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赤の盗賊団

第23話 赤の盗賊団 『討伐の準備』

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※円柱都市イラム周辺地図



 ペッコくんは語り始めた。黄金都市からホッドミーミルの森を南下し、イラムの都市へ戻る帰路のこと。

 ミトラ砦を越え、リオ=グランデ=デ=ミトラ川を渡るその手前に差しかかった頃、『赤の盗賊団』の夜襲を受けた。

 そして同行していた妖精族の一団はすべて殺された。



 ヤツらは全部で数十名いたとのこと。全員が赤い帽子をかぶっていたレッドキャップの種族だったこと。

 そして、その中でも頭でもあるサタン・クロースと、大鎌を持ったマントの男・レッドマント、その身長が半ドラゴンフィート(2.5m)はあろうかという巨大なトナカイの化け物レッド・ノーズ、それにヤツラの長のレッド・キャプテンがいたと証言した。

 レッドキャップの種族はかつての『エルフ国』と『海王国』の戦争で戦果をあげた英雄の種族であったので、『エルフ国』では知らないものは居ないという。

 だが、ここ数百年は他の種族とほとんど交流はなくなっていたらしい。



 レッドキャップ種族の特徴は、長く薄気味悪い髪、燃えるような赤い眼、突き出た歯に、鋭い鉤爪を具えた、醜悪で背の低い老人の姿をしており、赤い帽子と鉄製の長靴を身に着けて、杖をたずさえている。

 その中でサタン・クロースだけは例外で巨体であった。突然変異で生まれたユニーク個体と推定される。



 「ヤツ・・・あの赤い帽子をかぶり、全身赤の服を着た長い白い髭を蓄えた巨体の老人・・・サタン・クロースがこう言って僕たちの一団を殺し回ったんだ。

 『悪い子は居ねぇがぁ? 悪い子は居ねぇがぁ?』・・・って。」

 ペッコくんは震えながらそう言う。

 「質問がある! なぜ、君は生き延びられたんだ?」

 ここまでだまって聞いていたヘルシングさんが口を開いた。



 「はい。僕もなぜ見逃されたのかはわかりません・・・が、ヤツは僕のことを子供だと思ったようなんです。」

 「子供・・・じゃないのか? 君は?」

 「はい。僕はこれが成人の姿で、子供のように見られますけど、今年で545才になります。だから、昔、レッドキャップ種族に一度会ったことがあったので覚えていたんです。」

