聖女は競馬で負けた婚約者によって隣国に売られてしまいました。

克全

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「君がヘルメース神の聖女エルサか?
 ふむ、濡羽色の腰まであるストレートの髪は、まあ、魅力的だな。
 漆黒の瞳は引き込まれそうな感じがしていい。
 透き通るような白磁色の肌は、金になるかもしれん」

 何を言っているのでしょう、この軽薄そうな男は。
 私の実家の家格は男爵でしかありませんが、フェラード王国の守護神ヘルメース様に聖女に選ばれた事で、ヴィンセント王太子殿下の婚約者に選ばれているのです。
 それを商売女のように値踏みするなんて、失礼極まりないです!

「どうだ、リーアム殿。
 この女なら負けた金に見合うのではないか?」

 ああ、またですか。
 また賭け事で負けてきたのですか!
 博打の神ヘルメース様を守護神に仰ぐフェラード王家の王太子ともあろう者が、毎度博打で負けて借金を抱えて国に帰ってくるなんて!
 あまりに情けなさすぎます。

「ふむ。
 確かに見た目は悪くないが、どのような神性をヘルメース神から授かっているかで、値打が変わってくる。
 我がスケフィントン王家にも守護神はおられる。
 同じ神性を持っていても役には立たん。
 銀五千枚は大金だから、厳しく見極めさせてもらうぞ。
 我が神と違う神性を持っているのか教えろ」

 ああ、今度は相手が悪すぎます。
 他の国の王族と博打をして負けるなんて、踏み倒すわけにはいかないです。
 守護神の神性によっては、神同士の争いになってしまいます。
 しかも負けた額が銀五千枚なんて、今迄の借金のように、私に肩代わりできる金額ではありません。
 ですが黙って売られたりはしません!

「待ってください。
 それは話がおかしいです。
 私は婚約者ではありますが、結婚はしていません。
 借金のかたにされる覚えはありません。
 どうしても私を借金のかたにするというのなら、婚約は破棄させてもらいます」

「そうはいかないんだ。
 我が王家が守護を約束した神は、契約の神ミスラ様。
 友情と友愛の守護神でもあられる。
 その神のもとに契約したことを破るというのなら、神々の戦いとなる。
 それでもいいのかな?」

 酷い話です。
 本当に友情の仲なのかどうかは、狡知に富み詐術に長けた計略の神でもある、ヘルメース神の神性を授かっている私には分かるのです。
 友情に見せかけて、博打好きで愚かなヴィンセント王太子殿下を騙したのです。
 ここは能弁と策略の神性を使って、論破し暴き立てないければいけませんね。

「それはしかたがないことでしょう。
 神々の争いは神々の事情です。
 人間の争いは人間の事情です。
 まずは神々に人間の事情をお知らせしなければいけません。
 特に、その場におられなかったヘルメース神に対して、この度の賭けが正々堂々と行われたかどうか、お知らせして見極めてもらわなければいけません」

「ほう、それは私がイカサマをやったと言いたいのか?」

「イカサマかどうかは、人間として正すべき程度の事か、神として戦いを始めるほどの事か、明らかにしなければいけません。
 それともリーアム殿下にはヘルメース神に知られたくない事情があるのですか!」
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