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ところ変われば姫!時々、騎士見習い!
19.アクルス王太子、愚行に走る!
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「賑やかだな?」
兵達のいつもよりはしゃいでいるような声が聞こえてきて、つい中を覗き見た王太子が入ってきた。
ルミアーナ達が出ていった後だが、まだ興奮冷めやらぬジョナ達数人の兵士たちが公爵令嬢の素晴らしさを語りあって残っていたのだった。
「なにっ!ルミアーナ嬢がここに、きているのか?」
「いえ、先程、公爵さまと帰られました」と一人の兵が言うと
「では、まだ城内にいるな」と王太子はにやっと如何にも悪そうな笑みをうかべる。
「「「え?」」」
その不穏な笑顔に兵士達は、なにか嫌な予感がして戸惑った。
「それでダルタスは?」
「あ、はい。汗を流しに湯殿に皆と…」と、一人の兵士が遠慮がちに答える。
何か、今の王太子殿下には、言ってはならないことを言っているような危惧感を感じつつ…。
王太子は「それは良い!では半時は出てこぬな」と、言ってすぐさまその場からルミアーナ達を追うように出ていった。
残された兵士は、ざわついた。
「ちょ、今の…」
「お、おい、なんかまずかったんじゃないか?」
「ああ、そういや、王太子は自分が仕組んだ見合いだったのに姫さんの顔をみて死ぬほど後悔したとかなんとかって話が出てなかったか?」
「「「あわわ…」」」
「まじでヤバイよ?姫さん追いかけて何する気だ?」
「お前らは湯殿にいるダルタス将軍にこの事をすぐに言ってこい!」とジョナが他の兵達に指示を出した。
「俺は王妃様の侍女に言って王妃様にこの事を伝えてもらうから!王妃様ならきっと王太子様の横恋慕を諫めてくださる!」と、振り向き様に兵達に言い放ってかけだした。
王も王妃も、自分の子だからと言って理不尽を許すような人ではない。
この事を伝えればきっと王太子殿下を諫めてくださるに違いないとジョナは、思った。
一方、王太子は二人に追い付き案の定、父アークフィル公爵と揉めていた。
「王太子殿下、申し訳ありませんがもう娘は婚約者のいる身です。いくら王太子殿下といえ二人きりで散歩したいだなどと非常識にございます!」
「黙れ、誰に向かって意見しているか!我は次代の王である!控えよ!」と、恫喝した。
「くっ!」とアークフィルが眉間に皺をよせながら片手を胸にあて礼をとる。
「失礼いたしました。しかし王太子殿下…」
苦悩の表情でアークフィル公爵は王太子に断りを入れようとするが、王太子は、聞き入れない。
「ほんの一時、城の中を散歩でもしようと言っているだけだ」と、ルミアーナの腕を引き寄せた。
「きゃっ」と小さな声をあげるが、相手は腐ってもこの国の王太子である。
あらかさまに嫌がる事もできず、引きずられていく。
アークフィル公爵が意を決して娘を救おうと王太子の手を振り払おうとするが、王太子の従者達に押さえ付けられた。
そして「ふっ」と王太子は黒い笑みを浮かべルミアーナを連れさった。
「ルミアーナ!ルミアーナ!」
アークフィル公爵が叫ぶが王太子の従者達に押さえ付けられたまま動く事もままならなかった。
ルミアーナはあまりの急展開に頭がついていかなかったが、とにかく何かヤバイ?と思った。
散歩と言っていた筈なのにずんずん王宮の奥へと連れて行かれる。
チャラい王太子のくせにすごい力である。
じつはこの男、けっこう無駄に強いのか?と思ったが、とにかくここは逃げ出したい!
無駄かと思うが一応、説得してみようとする。
「お、王太子殿下、お離しくださいませ!私、父と帰るところでございました」
「つれないことを言う」
王太子は重厚な扉の前にきて扉の左右を守る衛兵達に目を向け
「私から出てくるまで、何人たりとも入れてはならぬ!」と命じてルミアーナを押し込むように、なかに連れ込む。
「嫌でございます!王太子殿下、お許し下さいまし!どなたか助けて!扉を閉めないでっ!」
衛兵達にすがるような目で助けを求めたが王太子の命令は絶対なのだろう。
衛兵は申し訳なさそうにルミアーナから目をそらし、ばたんっと扉は閉じられた。
「帰さぬよ、そなたは元々私の后になる運命の人だったのだから」
熱を帯びた王太子アクルスの瞳が、ルミアーナを捕える。
まとわりつくようなその眼差しはねっとりと絡みつくように見えた。
「ひ…」
ひょえぇええー
こ、こぇーよ、こいつまじかよー!
