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第一章

第25話:急速発展と料理法

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「女神様、配祀神様、本当にありがとうございます」

 街から戻って来た最初の元村人が、作業の手を止めて頭を下げてくれる。
 何度も何度も頭を下げて礼を言ってくれるので、逆に恐縮してします。
 根が小心者だから過度の御礼には恐怖すら感じてしまう。
 今は神を偽っているから堂々としなければいけないのに、情けない事だ。

「ふっふっうん、にわか神に我らのような威厳などあるものか。
 広志は私の後ろについていればいいのだ、よく分かったであろう」

 なんか、最初に出会った時より身勝手になっている気がする。
 最初の頃は女神らしくしようと猫を被っていたのだろう。
 本性を出してくれたのは、心を開いてくれたという事でうれしいが、面倒だというのが正直な気持ちだ。

「はい、はい、はい、分かりました、分かりましたよ。
 石姫皇女様の言われる通りにさせていただきます」

 確かにもう俺がでしゃばる事はないのかもしれない。
 鶏糞が大量に出ているから、それを使って農地が豊かになるかもしれない。
 人糞を堆肥にする事も、臭いは嫌だが教えれば農地が豊かになる。
 アルフィに持ってこさせた雄鶏と廃鶏の間に有精卵が生まれ、ひよこの誕生が期待できる状態だ。
 孵化までに21日かかるはずだから、そろそろ成功か失敗かが分かる。

「女神様、配祀神様、卵御馳走になります」

 廃鶏が結構な量の卵を産むから、帰って来た元村人にも沢山食べてもらえる。
 最近では溶き卵を使って料理を作れるくらい卵に慣れてくれた。
 まあ、今でも卵は1個丸々食べたい気持ちが強いようだが、俺が指示すれば巫女衆は溶き卵を使った料理も作ってくれる。
 今までは大麦粥に卵を入れるだけだったが、今では卵入り玄米雑炊や卵入り麦玄米雑炊を作るようになっている。

「遠慮せずにたくさん食べるがいい、鶏も食べていいのだぞ」

 料理のバリエーションとして、江戸時代に作られていた麦飯卵を作ってみた。
 俺にはいまいちの料理だったが、氏子衆には美味しいごちそうだった。
 もっとも昆布がないので、代わりに森で採れるキノコを使って出汁を取った。
 食糧状態が劇的に改善して、燃料用の薪や柴も十分あるので、粥や雑炊ではなく普通に玄米ご飯を炊くようになった。

 特に氏子衆の評判がよかったのは、廃鶏を潰した時に取れた鶏脂や鶏皮を鍋につけて出した脂で目玉焼きを作り、それを熱々の玄米飯に乗せた食べる事だった。
 俺は白飯で食べたいが、白飯の美味しさを知らな氏子衆には玄米飯で御馳走だ。
 白飯の美味しさを教えてやりたい気もするが、それではビタミン不足で脚気を引き起こしてしまう可能性がある。
 白飯を導入する時は、同時に糠漬けも教えなければいけない。

「生クリームをよこすのや、業務用の生クリームを買ってくるのじゃ。
 生クリームケーキに生クリームを乗せて食べるのじゃ。
 シュークリームとエクレアも忘れるでないぞ」
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