19 / 321
2巻
2-3
しおりを挟む
遠征の事後処理的なものは全て終わったので、僕達はしばらくのんびり過ごすことにした。
今日は宿の部屋でアレンとエレナに数字を教えている。
「「いーち、にぃー、さーん、しぃー、ごー……じゅう!」」
「はい、よくできました。これが銅貨。銅貨が十枚で次は?」
「「これ!」」
二人とも、びしり、と迷わず大銅貨を指さす。
「当たり~」
「「えへへ~」」
僕が正解を告げると、アレンとエレナは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、この大銅貨が十枚で?」
「「んとね、これー」」
次も二人は迷わず銀貨を指さす。
「完璧だね!」
またまた正解で、僕は二人の頭を撫でてあげる。
最初は、一から百まで数えられるようになればいいかなぁ……なんて思ったんだけどさ、二人はあっという間に覚えちゃったんだよね。
だから、ちょっと欲張って万の単位まで教えちゃった!
ついでに、硬貨を十枚ずつ並べて、銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨……と、ひとまず金貨までの五種類を教えてみたら、二人は完璧に覚えたようだ。
「じゃあ、54Gを用意してみようか」
次は少し難易度を上げて適当な金額を言い、その分の硬貨を二人に選ばせてみる。
「「うん。んとね……――はいっ!」」
アレンとエレナは、大銅貨五枚と銅貨四枚をきっちり数えて差し出してきた。
「当たり~」
「「やったー」」
「じゃあ、次は~……123Gね」
「「うん!」」
初めはおずおずと僕の様子を窺うようにして数えた硬貨を差し出していたが、何度かやっているうちに要領を掴んだようで、自信たっぷりな表情になってきた。
「よくできました」と言って頭を撫でてあげると、二人は嬉しそうにはにかむ。
本当に可愛いなっ!!
「10Gのリーゴの実と16Gのオレンの実を一個ずつ買ったら、いくらだ?」
「「ん~……26G!」」
「当たり~。じゃあ、それをこれで買ったら?」
今度は買い物を想定して、26Gに対して銀貨一枚を渡してみた。
「「んとね……これ!」」
すると、二人が返してきたのは大銅貨七枚と銅貨四枚。
足し算だけではなく、引き算までできるようになったんだよ。凄くない?
こうなったら、やっぱり次は実践をさせてみたくなるよね。
というわけで、僕達は早速商店街にやって来た。
「アレン、エレナ。ここで欲しいものを買おうか」
入ったのは、乾物を扱っている店。アレンとエレナがよくおやつで食べているドライフルーツや、干し肉なんかが売られている。
売り子をしているのは中年の女性で、この人は前に買い物に来た時、アレンとエレナのことを優しそうな目で見ていた。なので、この子達が買い物のやりとりをしても、温かく対応してくれるだろう。
「いらっしゃい。欲しいものは見つかったかい?」
案の定、女性は屈んで子供達と目線を合わせ、商品が入った瓶を見やすいように取ってくれたり、味の説明をしてくれたりしている。
「アレン、エレナ、欲しいものは決まったかい?」
「「うん!」」
「じゃあ、アレンから『ください』ってお願いしようか」
「うん! アレン、これ! ください!」
アレンが杏っぽい実のドライフルーツが入った瓶を指しながら言った。
「はい。シュリの実だね。何個、欲しいのかな?」
「えっとね……」
アレンは女性に個数を問われて困ったらしく、僕の方をちらりと見た。なので、僕は手のひらを見せて〝五〟と示す。
「……ごこ!」
すると、アレンは僕の意図を正確に読み取り、女性にしっかりと手のひらを開いて見せて個数を答えた。
「五個だね。お代は35Gになります」
「んとね……」
「あら……?」
女性はアレンが自分の鞄からお金を取り出そうとしていることに驚き、僕に視線を送ってきた。
なので、僕はお願いの意味を込めて会釈する。
それでちゃんと意味が通じたらしく、女性はそのままアレンに向き合ってくれた。
「はい!」
「まあ! ピッタリ! えらいわね~」
アレンは財布代わりの巾着から取り出した硬貨を、女性に渡した。
受け取った女性はぴったりの金額に驚きながらも、アレンを褒めてくれる。
「次はエレナね」
「うん! エレナはこれ! ください!」
「はい。お嬢ちゃんはリーゴの実ね。何個、欲しいのかな?」
