おにいさんのジェラシーは、甘い甘いセラピー?

冴月希衣@商業BL販売中

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第三章

おにいさんの乱入【3】

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 驚愕、疑問、モヤモヤ。それぞれに付随する感情の振れ幅が大きすぎて、皆に頼られるクラス委員のチカも、泣いて喚く以外の表現が出来ない。それをもたらしたのが、大好きな壱琉であるから尚更。

「いっちゃんのバカぁ。お花の折り紙で、なんでおこったの? あれ、いっちゃんにあげるために折ったんだよ? チューリップでおこってる理由を教えてくれないのに、作れないよぅ。それに、いっちゃんとチカ、まだ仲直りしてないよ? なのに、ぎゅうってするの、やめてよぅ」

「わ、悪かった。びっくりしたか? あと、実は、ここには仲直りしに来たんだ。だから機嫌直して、俺と一緒に帰ろう。美也と智穂もアイス食いに行くぞ。チカは、何のフレーバーが食いたい?」

「……スペシャルストロベリーがいい……キャラメルも乗せて?」

 珍しくちょっと慌て気味の表情が至近距離から見つめてくるから、自分も珍しくわがままを言ってみる。

「了解だ。チョコチップも豪快に追加してやろう」

「うれしい。じゃあ、今、仲直りだね」

「あー、その……先週は悪かった。まさか、ドッジボール大会のための練習だったって知らなくてだな。わけも聞かずに怒鳴って悪かったよ」

 うわぁ。『悪かった』を二回も言ったよ。あの、いっちゃんが。

 自分から謝ろうと思っていたのに、先に壱琉から切り出されて、チカの口がポカンと開いた。唯我独尊、傍若無人。殊勝な言動がとことん似合わない壱琉が、とても言いにくそうにだけれど、先週のことを謝ってくれた。充分だ。

「ううん、チカも試合の日にちをちゃんと説明しなかったもんね。ごめんね?」

 ふたりが一週間に及ぶ喧嘩をすることになった理由は、学校行事のためにチカが壱琉の誘いをことごとく断っていたから。


『チカ、お友だちとやくそくしてるの』
『またかよ。友だちとの約束を、俺より優先すんな』
『バカバカ! お友だちとのやくそくは、大事なんだよ? そんなこともわかんないいっちゃんなんか知らない! もうチカに話しかけないで! うわーんっ!』


 『仕事と私、どっちが大事なの?』を、高校三年生が小学三年生相手に本気でかましたことが原因なのだから、壱琉が自身の幼稚さを殊勝に謝罪して当たり前。なのだが、外見と同じく中身も天使なチカは、朴訥な口調での『悪かった』で全て水に流してしまう。

「俺も今までの自分を深く反省した。これからは、お前の学校行事の予定は全て把握する。行事に関するプリントは全部、俺に見せろ。初等科のサイトも毎日チェックすることにしたぞ。同じ失敗は繰り返さない。今後は万全のスケジュール管理で臨む」

「え? プリント、ぜんぶ? えーと……うん、わかった。これからは、行事のプリントが配られたら一番にいっちゃんに見せるね」

 少し違う方向に反省した気がしたが、素直なチカは、黒縁眼鏡の奥で昏い目を見せる相手に首を傾げつつも、こくんっと頷く。

 春には大学生になってしまう壱琉が、それ以降も変わらずに自分と遊んでくれるつもりなのだと言ってくれているのが嬉しいから。

「いっちゃん。アイス屋さん、行こっ」

「おう」

 取りあえず、心配していた仲直りは一日早くやり遂げられた。あとは、アイスを食べながら折り紙の謎を聞かせてもらおう。

 美也と智穂に続いて壱琉に抱っこされたまま廊下に出たチカは、ひとりだけ抱っこで恥ずかしいと思いつつ、『おろして』とは言わない。

 一週間ぶりの仲直りは、それくらい嬉しかった。

 今日だけは、『もう小さな子じゃないんだよ』の強がりは封印だ。


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