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※本日(10/19)、三話上げます
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ソランツェ、俺が鳥肌立てていたの気付いてくれてたのか……!ってちょっとうっとりして二人の世界をうっかり作り上げそうになっている所に、嘲るような調子の不快な声が響く。
「そういう事ならば、是非ともそのお力見せて頂きたいものですなあ」
なおも見下した様に笑いながら言ってくるその姿にイラっと来て、つい。
「いや、初めからそのつもりでこっちは来てんだっつーの」
何言ってんだコイツ、まで言って被ってた猫が消え去った事に気付く。よくいなくなるんだよな、俺の猫。まあ、いいや。そのまま喧嘩買ってやろうかな。
先方は崩れた俺の口調になんだか驚いてるけど、俺、大人しい訳じゃないからな?
「つか、そもそも何で俺になんの力も無いみたいな前提になってんですかね?」
裏のお話知ってますけどとは言わず、騎士団長の横にいた人の良さそうな領主さんに、敢えて話を振ってみる。この人は何も知らないっぽいんだよな。さっきの騎士団長発言に団長の真横で大層驚いていたし。
「ぇ、えっ?! は、いえっ!? あの?! 私は、そそそそんな……」
「わぁっ、ごめんなさい。そんな見事に動揺するとは思ってなかったです」
貴方は気にしないでくださいね、とガクガクブルブルと青くなってしまった領主さんに言ってから第三王子や騎士団の方に改めて向き直る。第三王子の方は何かヤバイかもみたいな顔してるなあ。
「さて。貴方ですけど、いきなり不躾に……何故でしょう? 何故俺に戦闘力……力がないなんて思ってらっしゃるのかお聞かせいただけたら――」
嬉しいです、とニコリと騎士団長へと微笑みながら顔の横でパチンと指を鳴らし、自分達の頭上に直径十メートル程の火球を出現させる。
「ひっ、ぇ」
「んな、」
規制線の向こう側の群衆には俺達の話の詳細は聞こえていないらしく、突然現れた規格外の巨大な火球になんだか歓声を上げている。
その一方で、顔を青褪めさせている第三王子と口をパクパクとさせ俺の顔と火球を何回も見る騎士団長、と、後退っていたり腰を抜かしていたりのその他兵士達。
「んー、やっぱり火球ってかなり熱いですね。じゃ、次は涼しくしましょうか」
指を鳴らして頭上の火球を消失させ、代わりに様々な長さの氷柱を出現させてあげるとギャラリー達は大喝采。のん気だねえ。
「で? 何故なのかお答えいただけます?」
「ぐっ……ぅう」
歯を食いしばり悔しそうに眉間に深い皺を寄せた顔のまま黙るおっさん……何か言えや。
「さっきまで訳が判らないくらいハキハキしてたのにおかしいな」
「リヒト、冷気がすごいから消してくれ」
「あ、ごめん」
パチンと鳴らして氷柱消すと安堵のため息がちらほらと相手方から聞こえてくる。氷とはいえ鋭く尖った先端が頭上にあるのは怖いよな。あはは。いつでも落とせるよ。
「早い話、貴方は俺を信用出来ていないって事でしょう?」
わざわざ下から覗き込んで訊ねてみても、何も言わない。
「そりゃ、得体の知れない人物がいきなり神の愛し子だなんて言って現れて、それを信用出来ないとする人が出て来るのは当たり前ですよ。そんなの人それぞれだ。ぶっちゃけ俺だって信用出来ねえって思う。でも、信用しない・信じない事とその人物に力が無いと判断するって事は同義ではないでしょう?」
俺は信じてない=こいつは弱いって何だそりゃって話だよ。
「俺からすれば不思議でしかないけど、何故だか非常に受けの良いこの外見を見て、外見の力で周囲を魅了して籠絡しているとか思ってんのかもしれないけど、もしそうだとしてもその事が俺に力が無いと判断出来る材料になりますか?」
なる訳ないよな、どう考えても。領主さんに目で訊くと何回も頷いている。
「何を拗らせて訳の判らない判断下してんのか知らないけど、貴方の頭の中って筋肉が詰まってんの?」
あちら側の兵士達の中からちらほら失笑が漏れているのに脳筋は何も言わない。言えない?
「あーそうだな……そもそも貴方が神の存在を信じていない人だと言うならば、俺に力がないとしたその考え方も判らなくもない……?」
はっきりそう言ってるのはジェロイスさんに聞かれちゃっててこっちに筒抜けだけど、そんな事は勿論言わない。今は。
「さっき言ったのと被るけど、神の存在を信じようが信じまいがそんなの人それぞれ。信仰の自由だ。信仰度合いってのは他人に推し量られるものでもない。愛し子と言われている立場だけど人が神アシュマルナの存在を信じようが信じなかろうが強く信仰しようがしまいが至極どうだっていいと俺自身は思ってる」
「……は?」
言い切った俺の言葉にずっとだんまりだった騎士団長は反応を返す。
「どうだっていいとは思ってる、思ってるんだけどさ……敵意を向けられるのは訳判んないし、あと、ちょっと不思議だなと思うのは”魔法・魔力”だとかいう人智を超えた、それこそ神の力の恩恵を受ける生活を送ってる人が欠片も信じてないって言うのはどうかなあ、どういう考え方してんの、とは思うよ。神アシュマルナを信仰せず魔法も魔力も使わない徹底した地域がどっかにあるはずだし、そこで生活すればいいのに、なんてな?」
わー、自分が思った以上に口がペラペラ喋ってる。今更止められないから行くとこまで行くしかないな。
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ソランツェ、俺が鳥肌立てていたの気付いてくれてたのか……!ってちょっとうっとりして二人の世界をうっかり作り上げそうになっている所に、嘲るような調子の不快な声が響く。
「そういう事ならば、是非ともそのお力見せて頂きたいものですなあ」
なおも見下した様に笑いながら言ってくるその姿にイラっと来て、つい。
「いや、初めからそのつもりでこっちは来てんだっつーの」
何言ってんだコイツ、まで言って被ってた猫が消え去った事に気付く。よくいなくなるんだよな、俺の猫。まあ、いいや。そのまま喧嘩買ってやろうかな。
先方は崩れた俺の口調になんだか驚いてるけど、俺、大人しい訳じゃないからな?