「ごこ!」
エレナはリーゴの実のドライフルーツを選び、自信いっぱいに開いた手のひらを掲げる。
エレナは先程のやりとりを見ていたので、アレンの時よりもスムーズだった。
「はい。じゃあ、お代は30Gになります」
「んとね……はい!」
「はい。ちょうどね。えらいわ~」
女性はエレナのことも褒めてくれた。平等に接してくれて助かります。
「「できたー?」」
「うん。よくできたねー。えらいえらい」
二人は買った品をしっかりと持って僕に抱きついてきたので、きちんと褒めて撫でておく。
「お付き合いくださり、ありがとうございました」
「あらあら、このくらい何てことないわよ~」
アレンとエレナの買い物につき合ってくれた女性にお礼を言うと、女性は「気にしないで」と手をひらひらと振った。
「でも、小さいのに凄いわね~。もうお金の計算ができるなんて~」
「そうですね。僕も賢い子達だと思います」
「確かに賢そうね。それに、とっても素直そう。きっと、お兄さんの育て方がいいのね~」
「……そう、でしょうか?」
「ええ! 五人の子供を育て上げた私が言うんだから間違いないわよ!」
「あ、ありがとうございます」
照れくさかったが、そう言ってもらえて嬉しかった。そして、僕のアレンとエレナへの接し方が間違いではなかったと思い、少しだけ安心する。
褒めてくれたお礼というわけではないけれど、ドライフルーツはもちろん、木の実や干し肉などを購入してから店を後にした。
アレンとエレナの買い物実践が終わり、次は本屋に向かう。
目的は、魔法の指南書とか基礎的な説明書とか……魔法関連の本だ。
ガヤの森の遠征中にステータスをチェックしたら、いつの間にか【水魔法】のスキルを取得していたからね。
せっかくだし水魔法も使えるようになっておきたいんだけど、シルのおかげで基礎から応用までほぼ全ての知識がある風魔法と違って、水魔法については基礎知識がほんの少しだけだ。
そもそも、魔法は体に刷り込まれた感覚に頼って使っている状態なので、風魔法の技術を水魔法に応用することもできない。
だから、魔法の指南書を探して読もうと思った。
それに、水魔法といえばアレンとエレナだ。二人も【水魔法】のスキルを持っている。
僕が二人に魔法の使い方を教えられたらいいんだけど、理屈や技術を理解しているわけじゃないからできないんだよな~。
他にも、小説や童話といった物語の本があれば買おうと目論んでいる。
エーテルディアに来てからというもの、僕はまだ読書をしていない。日本にいた頃は毎月、十数冊と本を読んでいたので、そろそろ恋しくなってきた。
そうこう考えているうちに、本屋に到着。早速、中に入る。
「「いっぱーい」」
「そうだね。いっぱいあるねー」
店内には、僕が思っていた以上に数多くの本が並べられていた。
薬草、魔物の絵や特徴などが書かれた本、詩集や聖典。もちろん小説のような物語の本もある。タイトルを見る限り、物語の内容は主に冒険譚やお姫様を主人公とした恋愛ものかな? 結構、種類はありそうだ。
「さて、いいのはあるかな~」
本棚を物色していると、奥から白髪のお婆さんが出てきた。店の人だな。
「おお、いらっしゃい。お客さんかい?」
「すみません。勝手にお邪魔して見ていました」
「気にせんでええよ。何かお探しかい?」
ここでは本を検索することはできないから、聞いてしまったほうが早いだろう。
「ええ、いろいろ欲しいんですが……。えっと、魔法の指南書みたいなものや呪文についての本なんてありますか?」
「ああ、あるよ~。ちょっと待っててな~」
欲しい本を尋ねてみると、お婆さんはすぐに頷く。ただ、店の奥の方にあるらしく、取りに向かってくれた。
「基礎について書かれているのがこれだね。こっちは応用編。で、これが現存する魔法の呪文について書かれているものだ」
「ありがとうございます」
お婆さんが持ってきてくれた本を受け取り、表紙にあるタイトルを見ると――『魔法の基礎』『魔法の応用』『呪文一覧』と書かれていた。
うん、実に的確なチョイスだ。この三冊は購入決定だな。
「お眼鏡に適ったかね?」
「はい。三冊ともいただきます。おいくらですか?」
「どれも一冊大銀貨二枚、全部で6000Gだね」
「はい、わかりました」
