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2話

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「やれやれ。
 恐ろしく強情な連中でしたな。
 それに王太子殿下に対して無礼千万。
 もっと厳しい処罰を行いますか?」

「駄目だ。
 これ以上の厳し刑にしたら、ディランの馬鹿が、命懸けで神明裁判をおこなうかもしれない。
 そんなことになったら、お前達が死ななければならなくなるぞ。
 それでもいいのか?」

「それはごめんです。
 あのような融通の利かない愚か者のために死ぬのは、絶対に嫌です。
 神明裁判の結果など王太子殿下のお力で変えてしまえばいいのではありませんか」

「本気で言っておるのか?
 ドロヘダ公爵クルト。
 私に、公爵のためにそのような危険を冒せと、本気で言っているのか!」

「申し訳ありません。
 口が過ぎました。
 自分の事は自分で責任を持たせていただきます。
 ですが宜しいのですか?
 領地に戻っていたエイデンが、息子の受けた仕打ちを知れば、怒り狂って王都に攻め上ってくるかもしれません」

「ふん!
 あいつはそんな事はせんよ。
 あれは口を開けば王侯貴族の誇りだ義務だとうるさい奴だ。
 王家に剣を向けて謀叛など、絶対に起こさんよ」

 王太子はまるで自分の考えのように口にしたが、全てはマナリズ男爵家令嬢スカーレットに、寝物語で吹き込まれた事だった。
 もう王太子は、極悪非道なスカーレットの完全な操り人形だった。
 金髪碧眼で、豊満だが引き締まった肉体を持つスカーレットは、性技の限りを尽くして王太子を色餓鬼に落としていた。

 マナリズ男爵マルグリットは、元は先祖代々売春宿を経営する商家の出だった。
 当主の一族は、男も女も自分の身体さえ商売道具にしていた。
 実際に、経営する売春宿で売春婦や男娼として客を取る事さえあった。
 そんな売春宿経営者の家に、稀代の商売上手が生まれ、あっという間に大陸中をまたにかける大商家となった。

 そして娘の一人に、ゴードン王国のマナリズ男爵家を買い与え、王国を乗っ取れと命じたのだが、それがスカーレットの母親マルグリットだった。
 マルグリットは、国王に売春宿でも一二を争う美女を与えた。
 美女は見事に役割を果たし、国王を虜にし、王国を腐敗堕落させていった。
 マルグリットは多くの売春婦を貴族の奥に送り込み、骨抜きにしていった。

 その一人がドロヘダ公爵クルトだった。
 クルトは自分の意志でディランを陥れ、愚かな王太子を操り、王国の実権を握ろうとしているのだと思い込んでいた。
 だがそれは単に操られているだけだった。
 マルグリットの謀略は幾重にも折り重ねられていた。
 一つ二つの駒が斃されようと、一つ二つの罠が破られようと、王国を乗っ取る謀略が破綻しないだけの準備が整えられていた。
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