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◇本編

6.

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 彼はリングライドって言う公爵家の跡取りだ。何だか凄く地位?が高いってお爺ちゃん先生が言ってた。この国に古くからある家なんだって。
 お爺ちゃん先生は沢山の事を知ってた。国の成り立ちとか、特産品とか気候とか。経済学?とか。

 なんでそんな事ワタシが知ってるかと言うと。テオルドと一緒に聞いてたから。12歳のテオルドと出会ってから、傷が癒えて飛べるようになっても学校に入るまでずっと一緒に居たの。だから彼が教えを受けている時も横に居た。

 折角なのでワタシも勉強をしたの。始めは難しかったけど言葉は解るから字を覚える事から始めた。書けないけどね。本は読める様になったよ。
 後、クチバシで文字盤の上を順番に指して行くの。するとそれを見ていたテオルドがビックリしてた。言葉が解るんだって。
 ワタシは話せ無いし文字も書けないけど、その日からテオルドはワタシの動きや鳴き声や言いたい事が解るように観察し出した。
 今では文字盤が必要無いくらいアッサリとワタシの言いたい事が解る様になっちゃった。


 傷が癒えて旅立つ日にテオルドがワタシを抱き締めて呟いたの。
「帰っておいで。君が生きる場所は俺の居る所だ」って。

 ああ。きっとそうだなって思ったの。だから女神様にお願いしてまた戻って来た。『御神託』を咥えて。

 3日に一度戻る約束をしてもう10年近く。長いような短いような。でも確実に月日は流れ彼は大人になって.........。

 ずっと一緒に居たいけど.........きっとそれは出来ない。

 なぜなら、彼は人間で。ワタシは鳥で。

 決して交わらない種族なのだとヒシヒシ感じている。そしてワタシは.........彼が好き。だからずっと一緒には無理。

 彼がいつか伴侶と番う時。それが私達の別れの時。そう、決めている。


 だって.........きっと胸が潰れてしまうから。
 考えるだけでうずくまってしまう。
 ワタシが唯の鳥だったなら...良かったのにね。

 種族を超えて彼を好きになってしまったワタシは.........叶わない想いに身を焼いてしまう愚かモノなのだ。

 テオルド。ごめんね。好きになってごめんなさい。
 でも大丈夫。邪魔なんて.........しないから。
 ちゃんと貴方の結婚式までは.........
 精一杯の祝福をするから。それまではワタシを抱っこして?10年目のお祝いしよう。貴方と過ごしたこの年月をワタシの一生の想い出にする。

 いつか信仰が無くなって私達御使いのシラサギが居なくなっても忘れないで。貴方の側に居た.........大きな白い鳥の事。


 貴方を一番愛していた
 愚かな白い鳥の事を。
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