病んでる!病んでるよ!危ない奴だよ~っ!
と、ルミアーナの中の美羽が庶民まるだしで叫ぶが、むろん心の中でである。
「お戯れはお止めください!私はダルタス様という婚約者がおります!」
真剣に訴えるルミアーナだが、鼻で笑われた。
「ふん、それとて私がささやかな悪戯心で言ってみただけの事!そなたは元々、私の后候補だったではないか」するすると距離を縮められ今にも襲いかかりそうな勢いである。
ルミアーナは、たじたじと後ろへあとずさりながら
「そ、そうです。あくまでも候補だったにすぎませんし、それから外れるための婚約であると王太子様からのお声がかりと聞いておりましたわっ」と何とか言い切ると後ろの壁にぶつかってしまった。
どんっ!とルミアーナを囲うように両手を壁に押し付ける王太子。
うげぇ~、まさかの壁ドン!
うわぁ~、いやだぁ~。
ダルタス様にしてほしかったよ!
と、死ぬほど嫌がるルミアーナである!
王太子はルミアーナの胸元のリボンをほどいた。
たまらず「嫌っ!やめて」と叫ぶ。
「力ずくでもそなたを手に入れる」
そう言って王太子は唇を寄せてきて…。
そこでルミアーナの我慢も限界に達した。
「嫌ったら嫌ーっ!」と言って思い切り頭突きをかました。
ルミアーナの頭突きは王太子の口元にクリーンヒットした。
すかさず王太子の腕からすりぬけ扉のところへ行き
「あけて!私をだして!誰か助けて!」とドアをばんばんと叩きながら叫んだが扉はがっちりと閉じられていて開かない。
王太子は、「ううっ」と、うめきながらも、「いけない娘だね…ルミアーナ、そんなに素直じゃないならお仕置きしないとだね」と、近寄ってきた。
いつのまにか名前も呼び捨てである。
「い…嫌だ…」
気持ち悪すぎて、ぶわっと鳥肌がたち、涙がじわっとにじんだ。
うわ、もう、ほんとに無理だから!と、思う。
『生理的に無理っ!』
そして悔しい!
日本でいた頃の美羽の時の鍛えた体なら王太子くらい簡単に投げ飛ばしたであろうが、ようやく普通の運動ができるようになったばかりのルミアーナの体では力も技も王太子をどうにか出きるレベルには遠く及ばない。
仮にそれができたとしても相手は王太子である。
さっきはとっさに頭突きをかましてしまったが、下手に逆らって怪我でもさせたら両親にまで害が及ぶかもしれない…。
絶望的な気持ちになるが、汚される訳にはいかない!
自分には己を捧げたいほど愛しい人がいるのだから!
心に浮かぶのはダルタス将軍!その人の顔である。
ルミアーナは、側にあった陶器を手に取り足もとに投げつけた。
割れた陶器が、散らばり弾けた。
欠片を素手で掴み、手から血が流れる。
「近寄らないで下さい!私に触れないでっ!それ以上近づいたら私死にます!」と、叫んだ。
むろんこの時点では本気で死ぬつもりなんかさらさらない!
いわゆるハッタリである。
扉の外にまで届くようにわざと叫ぶ。
(ひょっとしたら衛兵がイカれた王太子をとめなきゃと思ってくれるかも?)
