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第14話 優秀すぎる部下の追及
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その後のレオンは、いたって普通、いつも通りだった。
だから俺は、あの時のことはすっかり忘れて、南の島を楽し……、騎士団としての任務を遂行した。
もちろん護衛の任務は何事もなく無事終了し、あとは第6騎士団に帰還するのみとなった。
次の日の朝に、船で戻ることになった俺たちは、その夜は慰労も兼ねて酒場で盛り上がることになった……、のだが……。
「あれ、君たちは一緒に来ないの?」
「ハイっ! ぜひ団長と副団長のお二人でどうぞっ! 我々は別の店で…‥、なっ!?」
ベテラン団員が、隣の若手団員のわき腹を肘でつつく。
「はいッ、我々は別の店に行きたいと思いますっ!」
「そ、そうなんだ、じゃ、また、明日に……」
「はいっ、どうぞごゆっくりっ!!!」
団員たちに最敬礼されて、俺はその島で一番酒の種類が豊富であるという酒場に入った。
「せっかくみんなで飲もうと思ったのに……、はっ、もしかして俺、団員に嫌われてるっ!?」
俺は隣のレオンを見上げる。
「上の人間が一緒だと話しづらいこともあるんでしょう。きっと上司の悪口で盛り上がりたいんですよ」
「今からさんざん悪口言われるのか……、俺たち」
なんとなく暗い気持ちになる俺。
「上に立つ人間の宿命ですよ」
レオンにうながされて、俺は席につく。
店のメニューを瞬時で把握したレオンは、いつものように店員に勝手に注文していく。
もちろん俺の好みは十二分に反映されているオーダーだ。できる部下はこんなときも違う。
今回の南の島での出来事や、騎士団での気になること……、いつもレオンとの会話はいつも尽きることがない。
クアス料理の話になったときに、ふと俺は出来心でレオンにこう問いかけた。
「レオン、レオンはクアスに帰りたいと思ったことはないのか?」
レオンはあの不思議な色の瞳を俺に向けた。
「ありません。クアスで恋しいと思うのは料理だけ。
あの暑苦しい気候も、いかに人をだまそうかという国民性も大嫌いです」
「……そんな、でも……、君のお母さんは……」
「あれが、母親? 自分がいかに美しく舞台で映えるかが何よりの関心事。いつも新しい男に夢中で、子どものことなど顧みたこともない。
あまつには、息子を王族の一員にしてやるという王家の人間にだまされて、簡単に子どもを売り渡す始末だ!」
唇をゆがめ、吐き捨てるように言うレオンに、俺は唖然とする。
そしてテーブルの上の、空になった酒瓶の量を見て気づく。
――二人とも飲みすぎだ。
「レオン、お母さんのことをそんな風に悪く言うもんじゃない。きっとお母さんはレオンのためを思って、君を手放したんだと思うよ。
君を見ていて気づいたけど、小さいころから算術や歴史や魔法学だけじゃなく、美術や音楽に関する教育もしっかり受けているよね? お母さんはきっと、王族の血を引く君を思って……」
ダンっ、と突然レオンがテーブルをたたいた。
「あんたはっ、本当にバカがつくほどのお人よしだな!」
「は?」
「いつも、人のいい面しか見ようとしない! 本当は心の底で、その人間がどんな風にあんたを見ているかなんて気づきもせずに!
なんでもいいように解釈して、最低な出来事が起こっても「きっと、これでよかったんだ」って、納得して生きてきたんだろ?
あんたが俺の立場だったら、きっと娼館に売られたって誰を恨むでもなく淡々と客をとっていたんだろうな。
……本当にそういうところ、ヘドが出る!」
「どういう、意味だよ?」
ムッとして言い返した俺の手の甲を、レオンは人差し指で撫でた。
そして艶めかしい目で俺を見つめた。
「ユーゴ・フランドル」
「……っ」
「あんたが18のとき、まだ幼さの残るあんたの身体を、あの男は無理やり開いた。
――それまで主人と慕っていたあの男に裸にされたとき、あんたはどう思った?