 「なるほど。エルフの種族は長命だというからな。」

 アテナさんもそう言って納得したような顔をしていた。

 まだこの世界の種族の寿命についてよくわからないオレは、適当にうなづいてわかったふりをしておいた。



 「ヤツは僕のことを見つめて、『む、おまえは悪い子ではねぇな・・・。いね、いね。』と言って僕を見逃したんです。」

 「いずれにしても、今まですべての者が殺され、生存者がいなかったのでヤツらの正体も規模もわからなかったが、これで初めて手がかりがつかめたということだ。」

 アマイモンさんがそう言って話を統括した。



 「そんな・・・妖精族の者が犯人だなんて・・・。信じられないわ・・・。」

 アドベンチャーズのベッキーはショックを受けていたようだった。

 「なんか事情があるかも知れへんけどなぁ・・・。」

 エルフの商人・チコメコアトルもそうつぶやいた。

 やはり彼女たちは同じエルフの種族から凶悪犯罪者が出たことに少なからず動揺している様子だった。



 「おい。テウタテス。おまえが見たのも赤い帽子のレッドキャップたちだったのか?」

 ヘルシングさんがそう言ってテウタテスさんに話を振った。

 「あ・・・あぁ。たしかに赤い帽子をかぶっていた・・・。なぁ? エスス!? タラニス!?」

 「お・・・おお、そうだそうだ、思い出した。たしかに赤い帽子だった。」

 「そうだそうだ。ヤツら全員、赤い帽子だったな。」



 「えっと・・・テウタテスさんたちはどうやって逃げたのです?」

 そこでジュニアくんが質問をした。

 うん、そうだよ。そんな凶悪な種族、しかもかつての戦争の英雄の種族だというレッドキャップ、今まで生存者が居なかったのでオレも疑問に思ってたところだった。



 「いや、えっと、あ! あの馬面の冒険者・・・ウマヅラハギが囮になってくれたんだよ。なぁ?」

 「そ・・・そうだったそうだった。あいつのおかげだった。」

 「うんうん、そうだったな。なんとか必死で逃げてきたんだ。あいつには済まないことをしたな。」

 三人は口々にそう言った。

 「なぁーんか怪しいなぁ。」

 ヒルコがそうつぶやいた。

 「な・・・なに言ってんだよ。仕方がなかったんだよ。」

 「そうそう。仕方がなかったんだって。」

 ヴァン・テウタテスとエススがそう言うのだった。

 「ウマヅラハギさんが・・・。彼はいい冒険者でしたね。」

 フルーレティさんがそう思い出すように言った。



 「いずれにしてもこれ以上の被害者を出すわけにはいかない。」

 アマイモンさんがもう一度話をまとめた。

 「そうだな。我が法国との重要な交易ルートがそんな盗賊どもに荒らされるわけにはいかない。ヘルメス様もそのために私を派遣されたのだ。」

 アテナさんもそう言って同意した。



 「明日、ヤツラのアジト制圧に向けて出発するとする! 異論があるものはいるか?」

 「いるわけがない。妖精族の名を汚すものは妖精族のオレたちが片をつけてやる!」

 『アドベンチャーズ』のリーダー、トム・サムがそう息巻いた。

 みんなが頷いている。反対するものはこの場にはいなかった。



 「うちからも支援の魔道具、格安で卸したるさかいな、みな、がんばってな~。」

 「うん、お姉ちゃん。あのオリハルコンソードとアダマンタイトソード、卸しちゃっていいんだよね?」

 「ああ、あるだけ卸たるで。」

 「さすが、チコメコアトル様だねぇ。」

 「お姉ちゃん、太っ腹!!」

 シロネンとペッコが身内贔屓なのか、姉のチコメコアトルを褒めまくる。




 「おお! アダマンタイトソードって言やぁ、ランク4の武具じゃあねぇか? 我らがオーガがその武器を使えば、まさに『魔神に魔剣』じゃ!」

 あ、鬼に金棒みたいなこと? 前にも聞いたことがあるな。

 「もちろん、冒険者ギルドがその代金、払ってくれるって話や。儲け話はありがたくいただくで!」

 チコメコアトルもご機嫌のようだ。

 「それに、妖精族の犯罪者を懲らしめるのに役立てば、こちらもありがたいことや。」



 「ああーーー!! わったっしっからもっ!! 仕立てた巾着袋もお役ぬいっ! たてたてたててくださいっまっ・・・っせっ!!」

 そこへ仕立て屋テラーが入ってきて、くねくねしながらそう叫んだ。

 相変わらず変なヤツだ。

 しかし、巾着袋って・・・何が入ってるんだ?

 (可視モード、入ります。・・・何かの植物と生き物の肉片のようです。)

 アイがそう解析してくれた。



 「このっ! このっ! 巾着の中にわっ! かのかの! 偉大ぬわっ! 『身の守りの粉』っ・・・でっチュ!!」

 「ほお。『身の守りの粉』なら、防御力がアップされる効果がある。それはありがたいな。」

 ギルガメシュ兵長がそう言って、巾着袋を取った。

 「人数分、そろえてっ! まっす! どうぞ! お役ぬいいい!たっちっましたくわっ? くわっ?」

 「ああ、ありがとな。テラーよ。」

 ジロキチがテラーに声をかけた。



 「ふむ。武具も揃った。準備を整え、明日、辰の刻、このギルド前に再度、集結してくれ。『赤の盗賊団』討伐作戦を開始する!」

 アマイモンさんがそう終会宣言をしたところでこの会合も終わった。

 外はすっかり暗くなっていて、もう、戌の刻に差しかかっていた。



 「では、また明日な。ジン殿。カシム殿。」

 アテナさんたちはどうやら、シバの女王の宮城の一角に逗まっているとのことだ。

 巨漢のオーガたちは安宿に泊まっているようだ。ギルガメシュ兵長と一緒に、商業区へ去っていく。



 「ベッキー王女も気をつけなはれやー。」

 チコメコアトルがベッキーに声をかけた。

 「大きなお世話ですわ。武器くらい寄贈してもいいんじゃあないでしょうかねぇ。私ならそうしますわ。」

 「あのねぇ。商人がタダで動いたらおしまいやで!? ほんまお嬢様やからわかってないんとちゃう?」

 「ふん! なによ?」

 「なにさ!?」

 と、また喧嘩しながら、チコメコアトルさんたちと『アドベンチャーズ』たちも去っていく。



 ヴァン神族の商人たちも、そそくさと去っていく。

 ヘルシングさんもその後姿を鋭い眼光で睨んでいたが、オレたちに別れを告げ、去っていった。



 「あー、ジンさん。ちょっとフルーレティの話を聞いてから帰ってくれ。」

 「え!? なんですか?」

 「うむ。冒険者登録をしておいてほしいんだ。これはギルド依頼になるからな。冒険者でないものに、まあ依頼は出せないというわけだ。オトナの事情だ。すまんな。」

 「ああ、そういうことなら、いいですよ。」

 オレたちは冒険者登録をすることになったのだった―。



~続く~


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