エーテルディアにも植物から紙を作る技術があるため、紙は比較的安価で手に入れることができる。本も一般的なものなら銀貨数枚という程度だ。
しかし、魔法関連の本は少々高い。まあ、そうは言っても一般の人に絶対に手の届かないような値段ではないけれど。
「他の本も見たいので、代金はまとめてで構わないですか?」
「ええよ、ええよ。存分に見ていって~」
「ありがとうございます」
お婆さんの許しを得たので、僕はさらに店内を物色してみることにする。
適当な本を手に取ってパラパラと捲る。それを何冊か繰り返していると、アレンとエレナが興味を持ったらしく、一生懸命背伸びをして僕の手の中にある本を覗こうとしていた。
「見てみる?」
「「うん、みるー」」
僕が屈んでアレンとエレナに見せながらページを捲っていくと、二人は紙面を目で追っていた。
「これが本で、ここに書かれているのが文字だよ」
「「もじー?」」
「そうだよ。アレンとエレナも読めるように、文字の勉強をするかい?」
「「するー」」
二人は数字を覚えたばかりなので、文字の勉強は少し早い気もするが、興味を持っているなら教えてもいいだろう。
「ほっほっほっ~。元気のいい子達じゃな~。文字習得用の教本と簡単な絵本もあるんじゃが、持ってこようかい?」
「お願いしていいですか?」
「ええよ、ええよ。婆に任せておき~」
エーテルディアにも、文字を勉強するための教材があるんだな。それがあれば教えやすいだろう。
お婆さんが文字を学習する本と絵本を選んでくれている間に、僕も数冊の小説を手に取った。『クルーベルの竜殺し』『村人から竜騎士になった男』『神雷の勇者』などなど、冒険ものを中心に。
あと、僕には必要ないが、あればアレンとエレナに説明しやすいと思って、『植物全集』『魔物全集』『薬草と毒草』など、百科事典っぽい本なども追加する。
結局、大量の本を買い込んでしまったが、大きな稼ぎがあったばかりなので問題はない!
第二章 依頼を受けよう。
僕達はここ数日、街の中で過ごしたり、ピクニックに出かけたりして、のんびりとした時間を過ごしていた。なので、今日は久しぶりに依頼を受けようかと思う。
アレンとエレナを連れて、冒険者ギルドにやって来た。
「さて、何を受けようかなぁ~」
ランクが上がったから、受けられる依頼の幅が広がったんだよな。
とりあえず依頼書をひと通り見ることにし、依頼ボードの前で物色していると――
「「あれー」」
「ん?」
アレンとエレナが僕の服を引っ張り、低ランクの依頼書が貼り出されているエリアを指さした。
……えっと、二人が指しているのはあれかな? 迷い猫を探すってやつ。
その依頼書は、数多くある素材採取や魔物討伐の依頼書に押しのけられるように、端の方にぽつんと貼られていた。
それも低い位置にあったため、アレンとエレナの目に留まったのだろう。
探している猫の特徴を示したイラストも描かれていたので、なおさら興味が惹かれたに違いない。
「絵の猫を探してください、だって。あれが気になるの?」
「「うん」」
探しているのは、黒の仔猫。赤い首輪をしていて、靴下を履いているみたいに手足の先の部分だけが白い、というわかりやすい特徴の猫だ。
報酬は子供のお小遣いになるかどうかという程度のもので、受付手続きをする必要はなく、見つけたら連れてくるだけでいいらしい。
「探すのなら、街の中をいっぱい歩かなくちゃいけないよ?」
「「だいじょーぶ!」」
「そっか。じゃあ、今日はこの猫を探すかい?」
「「うん!」」
今日は仔猫探しをすることに決まった。
依頼主の住居が南地区にあるということなので、そこを中心に探すのがいいだろう。
そんなわけで、僕達は早速南地区へ向かうことにした。
「アレン、エレナ、描かれていた絵は覚えているね? 手足が白い黒猫。名前は『ミーナ』だよ」
「「うん! みーな!」」
「よし。じゃあ、ここら辺から探すぞー」
「「おー!」」
南地区に到着した僕達は、メインの通りから外れた場所でミーナの捜索を開始した。
「「みーなー、どこー」」
アレンとエレナは張り切ってミーナを探している。建物の隙間や道に置かれている木箱の裏など、ミーナのいそうな場所を、名前を呼びながら覗いて回った。
「「みーなー? いなーい?」」
探し始めてから気づいた……。
この子達ならば、一生懸命に探す姿は微笑ましい光景で済むんだが、僕がやると不審者になってしまうんじゃないか?