「つか、そもそも何で俺になんの力も無いみたいな前提になってんですかね?」
裏のお話知ってますけどとは言わず、騎士団長の横にいた人の良さそうな領主さんに、敢えて話を振ってみる。この人は何も知らないっぽいんだよな。さっきの騎士団長発言に団長の真横で大層驚いていたし。
「ぇ、えっ?! は、いえっ!? あの?! 私は、そそそそんな……」
「わぁっ、ごめんなさい。そんな見事に動揺するとは思ってなかったです」
貴方は気にしないでくださいね、とガクガクブルブルと青くなってしまった領主さんに言ってから第三王子や騎士団の方に改めて向き直る。第三王子の方は何かヤバイかもみたいな顔してるなあ。
「さて。貴方ですけど、いきなり不躾に……何故でしょう? 何故俺に戦闘力……力がないなんて思ってらっしゃるのかお聞かせいただけたら――」
嬉しいです、とニコリと騎士団長へと微笑みながら顔の横でパチンと指を鳴らし、自分達の頭上に直径十メートル程の火球を出現させる。
「ひっ、ぇ」
「んな、」
規制線の向こう側の群衆には俺達の話の詳細は聞こえていないらしく、突然現れた規格外の巨大な火球になんだか歓声を上げている。
その一方で、顔を青褪めさせている第三王子と口をパクパクとさせ俺の顔と火球を何回も見る騎士団長、と、後退っていたり腰を抜かしていたりのその他兵士達。
「んー、やっぱり火球ってかなり熱いですね。じゃ、次は涼しくしましょうか」
指を鳴らして頭上の火球を消失させ、代わりに様々な長さの氷柱を出現させてあげるとギャラリー達は大喝采。のん気だねえ。
「で? 何故なのかお答えいただけます?」
「ぐっ……ぅう」
歯を食いしばり悔しそうに眉間に深い皺を寄せた顔のまま黙るおっさん……何か言えや。
「さっきまで訳が判らないくらいハキハキしてたのにおかしいな」
「リヒト、冷気がすごいから消してくれ」
「あ、ごめん」
パチンと鳴らして氷柱消すと安堵のため息がちらほらと相手方から聞こえてくる。氷とはいえ鋭く尖った先端が頭上にあるのは怖いよな。あはは。いつでも落とせるよ。
「早い話、貴方は俺を信用出来ていないって事でしょう?」
わざわざ下から覗き込んで訊ねてみても、何も言わない。
「そりゃ、得体の知れない人物がいきなり神の愛し子だなんて言って現れて、それを信用出来ないとする人が出て来るのは当たり前ですよ。そんなの人それぞれだ。ぶっちゃけ俺だって信用出来ねえって思う。でも、信用しない・信じない事とその人物に力が無いと判断するって事は同義ではないでしょう?」
俺は信じてない=こいつは弱いって何だそりゃって話だよ。
「俺からすれば不思議でしかないけど、何故だか非常に受けの良いこの外見を見て、外見の力で周囲を魅了して籠絡しているとか思ってんのかもしれないけど、もしそうだとしてもその事が俺に力が無いと判断出来る材料になりますか?」
なる訳ないよな、どう考えても。領主さんに目で訊くと何回も頷いている。
「何を拗らせて訳の判らない判断下してんのか知らないけど、貴方の頭の中って筋肉が詰まってんの?」
あちら側の兵士達の中からちらほら失笑が漏れているのに脳筋は何も言わない。言えない?
「あーそうだな……そもそも貴方が神の存在を信じていない人だと言うならば、俺に力がないとしたその考え方も判らなくもない……?」
はっきりそう言ってるのはジェロイスさんに聞かれちゃっててこっちに筒抜けだけど、そんな事は勿論言わない。今は。
「さっき言ったのと被るけど、神の存在を信じようが信じまいがそんなの人それぞれ。信仰の自由だ。信仰度合いってのは他人に推し量られるものでもない。愛し子と言われている立場だけど人が神アシュマルナの存在を信じようが信じなかろうが強く信仰しようがしまいが至極どうだっていいと俺自身は思ってる」
「……は?」
言い切った俺の言葉にずっとだんまりだった騎士団長は反応を返す。
「どうだっていいとは思ってる、思ってるんだけどさ……敵意を向けられるのは訳判んないし、あと、ちょっと不思議だなと思うのは”魔法・魔力”だとかいう人智を超えた、それこそ神の力の恩恵を受ける生活を送ってる人が欠片も信じてないって言うのはどうかなあ、どういう考え方してんの、とは思うよ。神アシュマルナを信仰せず魔法も魔力も使わない徹底した地域がどっかにあるはずだし、そこで生活すればいいのに、なんてな?」
わー、自分が思った以上に口がペラペラ喋ってる。今更止められないから行くとこまで行くしかないな。
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