大人の男に力づくで覆いかぶさられて、その白い肌を大きな手で撫でまわされて……。
ああ、きっと舌で舐められたり、吸われたりもしたんだろうな……。
あの男の肉棒が、あんたの狭いアナルにぶちこまれたとき、あんたはきっと、すごく痛かっただろう。それでもあの男は、怯えるあんたをなだめすかして、身体をゆすって、初物のあんたを堪能したんだ。
何もかも終わったとき、きっと、あんたは泣いたはずだ。誰にも見られないところで、ひとり……。
でも、涙を拭いて、あんたは自分に「こんなこと何でもない」って言い聞かせて、そして、またあの男の前で服を脱いで……」
「なにを……、お前は、いったい……なにを……」
俺の身体は小刻みに震え続けている。
だから俺は、あの時のことはすっかり忘れて、南の島を楽し……、騎士団としての任務を遂行した。
もちろん護衛の任務は何事もなく無事終了し、あとは第6騎士団に帰還するのみとなった。
次の日の朝に、船で戻ることになった俺たちは、その夜は慰労も兼ねて酒場で盛り上がることになった……、のだが……。
「あれ、君たちは一緒に来ないの?」
「ハイっ! ぜひ団長と副団長のお二人でどうぞっ! 我々は別の店で…‥、なっ!?」
ベテラン団員が、隣の若手団員のわき腹を肘でつつく。
「はいッ、我々は別の店に行きたいと思いますっ!」
「そ、そうなんだ、じゃ、また、明日に……」
「はいっ、どうぞごゆっくりっ!!!」
団員たちに最敬礼されて、俺はその島で一番酒の種類が豊富であるという酒場に入った。
「せっかくみんなで飲もうと思ったのに……、はっ、もしかして俺、団員に嫌われてるっ!?」
俺は隣のレオンを見上げる。
「上の人間が一緒だと話しづらいこともあるんでしょう。きっと上司の悪口で盛り上がりたいんですよ」
「今からさんざん悪口言われるのか……、俺たち」
なんとなく暗い気持ちになる俺。
「上に立つ人間の宿命ですよ」
レオンにうながされて、俺は席につく。
店のメニューを瞬時で把握したレオンは、いつものように店員に勝手に注文していく。
もちろん俺の好みは十二分に反映されているオーダーだ。できる部下はこんなときも違う。
今回の南の島での出来事や、騎士団での気になること……、いつもレオンとの会話はいつも尽きることがない。
クアス料理の話になったときに、ふと俺は出来心でレオンにこう問いかけた。
「レオン、レオンはクアスに帰りたいと思ったことはないのか?」
レオンはあの不思議な色の瞳を俺に向けた。
「ありません。クアスで恋しいと思うのは料理だけ。
あの暑苦しい気候も、いかに人をだまそうかという国民性も大嫌いです」
「……そんな、でも……、君のお母さんは……」
「あれが、母親? 自分がいかに美しく舞台で映えるかが何よりの関心事。いつも新しい男に夢中で、子どものことなど顧みたこともない。
あまつには、息子を王族の一員にしてやるという王家の人間にだまされて、簡単に子どもを売り渡す始末だ!」
唇をゆがめ、吐き捨てるように言うレオンに、俺は唖然とする。
そしてテーブルの上の、空になった酒瓶の量を見て気づく。
――二人とも飲みすぎだ。
「レオン、お母さんのことをそんな風に悪く言うもんじゃない。きっとお母さんはレオンのためを思って、君を手放したんだと思うよ。
君を見ていて気づいたけど、小さいころから算術や歴史や魔法学だけじゃなく、美術や音楽に関する教育もしっかり受けているよね? お母さんはきっと、王族の血を引く君を思って……」
ダンっ、と突然レオンがテーブルをたたいた。
「あんたはっ、本当にバカがつくほどのお人よしだな!」
「は?」
「いつも、人のいい面しか見ようとしない! 本当は心の底で、その人間がどんな風にあんたを見ているかなんて気づきもせずに!
なんでもいいように解釈して、最低な出来事が起こっても「きっと、これでよかったんだ」って、納得して生きてきたんだろ?
あんたが俺の立場だったら、きっと娼館に売られたって誰を恨むでもなく淡々と客をとっていたんだろうな。
……本当にそういうところ、ヘドが出る!」
「どういう、意味だよ?」
ムッとして言い返した俺の手の甲を、レオンは人差し指で撫でた。
そして艶めかしい目で俺を見つめた。
「ユーゴ・フランドル」
「……っ」
「あんたが18のとき、まだ幼さの残るあんたの身体を、あの男は無理やり開いた。
――それまで主人と慕っていたあの男に裸にされたとき、あんたはどう思った?
大人の男に力づくで覆いかぶさられて、その白い肌を大きな手で撫でまわされて……。
ああ、きっと舌で舐められたり、吸われたりもしたんだろうな……。
あの男の肉棒が、あんたの狭いアナルにぶちこまれたとき、あんたはきっと、すごく痛かっただろう。それでもあの男は、怯えるあんたをなだめすかして、身体をゆすって、初物のあんたを堪能したんだ。
何もかも終わったとき、きっと、あんたは泣いたはずだ。誰にも見られないところで、ひとり……。
でも、涙を拭いて、あんたは自分に「こんなこと何でもない」って言い聞かせて、そして、またあの男の前で服を脱いで……」
「なにを……、お前は、いったい……なにを……」
俺の身体は小刻みに震え続けている。
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