いい年した男が、建物を覗いて歩くのは怪しいに決まっている。うん、僕は積極的に探すのは止めたほうがいいな。覗き込んだりするのは二人に任せて、僕は周囲に気を配っておこう!
「「あっ!」」
アレンとエレナが前方にある木箱の影に黒猫の姿を見つけ、駆けていった。
「「あぅ~。みーな、ちがう……」」
「あ~、手足の先が白くないもんなー」
しかし、その黒猫は残念ながら全身真っ黒の別の猫だった。
「「うぅ~」」
目的の猫はなかなか見つからない。
それでも、アレンとエレナはミーナを探して街の中を歩き回った。
「いないな~」
「「むぅ~」」
休憩を挟んでいるものの、もう既に結構な時間を歩き回っている。
それでも目的の猫は見つからず、アレンとエレナは少しだけふて腐れて頬を膨らませていた。
「どうする? もう、探すのを止めようか?」
普通の子供ならとっくに飽きるか、駄々を捏ねるかしていてもおかしくない。だから、アレンとエレナがここで止めると言ったって、よく頑張ったと褒めてあげても問題ないと思う。
しかし、アレンもエレナも首を横に振った。
「「やー。さがすー」」
二人はまだ諦めないようだ。
「そうか。じゃあ、頑張ろう」
僕はアレンとエレナの頭を撫でながら、探し方を変えたほうがいいかもしれないと考えていた。
僕達は今まで、虱潰しとまではいかないが、ある程度道を順番通りに見て歩いていた。
しかし、それは間違っていたんだろうな、と改めて思ったのだ。
「アレン、エレナ。どっちにミーナはいそう?」
「「あっちー」」
まあ簡単に言えば、迷宮と同じようにアレンとエレナの勘に頼って探す、という方法だ。
二人に行きたい方向を聞いてみると、当然のように同じ方向を示した。
最初からこの方法で探せば良かったかもな。
失敗したなぁ~、と思いつつも気を取り直して、アレンとエレナが行きたいと言うままに歩いてみると――
「「あ! いたー!」」
「いた?」
すぐに成果があった。アレンとエレナが目的の猫を見つけたようだ。
「えっと……」
「「あそこー」」
「ああ、本当だ。ミーナっぽいな」
確かに手足の白い黒猫が、横倒しになっている廃材みたいな樽の中で寝そべっている。
「急に近づくと驚いちゃうから、ゆっくり行くんだよ?」
「「うん」」
アレンとエレナは、じわじわと樽に近づいていく。
「「み~なぁ~」」
アレンとエレナは樽の正面の少し離れた位置でしゃがんで、小さな声でミーナを呼び始めた。
だが、ミーナは警戒しているのか、樽の中からなかなか出てこない。
「みーな」
「おいでー」
アレンとエレナはミーナを怯えさせないように、優しく呼びかけ続けた。
「「おいで~」」
「……にゃ~」
「「きたー」」
アレンとエレナが焦らず時間をかけて呼び続けると、ミーナがゆっくりと樽から出て、二人の前まで歩いてきた。そして、差し出していた二人の手にすり寄る。
赤い首輪には『ミーナ』と名が入っているので、僕達が探していた猫で間違いないようだ。
「あ~、お腹が空いているのかな?」
アレンとエレナにすり寄ったミーナは、ペロペロと一生懸命に二人の手を舐めている。
「「おなか、すいたー?」」
「たぶんね」
「「おにーちゃん、ごはーん!」」
「はいはい。ミルクでいいかな?」
アレンとエレナに催促された僕は、《無限収納》から取り出したお皿にミルクを注いで地面に置いた。
すると、お皿に近づいたミーナはゆっくりとミルクを舐め始める。
「「のんでるー」」
だいぶお腹が空いているのか、ミーナは無我夢中でミルクを飲み続けた。
幸い、衰弱はしていないようなので、お腹が満たされれば元気になるだろう。
「ごはーん」
「おわったー?」
「にゃ~」
「「いいこ~」」
エレナが抱き上げたミーナの頭を、アレンは優しく撫でる。
「元気になったね。じゃあ、ギルドにミーナを届けようか」
「「うん!」」
ギルドに戻ってミーナを見つけたことを伝えると、すぐに飼い主へ連絡が行き、駆けつけたその女性とともにミーナは家へ帰っていった。
「「よかったね~」」
嬉しそうに飼い主にすり寄るミーナの様子を、アレンとエレナはとても満足そうな笑顔で見送っていた。
◇ ◇ ◇
今日は宿の部屋でアレンとエレナに数字を教えている。
「「いーち、にぃー、さーん、しぃー、ごー……じゅう!」」
「はい、よくできました。これが銅貨。銅貨が十枚で次は?」
「「これ!」」
二人とも、びしり、と迷わず大銅貨を指さす。
「当たり~」
「「えへへ~」」
僕が正解を告げると、アレンとエレナは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、この大銅貨が十枚で?」
「「んとね、これー」」
次も二人は迷わず銀貨を指さす。
「完璧だね!」
またまた正解で、僕は二人の頭を撫でてあげる。
最初は、一から百まで数えられるようになればいいかなぁ……なんて思ったんだけどさ、二人はあっという間に覚えちゃったんだよね。
だから、ちょっと欲張って万の単位まで教えちゃった!
