おにいさんのジェラシーは、甘い甘いセラピー?

冴月希衣@商業BL販売中

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第三章

おにいさんの乱入【2】

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「折り紙が、どうかしたの? 四つ葉のクローバーとチューリップ、いっちゃんもほしいの? なら、チカが作ってあげるから、ちほちゃんのを取ったりしないで」

 いっちゃんは、そんなに折り紙が好きだったかな?

 怪訝な心持ちながらも、突然の登場以来、ずっと物騒な気配を漂わせている壱琉の機嫌がこれで直るなら、との提案だ。チカの本心では、バレンタインチョコと一緒に渡したかったが仕方ない。

「ちげーよ。いや、最終的にはお前から欲しいが。智穂が、お前からもらった赤いチューリップを持ってるのが気に食わねぇだけだ」

「え?」

「おい、智穂。菓子なら幾らでも買ってやるから、赤いチューリップだけはチカから受け取るな。花でも折り紙でも駄目だ。断れ。チカは俺のもんだ」

 何なの? さっきから『チューリップ、チューリップ』って。

 壱琉がここまでこだわる理由が、チカにはわからない。

「うん、わかった。チカちゃん、せっかくくれたけど、このチューリップ返すね」

「おう、智穂は聞き分けがいいな。帰りにアイス買ってやろう」

「ほんと? いっちゃん、ありがとう」

「ねぇ、いっちゃん。みやも、チカちゃんからお花の折り紙もらったよ? みやも桃の花を返す?」

「いや、美也はそのままもらっとけ。桃の花なら無害だ」

 しかも、桃の花なら良くて、チューリップだけが駄目なのは、なんで?

「さてと、じゃあ改めて、俺にチューリップを折ってもらおうか。もちろん、花の部分は赤い折り紙にしてくれよ」 

「知らないっ!」

「あ?」

「チカ、何にもわかんない! 知らないもん!」

「お、おい……チカ?」

「わかんない! 知らない! 何にもわかんない! うわーんっ!」

 ここがお前の定位置だと壱琉に言われた腕の中で、その当人の首にしがみついてチカは大泣きした。壱琉の口元で色気を放っている黒子ほくろを見つめていた瞳は、瞬く間に涙で滲んでいく。

 泣く以外、何も出来ない。

 同級生の中では、人柄の良さと行動力でカリスマ性が際立つリーダー、秋田正親だが、『俺たち(私たち)の小さな天使』もまだ小学三年生。九歳の少年には、この現状は完全にキャパオーバーだった。


 初等科の教室に壱琉がいきなり現れたこと。いつだってガラが悪い壱琉だけど、今日は輪をかけて物騒な雰囲気で、現れるなり怒りを見せていたこと。その相手が、友だちの智穂だったことの驚きをどう言い表せばいいのか。

 それから、どういうわけか、怒りの矛先は智穂本人じゃなく、自分が智穂にあげたチューリップの折り紙だとわかったこと。折り紙が気に入らないのかと思えば、美也にあげた桃の花はオッケーらしい。『桃の花なら無害だ』の意味がわからない。智穂も美也も幼稚舎の頃から壱琉とは顔見知りで、常にぶすっとしてる彼の前でもにこにこ出来るくらい性格が良いから、今日の壱琉の言動も気にしないだろうけど、自分は嫌だ。横暴な言動の理由を知りたい。

 さらに、言いたいだけ言ってこれで全て解決したとばかりに『じゃあ俺に赤いチューリップを折ってくれ』と言われても、そもそも自分たちはまだ仲直りしてないんじゃない? と、ふと我に返ってしまった。思わず喧嘩してしまって以来、自分は一週間ずっとモヤモヤしてたのに、そんなことは何もなかったみたいに元凶の彼が綺麗な笑みを見せるものだから、チカの感情は爆発した。


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