アクルス王太子はびっくりしたようにルミアーナを見つめた。
「ふ、馬鹿な事を…。そなたのような姫君が自決などできようはずがないだろう?さあ、そんな陶器の欠片など捨ててこちらに…」と、王太子が本気にしないので、ルミアーナは、首もとに欠片を押しあてた。
(死なない程度、ちょこっと血が出る程度を意識して)
白い肌につぅっと真っ赤な血が流れる。
動脈を傷つけるほどではない浅い傷だが、これにはさすがに王太子も焦った。
まさか自分を命懸けで拒否する娘がいるとは夢にも思わなかったのである。
だが、それは、ルミアーナの意思に反してアクルス王太子の自尊心をうちのめし、余計に平常心を失わせたのだった。
兵達のいつもよりはしゃいでいるような声が聞こえてきて、つい中を覗き見た王太子が入ってきた。
ルミアーナ達が出ていった後だが、まだ興奮冷めやらぬジョナ達数人の兵士たちが公爵令嬢の素晴らしさを語りあって残っていたのだった。
「なにっ!ルミアーナ嬢がここに、きているのか?」
「いえ、先程、公爵さまと帰られました」と一人の兵が言うと
「では、まだ城内にいるな」と王太子はにやっと如何にも悪そうな笑みをうかべる。
「「「え?」」」
その不穏な笑顔に兵士達は、なにか嫌な予感がして戸惑った。
「それでダルタスは?」
「あ、はい。汗を流しに湯殿に皆と…」と、一人の兵士が遠慮がちに答える。
何か、今の王太子殿下には、言ってはならないことを言っているような危惧感を感じつつ…。
王太子は「それは良い!では半時は出てこぬな」と、言ってすぐさまその場からルミアーナ達を追うように出ていった。
残された兵士は、ざわついた。
「ちょ、今の…」
「お、おい、なんかまずかったんじゃないか?」
「ああ、そういや、王太子は自分が仕組んだ見合いだったのに姫さんの顔をみて死ぬほど後悔したとかなんとかって話が出てなかったか?」
「「「あわわ…」」」
「まじでヤバイよ?姫さん追いかけて何する気だ?」
「お前らは湯殿にいるダルタス将軍にこの事をすぐに言ってこい!」とジョナが他の兵達に指示を出した。
「俺は王妃様の侍女に言って王妃様にこの事を伝えてもらうから!王妃様ならきっと王太子様の横恋慕を諫めてくださる!」と、振り向き様に兵達に言い放ってかけだした。
王も王妃も、自分の子だからと言って理不尽を許すような人ではない。
この事を伝えればきっと王太子殿下を諫めてくださるに違いないとジョナは、思った。
一方、王太子は二人に追い付き案の定、父アークフィル公爵と揉めていた。
「王太子殿下、申し訳ありませんがもう娘は婚約者のいる身です。いくら王太子殿下といえ二人きりで散歩したいだなどと非常識にございます!」
「黙れ、誰に向かって意見しているか!我は次代の王である!控えよ!」と、恫喝した。
「くっ!」とアークフィルが眉間に皺をよせながら片手を胸にあて礼をとる。
「失礼いたしました。しかし王太子殿下…」
苦悩の表情でアークフィル公爵は王太子に断りを入れようとするが、王太子は、聞き入れない。
「ほんの一時、城の中を散歩でもしようと言っているだけだ」と、ルミアーナの腕を引き寄せた。
「きゃっ」と小さな声をあげるが、相手は腐ってもこの国の王太子である。
あらかさまに嫌がる事もできず、引きずられていく。
アークフィル公爵が意を決して娘を救おうと王太子の手を振り払おうとするが、王太子の従者達に押さえ付けられた。
そして「ふっ」と王太子は黒い笑みを浮かべルミアーナを連れさった。
「ルミアーナ!ルミアーナ!」
アークフィル公爵が叫ぶが王太子の従者達に押さえ付けられたまま動く事もままならなかった。
ルミアーナはあまりの急展開に頭がついていかなかったが、とにかく何かヤバイ?と思った。
散歩と言っていた筈なのにずんずん王宮の奥へと連れて行かれる。
チャラい王太子のくせにすごい力である。
じつはこの男、けっこう無駄に強いのか?と思ったが、とにかくここは逃げ出したい!
無駄かと思うが一応、説得してみようとする。
「お、王太子殿下、お離しくださいませ!私、父と帰るところでございました」
「つれないことを言う」
王太子は重厚な扉の前にきて扉の左右を守る衛兵達に目を向け
「私から出てくるまで、何人たりとも入れてはならぬ!」と命じてルミアーナを押し込むように、なかに連れ込む。
「嫌でございます!王太子殿下、お許し下さいまし!どなたか助けて!扉を閉めないでっ!」
衛兵達にすがるような目で助けを求めたが王太子の命令は絶対なのだろう。
衛兵は申し訳なさそうにルミアーナから目をそらし、ばたんっと扉は閉じられた。
「帰さぬよ、そなたは元々私の后になる運命の人だったのだから」
熱を帯びた王太子アクルスの瞳が、ルミアーナを捕える。
まとわりつくようなその眼差しはねっとりと絡みつくように見えた。
「ひ…」
ひょえぇええー
こ、こぇーよ、こいつまじかよー!