ついでに、硬貨を十枚ずつ並べて、銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨……と、ひとまず金貨までの五種類を教えてみたら、二人は完璧に覚えたようだ。
「じゃあ、54Gを用意してみようか」
次は少し難易度を上げて適当な金額を言い、その分の硬貨を二人に選ばせてみる。
「「うん。んとね……――はいっ!」」
アレンとエレナは、大銅貨五枚と銅貨四枚をきっちり数えて差し出してきた。
「当たり~」
「「やったー」」
「じゃあ、次は~……123Gね」
「「うん!」」
初めはおずおずと僕の様子を窺うようにして数えた硬貨を差し出していたが、何度かやっているうちに要領を掴んだようで、自信たっぷりな表情になってきた。
「よくできました」と言って頭を撫でてあげると、二人は嬉しそうにはにかむ。
本当に可愛いなっ!!
「10Gのリーゴの実と16Gのオレンの実を一個ずつ買ったら、いくらだ?」
「「ん~……26G!」」
「当たり~。じゃあ、それをこれで買ったら?」
今度は買い物を想定して、26Gに対して銀貨一枚を渡してみた。
「「んとね……これ!」」
すると、二人が返してきたのは大銅貨七枚と銅貨四枚。
足し算だけではなく、引き算までできるようになったんだよ。凄くない?
こうなったら、やっぱり次は実践をさせてみたくなるよね。
というわけで、僕達は早速商店街にやって来た。
「アレン、エレナ。ここで欲しいものを買おうか」
入ったのは、乾物を扱っている店。アレンとエレナがよくおやつで食べているドライフルーツや、干し肉なんかが売られている。
売り子をしているのは中年の女性で、この人は前に買い物に来た時、アレンとエレナのことを優しそうな目で見ていた。なので、この子達が買い物のやりとりをしても、温かく対応してくれるだろう。
「いらっしゃい。欲しいものは見つかったかい?」
案の定、女性は屈んで子供達と目線を合わせ、商品が入った瓶を見やすいように取ってくれたり、味の説明をしてくれたりしている。
「アレン、エレナ、欲しいものは決まったかい?」
「「うん!」」
「じゃあ、アレンから『ください』ってお願いしようか」
「うん! アレン、これ! ください!」
アレンが杏っぽい実のドライフルーツが入った瓶を指しながら言った。
「はい。シュリの実だね。何個、欲しいのかな?」
「えっとね……」
アレンは女性に個数を問われて困ったらしく、僕の方をちらりと見た。なので、僕は手のひらを見せて〝五〟と示す。
「……ごこ!」
すると、アレンは僕の意図を正確に読み取り、女性にしっかりと手のひらを開いて見せて個数を答えた。
「五個だね。お代は35Gになります」
「んとね……」
「あら……?」
女性はアレンが自分の鞄からお金を取り出そうとしていることに驚き、僕に視線を送ってきた。
なので、僕はお願いの意味を込めて会釈する。
それでちゃんと意味が通じたらしく、女性はそのままアレンに向き合ってくれた。
「はい!」
「まあ! ピッタリ! えらいわね~」
アレンは財布代わりの巾着から取り出した硬貨を、女性に渡した。
受け取った女性はぴったりの金額に驚きながらも、アレンを褒めてくれる。
「次はエレナね」
「うん! エレナはこれ! ください!」
「はい。お嬢ちゃんはリーゴの実ね。何個、欲しいのかな?」
「ごこ!」
エレナはリーゴの実のドライフルーツを選び、自信いっぱいに開いた手のひらを掲げる。
エレナは先程のやりとりを見ていたので、アレンの時よりもスムーズだった。
「はい。じゃあ、お代は30Gになります」
「んとね……はい!」
「はい。ちょうどね。えらいわ~」
女性はエレナのことも褒めてくれた。平等に接してくれて助かります。
「「できたー?」」
「うん。よくできたねー。えらいえらい」
二人は買った品をしっかりと持って僕に抱きついてきたので、きちんと褒めて撫でておく。
「お付き合いくださり、ありがとうございました」
