?」
店長さんということは、彼がシドさんの兄弟子なのだろう。
そんな彼の第一印象は〝若い〟であった。シドさんは三十代半ばだが、彼――ジェイクさんのほうが年下に見える。
こっそり【鑑定】させてもらうと、若作りとか童顔とかいうわけではなく、実際にシドさんより若いということがわかった。
シドさんの兄弟子で店を構えているという情報だけで、僕は勝手にもっと年上の人物だろうと思い込んでいたが、とんだ勘違いだったようだ。
先に弟子になったほうが兄弟子、または姉弟子になるので、年齢は関係ない。だから、確かに年下の兄弟子というのはありえる。まあ、少々驚きはしたけどね~。
「兄弟子……シドさん、またそんなことを言ったんですね……」
僕の〝兄弟子〟という言葉に、ジェイクさんは困り顔をした。
「あれ? 違うんですか?」
「いや、何というか……確かに親方にパンを習い始めたのは僕のほうが先なんです。ですが、僕としては幼馴染みの家に遊びに行って、その父親からちょっと教わっていたという感覚でして……」
ああ、そういうことか。
「だけど、シドさんが弟子入りした時には、ジェイクさんはそこそこパン作りができていたんじゃないですか?」
「はい、そうなのですが……あの頃はまだ遊び感覚だったというか……。本格的に修業を開始したのはシドさんよりも後になります」
「シドさんに兄弟子扱いされると複雑な気持ちになる、というわけですね?」
「はい……」
なるほどね、それならジェイクさんの困り顔も理解できる。
「シドさんが気にかけてくれるのは嬉しいんです。この店は親方の店ですから、衰退させてしまうのは申し訳ないですし……」
「ん?」
ここが親方さんのお店で、今はジェイクさんが店長ということは……親方さんはもう亡くなっているのだろうか? 引退したという可能性もあるが……。
どちらにせよ、普通に考えれば、親方さんの子供――ジェイクさんの幼馴染みが跡を継がないか? なのに、そうではなくジェイクさんが店を継いだとなると……。
「幼馴染みというのは女の子? で、もしかして……」
「はい、今は僕の妻です」
「ほほ~ぅ」
おぉ! 幼馴染みで結婚! テンプレだね~。
…………あれ?
「ん? 衰退?」
「あら、タクミさんはこのお店の状況を知らなかったの?」
首を傾げる僕に、レベッカさんは不思議そうな顔をした。
「え、はい。シドさんから話を持ちかけられた時、そこまで詳しいことは聞いていなかったんです。シドさんの人柄からして、その兄弟子の方なら大丈夫だろうと思いまして、販売の許可を……」
「あらまあ~」
僕の言葉にレベッカさんは少し呆れたような顔をした。
はい、あまり深く考えずに了承しました。すみません。
「正直に言うと、このお店は廃業寸前っていうところだったのよ?」
「えっ!?」
レベッカさんは仕方がない、とばかりに肩をすくめて、お店の状況を教えてくれた。
「まあ、タクミさんの言う通り、人柄という点においては何も問題なかったわね~。でも、今度こういう話があった場合は、経営状況や繋がりも調べてから了承するようにね」
「…………はい。すみません」
本当にレベッカさんの言う通りですね。……面目ない。
そういえば、先ほどジェイクさんは「救われた」とか言っていたような……。
「……えっと、今は危機を脱したという解釈で大丈夫ですか?」
「ええ、そうね。クリームパンやあんパンを売り出してから客足も増えたみたいだし、経営は持ち直したってところかしら?」
「はい! その通りです!」
ジェイクさんは満面の笑みで力強く答えた。
「そうなんですか。それは良かったです」
経緯はどうあれ、廃業を回避できたと聞けば素直に良かったと思う。
「「おにーちゃん」」
その時、アレンとエレナが僕の服を引っ張った。
「ん? アレン、エレナ、どうした?」
「「ぱんはー?」」
ああ、パンが食べたいのか。
「あらあら。そうよね、とても良い匂いがするものね。私が買ってあげますから、好きなものを選んでちょうだい」
「「やったー」」
「すみません、レベッカさん」
「あら、もっと高価なものを強請ってくれても大丈夫よ?」
「いえ、それはさすがにできませんよ。――アレン、エレナ、ちゃんとお礼を言おうね」
「「うん! ――ありがとー、おばーさま!」」
「えっ!? ちょっと!」
アレンとエレナがお礼を言ったのはいいとして、まさかの〝おばあ様〟発言。
だが、レベッカさんはとても嬉しそうだった。まあ、思い返してみれば、自分からそう呼べって言っていたしね~。
「ふふっ。さあ、いらっしゃい」
「「うん!」」
レベッカさんはご機嫌で子供達と手を繋いで、早速パンを選び始めた。
「……あの」
「ん? どうかしましたか?」
取り残されていた僕に、ジェイクさんがおずおずと声を掛けてきた。
「えっと……もし良かったら、試しに作ってみたパンの試食をお願いできないでしょうか?」
「お? もしかして新作ですか?」
「新作だなんて、そんな大袈裟なものではないです。ただ、タクミ様のあんパンに、茹でたマローの実を砕いて入れただけのものなんですが……」
おぉ! それって栗あんパンか!!
「いやいや、それだって立派なオリジナルだと思いますよ! マローあんパンかな?」
「……」
「あれ? ジェイクさん?」
ジェイクさんはなぜか目を見開いて固まっていた。
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