二人は詠唱文をいじくりたい――詠唱魔法の修辞技法

 ある日の放課後、高校教師の吉野香実と教え子の橘奏太が和やかに話をしていたところ、突如光に呑まれて地球とは別の世界に転移することになった。
 その世界は詠唱魔法が使用される世界であり、吉野は戸惑い、橘は心躍る。

「ゲームや漫画の詠唱文を試してみますね」

 異世界では「火よ、飛べ」などの短い定型文の詠唱魔法が使われるが、興味を抱いた橘はこの世界にない言葉の結びつきの詠唱文を唱える。

「渾沌より生まれ出でたる冥界の王よ――」

 さらに詠唱文を重ねて唱えると空気が転変する。果たして――
 この事件をきっかけに二人の生活が少しずつ変わり始める。

「――『女神に祝福されし勇者よ』なんてのも、過去には祝福されたけど、今は女神の祝福の効果が残っていないただの勇者かもしれない。だから『女神に祝福されし勇者よ』の『し』はちょっとおかしい。――」

 一方、吉野は橘の覚えている詠唱文に助言や改善点を与えていき、古今東西の表現の例を列挙して、詠唱文を比較、吟味する。

 言葉の知識を持つ吉野と、ゲームや漫画の詠唱文を数多く暗記している橘のコンビが協力して、多くの詠唱文を生み出していき、強力な詠唱魔法を完成させていく。

*なろう、カクヨムにも投稿しています。
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