「あらあら、このくらい何てことないわよ~」
アレンとエレナの買い物につき合ってくれた女性にお礼を言うと、女性は「気にしないで」と手をひらひらと振った。
「でも、小さいのに凄いわね~。もうお金の計算ができるなんて~」
「そうですね。僕も賢い子達だと思います」
「確かに賢そうね。それに、とっても素直そう。きっと、お兄さんの育て方がいいのね~」
「……そう、でしょうか?」
「ええ! 五人の子供を育て上げた私が言うんだから間違いないわよ!」
「あ、ありがとうございます」
照れくさかったが、そう言ってもらえて嬉しかった。そして、僕のアレンとエレナへの接し方が間違いではなかったと思い、少しだけ安心する。
褒めてくれたお礼というわけではないけれど、ドライフルーツはもちろん、木の実や干し肉などを購入してから店を後にした。
アレンとエレナの買い物実践が終わり、次は本屋に向かう。
目的は、魔法の指南書とか基礎的な説明書とか……魔法関連の本だ。
ガヤの森の遠征中にステータスをチェックしたら、いつの間にか【水魔法】のスキルを取得していたからね。
せっかくだし水魔法も使えるようになっておきたいんだけど、シルのおかげで基礎から応用までほぼ全ての知識がある風魔法と違って、水魔法については基礎知識がほんの少しだけだ。
そもそも、魔法は体に刷り込まれた感覚に頼って使っている状態なので、風魔法の技術を水魔法に応用することもできない。
だから、魔法の指南書を探して読もうと思った。
それに、水魔法といえばアレンとエレナだ。二人も【水魔法】のスキルを持っている。
僕が二人に魔法の使い方を教えられたらいいんだけど、理屈や技術を理解しているわけじゃないからできないんだよな~。
他にも、小説や童話といった物語の本があれば買おうと目論んでいる。
エーテルディアに来てからというもの、僕はまだ読書をしていない。日本にいた頃は毎月、十数冊と本を読んでいたので、そろそろ恋しくなってきた。
そうこう考えているうちに、本屋に到着。早速、中に入る。
「「いっぱーい」」
「そうだね。いっぱいあるねー」
店内には、僕が思っていた以上に数多くの本が並べられていた。
薬草、魔物の絵や特徴などが書かれた本、詩集や聖典。もちろん小説のような物語の本もある。タイトルを見る限り、物語の内容は主に冒険譚やお姫様を主人公とした恋愛ものかな? 結構、種類はありそうだ。
「さて、いいのはあるかな~」
本棚を物色していると、奥から白髪のお婆さんが出てきた。店の人だな。
「おお、いらっしゃい。お客さんかい?」
「すみません。勝手にお邪魔して見ていました」
「気にせんでええよ。何かお探しかい?」
ここでは本を検索することはできないから、聞いてしまったほうが早いだろう。
「ええ、いろいろ欲しいんですが……。えっと、魔法の指南書みたいなものや呪文についての本なんてありますか?」
「ああ、あるよ~。ちょっと待っててな~」
欲しい本を尋ねてみると、お婆さんはすぐに頷く。ただ、店の奥の方にあるらしく、取りに向かってくれた。
「基礎について書かれているのがこれだね。こっちは応用編。で、これが現存する魔法の呪文について書かれているものだ」
「ありがとうございます」
お婆さんが持ってきてくれた本を受け取り、表紙にあるタイトルを見ると――『魔法の基礎』『魔法の応用』『呪文一覧』と書かれていた。
うん、実に的確なチョイスだ。この三冊は購入決定だな。
「お眼鏡に適ったかね?」
「はい。三冊ともいただきます。おいくらですか?」
「どれも一冊大銀貨二枚、全部で6000Gだね」
「はい、わかりました」
エーテルディアにも植物から紙を作る技術があるため、紙は比較的安価で手に入れることができる。本も一般的なものなら銀貨数枚という程度だ。
しかし、魔法関連の本は少々高い。まあ、そうは言っても一般の人に絶対に手の届かないような値段ではないけれど。
「他の本も見たいので、代金はまとめてで構わないですか?」
「ええよ、ええよ。存分に見ていって~」
