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理不尽な要求.15
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幸助からのブルーベリーの案がすんなり通ったという連絡は、そんなやり切れない夏希の心を少しだけ明るくしてくれた。
商店街のお祭りが町全体の役に立つと思うと、やっぱり素直に嬉しい。
今自分がこんな状態だから、そういうイベントのお手伝いができることが心を支えてくれる。
そして、あんな困った性格の幸助だが、誘ってくれたことに感謝している。
夏希は特に約束はしていなかったが、幸助の店が閉まる頃、彼の家を訪れた。
「あら、夏希ちゃん。どうぞ、どうぞ。」
豊子は快く迎えてくれた。
「幸助ー、夏希ちゃんが来てくれたわよー。」
豊子の声に、二階では何やらドッタンバッタンと賑やかな音が聞こえて、「あ、上がってもらって。」幸助がすっとんきょうな声で応えた。
夏希が二階に上がり、幸助の部屋のドアをノックすると中から「どうぞ。」とかしこまった声が聞こえてきた。
幸助はきっと色んな言い訳を考えていたのだろう。そう思うと夏希はおかしくてしょうがない。
長い付き合いで、幸助の考えていることなんて夏希はお見通しだということに、当の本人が気づいていないだけなのに…。
一生懸命取り繕うとして。
「幸助、この間のことは全部忘れたから。あんたと私は今までどおりだだの幼馴染み。だから、余計なことは考えなくていいし、言わなくてもいいから。今日は、秋祭りの事ちゃんとやろう。」
夏希は一気にそう言うと、丸テーブルに資料を広げた。
「で、でも、俺…。」
まだ、もごもごと何か言いたそうにしている幸助に夏希はピシャリと言った。
「自分の言動を反省してるんだったら、素直に私の言うことをきいて、やらなきゃいけないことに集中して。じゃないともう私協力しないから。」
「わ、わかったよ…。」
幸助は夏希の言いつけをしぶしぶ了承した。
「だけど、思ったよりすんなりOKもらえてよかったわね。」
「あ、ああ。ほんとだよ。集会が始まる前はどうなることかビクビクしてたんだけど、資料を配ってざっと説明しただけで、もうみんなすっかり乗り気になってて。やっぱり商店街の人たちも町の活性化に一役買えるってのが気に入ったみたいでさ。そっからは、色んな案が飛び出して、書き留めるのに苦労するくらいだったよ。」
「へえ、すごいじゃん。」
夏希は聞いているだけでワクワクしてきた。
「でさ、ブルーベリーの収穫時期は6月から9月なんだって。だからもうほとんど収穫は終わってるんだけど、冷凍保存されてたり、もう加工品になったりしてるのがたくさんあるから、それを原料に色んな商品を作る事は全然OKだって。」
「そうなんだ。」
「それに、いきなり商品化するわけじゃなくて、今回は祭り様に町のアピール用の商品を作るだけだからさ、そんなに量も作らなくてもいいしね。とにかく、ブルーベリーの町っていう印象をもってもらうのが一番の目標だからさ。」
「うん。」
この間のぶっ飛んだ幸助君はどこへやら、今日の彼はすっかり商店街のまとめ役の顔になっている。
「でさ、この間出た案をもとにそれぞれの店で商品を作ったり、商品化されてるものを置いてもらったりするんだけど、最終的に扱う商品を俺たちである程度選びたいんだ。夏希はセレクトショップやってるくらいだから、目利きだろ?」
かなり分野が違うのが気になるが、一応コンセプトに合わせて選ぶという行為自体は自信がある。
「そうね、やりがいがありそう。商店街はもちろん、ブルーベリーを使って商品を作るお店や果樹園をもっと知ってもらう事に繋がるイベントになるように考えないとね。」
「頼りにしてるよ。」
「何だか、楽しくなってきたな。」
夏希は思わず笑顔がこぼれる。
「そうだろ、やっぱり夏希を誘ってよかったな。」
「調子のいいこと言って。」
何だかんだ言っても幼馴染だ。いつもの関係に戻れば色んなことがやりやすい。
「来週にはある程度案が出そろうから、都合のいい日にまた家に来てくれよ。」
「わかった。」
「じゃあ、お疲れ。」
「じゃあね。」
