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◇本編

61.

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 ビオルテルダ達は屋根の上に居た。
 既に味方の一陣は制圧されている。
 充分に調べ上げた筈だった。リングライト公爵家についても、テオルドについても。
 だが、違った。それは情報操作されていた可能性がある。誰に?同じ公国の同じ血を分けた.........姉である第1公女に、だ。彼女は大変な戦略家であった。
 その才を生かし第1公女は既に公王の後継として治まっている。

 ビオルテルダは第4公女。幼き頃から国の為に剣術、体術を叩き込まれて来た。それだけでは無い。房中術もだ。辛かった。悔しかった。毎日吐いた。自身の肌に付けられた唾液を血が出るまで擦り取った。
 公女として産まれて来た筈の自分が何故こんな目にと恨みながら生きて来た。

 父であるカンザリーの公王は貪欲だった。第1公女以外の全ての公女達は道具だった。政略結婚は当たり前だ。ビオルテルダも15歳の時1度近隣の公爵家に嫁がされた。歳が40も離れた男の後妻として。その美しさと房中術で国営に携わっていたその男から情報を引き出し、最終的には殺害した。勿論病死に見せかけて。
 その後、主要な人物に近づいては情報を引き出し殺害を繰り返して来た。その内、男には汚い血が流れているのだと思い込んで来る。

 もう、この頃には人の命など何とも思ってはいなかった。綺麗な花を愛でる事も、季節ごとの日差しを浴び月日を感じる喜びも、毎日の小さな幸せすら意味を為さないものだった。身体を合わせた美麗な男の首を切っては防腐処理をし、瓶に詰めては地下の部屋に飾って行く。彼女は唯の狂人になり下っていた。



 シャリルは彼女に付き従う補助役兼連絡係そして情夫だった。10年近くビオルテルダに指示を伝え作戦を考え、行動を共にして来た。狂人ではあるが聡明で強く、美しい彼女にいつしか惹かれて行く。いつ殺されるか分からない恐怖とそれでも手に入れたい欲望の狭間で静かに側に居た。ビオルテルダに求められれば応じて身体を合わせる。唯の性欲処理の相手として。それでも喘ぐ細い身体を抱き締めれば.........彼女は熱かった。罪深い生を生きて来た。戻れるとは思ってはいない。
 恐らくビオルテルダは今回の作戦でお払い箱にされる予定だったのだ。庭にテオルドを誘い出す所まで細部に渡り決められていた。あの爆発は彼女諸共処理しようとした第1公女の命令だろう。

 ビオルテルダは既に適齢期を過ぎた利用価値の少ない狂人だ。駒である姉妹公女自体はまだまだ居る。国内でも良い噂の無いビオルテルダは排除対象だったのだ。

 知り過ぎた暗殺者は生きていられては困る。そう言う事だ。


 いつかこんな日が来る事は.........分かっていた。
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