「ありがとうございます」
お婆さんの許しを得たので、僕はさらに店内を物色してみることにする。
適当な本を手に取ってパラパラと捲る。それを何冊か繰り返していると、アレンとエレナが興味を持ったらしく、一生懸命背伸びをして僕の手の中にある本を覗こうとしていた。
「見てみる?」
「「うん、みるー」」
僕が屈んでアレンとエレナに見せながらページを捲っていくと、二人は紙面を目で追っていた。
「これが本で、ここに書かれているのが文字だよ」
「「もじー?」」
「そうだよ。アレンとエレナも読めるように、文字の勉強をするかい?」
「「するー」」
二人は数字を覚えたばかりなので、文字の勉強は少し早い気もするが、興味を持っているなら教えてもいいだろう。
「ほっほっほっ~。元気のいい子達じゃな~。文字習得用の教本と簡単な絵本もあるんじゃが、持ってこようかい?」
「お願いしていいですか?」
「ええよ、ええよ。婆に任せておき~」
エーテルディアにも、文字を勉強するための教材があるんだな。それがあれば教えやすいだろう。
お婆さんが文字を学習する本と絵本を選んでくれている間に、僕も数冊の小説を手に取った。『クルーベルの竜殺し』『村人から竜騎士になった男』『神雷の勇者』などなど、冒険ものを中心に。
あと、僕には必要ないが、あればアレンとエレナに説明しやすいと思って、『植物全集』『魔物全集』『薬草と毒草』など、百科事典っぽい本なども追加する。
結局、大量の本を買い込んでしまったが、大きな稼ぎがあったばかりなので問題はない!
第二章 依頼を受けよう。
僕達はここ数日、街の中で過ごしたり、ピクニックに出かけたりして、のんびりとした時間を過ごしていた。なので、今日は久しぶりに依頼を受けようかと思う。
アレンとエレナを連れて、冒険者ギルドにやって来た。
「さて、何を受けようかなぁ~」
ランクが上がったから、受けられる依頼の幅が広がったんだよな。
とりあえず依頼書をひと通り見ることにし、依頼ボードの前で物色していると――
「「あれー」」
「ん?」
アレンとエレナが僕の服を引っ張り、低ランクの依頼書が貼り出されているエリアを指さした。
……えっと、二人が指しているのはあれかな? 迷い猫を探すってやつ。
その依頼書は、数多くある素材採取や魔物討伐の依頼書に押しのけられるように、端の方にぽつんと貼られていた。
それも低い位置にあったため、アレンとエレナの目に留まったのだろう。
探している猫の特徴を示したイラストも描かれていたので、なおさら興味が惹かれたに違いない。
「絵の猫を探してください、だって。あれが気になるの?」
「「うん」」
探しているのは、黒の仔猫。赤い首輪をしていて、靴下を履いているみたいに手足の先の部分だけが白い、というわかりやすい特徴の猫だ。
報酬は子供のお小遣いになるかどうかという程度のもので、受付手続きをする必要はなく、見つけたら連れてくるだけでいいらしい。
「探すのなら、街の中をいっぱい歩かなくちゃいけないよ?」
「「だいじょーぶ!」」
「そっか。じゃあ、今日はこの猫を探すかい?」
「「うん!」」
今日は仔猫探しをすることに決まった。
依頼主の住居が南地区にあるということなので、そこを中心に探すのがいいだろう。
そんなわけで、僕達は早速南地区へ向かうことにした。
「アレン、エレナ、描かれていた絵は覚えているね? 手足が白い黒猫。名前は『ミーナ』だよ」
「「うん! みーな!」」
「よし。じゃあ、ここら辺から探すぞー」
「「おー!」」
南地区に到着した僕達は、メインの通りから外れた場所でミーナの捜索を開始した。
「「みーなー、どこー」」
アレンとエレナは張り切ってミーナを探している。建物の隙間や道に置かれている木箱の裏など、ミーナのいそうな場所を、名前を呼びながら覗いて回った。
「「みーなー? いなーい?」」
探し始めてから気づいた……。
この子達ならば、一生懸命に探す姿は微笑ましい光景で済むんだが、僕がやると不審者になってしまうんじゃないか?