夏希は、結婚の話は取り敢えず無かったことになり、更に祭りの準備も順調に進んでいるということで、少しだけ肩の荷が下りた思いだった。
商店街のお祭りが町全体の役に立つと思うと、やっぱり素直に嬉しい。
今自分がこんな状態だから、そういうイベントのお手伝いができることが心を支えてくれる。
そして、あんな困った性格の幸助だが、誘ってくれたことに感謝している。
夏希は特に約束はしていなかったが、幸助の店が閉まる頃、彼の家を訪れた。
「あら、夏希ちゃん。どうぞ、どうぞ。」
豊子は快く迎えてくれた。
「幸助ー、夏希ちゃんが来てくれたわよー。」
豊子の声に、二階では何やらドッタンバッタンと賑やかな音が聞こえて、「あ、上がってもらって。」幸助がすっとんきょうな声で応えた。
夏希が二階に上がり、幸助の部屋のドアをノックすると中から「どうぞ。」とかしこまった声が聞こえてきた。
幸助はきっと色んな言い訳を考えていたのだろう。そう思うと夏希はおかしくてしょうがない。
長い付き合いで、幸助の考えていることなんて夏希はお見通しだということに、当の本人が気づいていないだけなのに…。
一生懸命取り繕うとして。
「幸助、この間のことは全部忘れたから。あんたと私は今までどおりだだの幼馴染み。だから、余計なことは考えなくていいし、言わなくてもいいから。今日は、秋祭りの事ちゃんとやろう。」
夏希は一気にそう言うと、丸テーブルに資料を広げた。
「で、でも、俺…。」
まだ、もごもごと何か言いたそうにしている幸助に夏希はピシャリと言った。
「自分の言動を反省してるんだったら、素直に私の言うことをきいて、やらなきゃいけないことに集中して。じゃないともう私協力しないから。」
「わ、わかったよ…。」
幸助は夏希の言いつけをしぶしぶ了承した。
「だけど、思ったよりすんなりOKもらえてよかったわね。」
「あ、ああ。ほんとだよ。集会が始まる前はどうなることかビクビクしてたんだけど、資料を配ってざっと説明しただけで、もうみんなすっかり乗り気になってて。やっぱり商店街の人たちも町の活性化に一役買えるってのが気に入ったみたいでさ。そっからは、色んな案が飛び出して、書き留めるのに苦労するくらいだったよ。」
「へえ、すごいじゃん。」
夏希は聞いているだけでワクワクしてきた。
「でさ、ブルーベリーの収穫時期は6月から9月なんだって。だからもうほとんど収穫は終わってるんだけど、冷凍保存されてたり、もう加工品になったりしてるのがたくさんあるから、それを原料に色んな商品を作る事は全然OKだって。」
「そうなんだ。」
「それに、いきなり商品化するわけじゃなくて、今回は祭り様に町のアピール用の商品を作るだけだからさ、そんなに量も作らなくてもいいしね。とにかく、ブルーベリーの町っていう印象をもってもらうのが一番の目標だからさ。」
「うん。」
この間のぶっ飛んだ幸助君はどこへやら、今日の彼はすっかり商店街のまとめ役の顔になっている。
「でさ、この間出た案をもとにそれぞれの店で商品を作ったり、商品化されてるものを置いてもらったりするんだけど、最終的に扱う商品を俺たちである程度選びたいんだ。夏希はセレクトショップやってるくらいだから、目利きだろ?」
かなり分野が違うのが気になるが、一応コンセプトに合わせて選ぶという行為自体は自信がある。
「そうね、やりがいがありそう。商店街はもちろん、ブルーベリーを使って商品を作るお店や果樹園をもっと知ってもらう事に繋がるイベントになるように考えないとね。」
「頼りにしてるよ。」
「何だか、楽しくなってきたな。」
夏希は思わず笑顔がこぼれる。
「そうだろ、やっぱり夏希を誘ってよかったな。」
「調子のいいこと言って。」
何だかんだ言っても幼馴染だ。いつもの関係に戻れば色んなことがやりやすい。
「来週にはある程度案が出そろうから、都合のいい日にまた家に来てくれよ。」
「わかった。」
「じゃあ、お疲れ。」
「じゃあね。」
夏希は、結婚の話は取り敢えず無かったことになり、更に祭りの準備も順調に進んでいるということで、少しだけ肩の荷が下りた思いだった。
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