病んでる!病んでるよ!危ない奴だよ~っ!
と、ルミアーナの中の美羽が庶民まるだしで叫ぶが、むろん心の中でである。
「お戯れはお止めください!私はダルタス様という婚約者がおります!」
真剣に訴えるルミアーナだが、鼻で笑われた。
「ふん、それとて私がささやかな悪戯心で言ってみただけの事!そなたは元々、私の后候補だったではないか」するすると距離を縮められ今にも襲いかかりそうな勢いである。
ルミアーナは、たじたじと後ろへあとずさりながら
「そ、そうです。あくまでも候補だったにすぎませんし、それから外れるための婚約であると王太子様からのお声がかりと聞いておりましたわっ」と何とか言い切ると後ろの壁にぶつかってしまった。
どんっ!とルミアーナを囲うように両手を壁に押し付ける王太子。
うげぇ~、まさかの壁ドン!
うわぁ~、いやだぁ~。
ダルタス様にしてほしかったよ!
と、死ぬほど嫌がるルミアーナである!
王太子はルミアーナの胸元のリボンをほどいた。
たまらず「嫌っ!やめて」と叫ぶ。
「力ずくでもそなたを手に入れる」
そう言って王太子は唇を寄せてきて…。
そこでルミアーナの我慢も限界に達した。
「嫌ったら嫌ーっ!」と言って思い切り頭突きをかました。
ルミアーナの頭突きは王太子の口元にクリーンヒットした。
すかさず王太子の腕からすりぬけ扉のところへ行き
「あけて!私をだして!誰か助けて!」とドアをばんばんと叩きながら叫んだが扉はがっちりと閉じられていて開かない。
王太子は、「ううっ」と、うめきながらも、「いけない娘だね…ルミアーナ、そんなに素直じゃないならお仕置きしないとだね」と、近寄ってきた。
いつのまにか名前も呼び捨てである。
「い…嫌だ…」
気持ち悪すぎて、ぶわっと鳥肌がたち、涙がじわっとにじんだ。
うわ、もう、ほんとに無理だから!と、思う。
『生理的に無理っ!』
そして悔しい!
日本でいた頃の美羽の時の鍛えた体なら王太子くらい簡単に投げ飛ばしたであろうが、ようやく普通の運動ができるようになったばかりのルミアーナの体では力も技も王太子をどうにか出きるレベルには遠く及ばない。
仮にそれができたとしても相手は王太子である。
さっきはとっさに頭突きをかましてしまったが、下手に逆らって怪我でもさせたら両親にまで害が及ぶかもしれない…。
絶望的な気持ちになるが、汚される訳にはいかない!
自分には己を捧げたいほど愛しい人がいるのだから!
心に浮かぶのはダルタス将軍!その人の顔である。
ルミアーナは、側にあった陶器を手に取り足もとに投げつけた。
割れた陶器が、散らばり弾けた。
欠片を素手で掴み、手から血が流れる。
「近寄らないで下さい!私に触れないでっ!それ以上近づいたら私死にます!」と、叫んだ。
むろんこの時点では本気で死ぬつもりなんかさらさらない!
いわゆるハッタリである。
扉の外にまで届くようにわざと叫ぶ。
(ひょっとしたら衛兵がイカれた王太子をとめなきゃと思ってくれるかも?)
アクルス王太子はびっくりしたようにルミアーナを見つめた。
「ふ、馬鹿な事を…。そなたのような姫君が自決などできようはずがないだろう?さあ、そんな陶器の欠片など捨ててこちらに…」と、王太子が本気にしないので、ルミアーナは、首もとに欠片を押しあてた。
(死なない程度、ちょこっと血が出る程度を意識して)
白い肌につぅっと真っ赤な血が流れる。
動脈を傷つけるほどではない浅い傷だが、これにはさすがに王太子も焦った。
まさか自分を命懸けで拒否する娘がいるとは夢にも思わなかったのである。
だが、それは、ルミアーナの意思に反してアクルス王太子の自尊心をうちのめし、余計に平常心を失わせたのだった。
応援ありがとうございます!
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