いい年した男が、建物を覗いて歩くのは怪しいに決まっている。うん、僕は積極的に探すのは止めたほうがいいな。覗き込んだりするのは二人に任せて、僕は周囲に気を配っておこう!
「「あっ!」」
アレンとエレナが前方にある木箱の影に黒猫の姿を見つけ、駆けていった。
「「あぅ~。みーな、ちがう……」」
「あ~、手足の先が白くないもんなー」
しかし、その黒猫は残念ながら全身真っ黒の別の猫だった。
「「うぅ~」」
目的の猫はなかなか見つからない。
それでも、アレンとエレナはミーナを探して街の中を歩き回った。
「いないな~」
「「むぅ~」」
休憩を挟んでいるものの、もう既に結構な時間を歩き回っている。
それでも目的の猫は見つからず、アレンとエレナは少しだけふて腐れて頬を膨らませていた。
「どうする? もう、探すのを止めようか?」
普通の子供ならとっくに飽きるか、駄々を捏ねるかしていてもおかしくない。だから、アレンとエレナがここで止めると言ったって、よく頑張ったと褒めてあげても問題ないと思う。
しかし、アレンもエレナも首を横に振った。
「「やー。さがすー」」
二人はまだ諦めないようだ。
「そうか。じゃあ、頑張ろう」
僕はアレンとエレナの頭を撫でながら、探し方を変えたほうがいいかもしれないと考えていた。
僕達は今まで、虱潰しとまではいかないが、ある程度道を順番通りに見て歩いていた。
しかし、それは間違っていたんだろうな、と改めて思ったのだ。
「アレン、エレナ。どっちにミーナはいそう?」
「「あっちー」」
まあ簡単に言えば、迷宮と同じようにアレンとエレナの勘に頼って探す、という方法だ。
二人に行きたい方向を聞いてみると、当然のように同じ方向を示した。
最初からこの方法で探せば良かったかもな。
失敗したなぁ~、と思いつつも気を取り直して、アレンとエレナが行きたいと言うままに歩いてみると――
「「あ! いたー!」」
「いた?」
すぐに成果があった。アレンとエレナが目的の猫を見つけたようだ。
「えっと……」
「「あそこー」」
「ああ、本当だ。ミーナっぽいな」
確かに手足の白い黒猫が、横倒しになっている廃材みたいな樽の中で寝そべっている。
「急に近づくと驚いちゃうから、ゆっくり行くんだよ?」
「「うん」」
アレンとエレナは、じわじわと樽に近づいていく。
「「み~なぁ~」」
アレンとエレナは樽の正面の少し離れた位置でしゃがんで、小さな声でミーナを呼び始めた。
だが、ミーナは警戒しているのか、樽の中からなかなか出てこない。
「みーな」
「おいでー」
アレンとエレナはミーナを怯えさせないように、優しく呼びかけ続けた。
「「おいで~」」
「……にゃ~」
「「きたー」」
アレンとエレナが焦らず時間をかけて呼び続けると、ミーナがゆっくりと樽から出て、二人の前まで歩いてきた。そして、差し出していた二人の手にすり寄る。
赤い首輪には『ミーナ』と名が入っているので、僕達が探していた猫で間違いないようだ。
「あ~、お腹が空いているのかな?」
アレンとエレナにすり寄ったミーナは、ペロペロと一生懸命に二人の手を舐めている。
「「おなか、すいたー?」」
「たぶんね」
「「おにーちゃん、ごはーん!」」
「はいはい。ミルクでいいかな?」
アレンとエレナに催促された僕は、《無限収納》から取り出したお皿にミルクを注いで地面に置いた。
すると、お皿に近づいたミーナはゆっくりとミルクを舐め始める。
「「のんでるー」」
だいぶお腹が空いているのか、ミーナは無我夢中でミルクを飲み続けた。
幸い、衰弱はしていないようなので、お腹が満たされれば元気になるだろう。
「ごはーん」
「おわったー?」
「にゃ~」
「「いいこ~」」
エレナが抱き上げたミーナの頭を、アレンは優しく撫でる。
「元気になったね。じゃあ、ギルドにミーナを届けようか」
「「うん!」」
ギルドに戻ってミーナを見つけたことを伝えると、すぐに飼い主へ連絡が行き、駆けつけたその女性とともにミーナは家へ帰っていった。
「「よかったね~」」
嬉しそうに飼い主にすり寄るミーナの様子を、アレンとエレナはとても満足そうな笑顔で見送っていた。
◇ ◇ ◇
2,140
あなたにおすすめの小説
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
