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第二章「恋愛」
47話
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「姫様。
完成いたしましたぞ」
「本当ですか。
では、火竜を斃せる武器が完成したのですね」
「いえ、まだでございます。
材料が少な過ぎます。
ですが、今迄よりは簡単にドラゴニュートを斃すことは出来ます」
「そうですか。
褒美を多くしてでも、材料のドラゴニュートを狩ってもらわなければなりませんね」
カチュアは民を危険に晒してでも、火竜を討つ覚悟を決めていた。
公爵家の後継者として学んだ帝王学からは間違った判断だった。
だが水乙女としては、どうしても火竜と共存は出来なかった。
特に最近は水精霊との親和性が強くなっているので、オアシスの水精霊と敵対関係にある火竜を、嫌悪する感情が溢れていた。
そのカチュアの感情を感じていたのか、水精霊が火竜を斃す策を伝えてきた。
それは火竜の子であるドラゴニュートを素材とする武器だった。
ドラゴニュートの牙と爪を使って武器を作り、皮と鱗を使って防具を作ると言う方法だった。
しかもその加工法まで教えると言う親切さだったが、問題は素材であるドラゴニュートを狩るのが難しいと言う事だった。
そこで東西交易で得た莫大な富の一部を使い、アシュラムの従者に選ばれなかった、身体強化を成し遂げた者に、ドラゴニュートを狩らす事にした。
だが従者に選ばれなかった者の中には、強硬策に出てもカチュアの婿になろうとする者がいた。
子供さえ孕ませてしまえば、どうとでもなると、愚かな事を考えていた。
「姫様。
見事ドラゴニュートを斃したヘイグ殿でございます」
「ヘイグ。
よくドラゴニュートを斃してくれました。
褒美を与えますので、よく身体を休め、次の戦いに備えてください」
重臣の一人が、ドラゴニュートを狩ったヘイグと言う戦士を、カチュア姫に謁見させていた。
ダンスを踊る事は認められなかったが、拝謁の栄誉は与えられたのだ。
だがヘイグはそれだけで満足しなかった。
不意に動いてカチュア姫を人質にしようとした。
いや、人目を気にせず、その場で犯す心算だった。
魔獣を斃し身体強化を成し遂げたヘイグには、戦闘侍女や護衛の騎士など者の数ではなかった。
彼らを薙ぎ払い、カチュア姫を確保するのは簡単だと考えていた。
だがそうはいかなかった。
カチュア姫には水精霊の守護があるのだ。
民の祈りの御陰で、水精霊は力を取り戻しつつあった。
カチュア姫が居を定める場所には、水道が引かれ泉が作られているのだ。
準備が整ったので、罠を仕掛けたのだ。
心卑しき者共に見せしめとして殺す相手を誘い出したのだ。
ヘイグは身体の穴と言う穴から、激しく渦を巻いた水が入り込んだ。
その痛みは余りに激烈で、身体強化を成し遂げたヘイグでも、泣き叫び暴れ回るほどだった。
ヘイグ以外にも悪心を抱いていた者はいたが、皆顔を青くして震えていた。
完成いたしましたぞ」
「本当ですか。
では、火竜を斃せる武器が完成したのですね」
「いえ、まだでございます。
材料が少な過ぎます。
ですが、今迄よりは簡単にドラゴニュートを斃すことは出来ます」
「そうですか。
褒美を多くしてでも、材料のドラゴニュートを狩ってもらわなければなりませんね」
カチュアは民を危険に晒してでも、火竜を討つ覚悟を決めていた。
公爵家の後継者として学んだ帝王学からは間違った判断だった。
だが水乙女としては、どうしても火竜と共存は出来なかった。
特に最近は水精霊との親和性が強くなっているので、オアシスの水精霊と敵対関係にある火竜を、嫌悪する感情が溢れていた。
そのカチュアの感情を感じていたのか、水精霊が火竜を斃す策を伝えてきた。
それは火竜の子であるドラゴニュートを素材とする武器だった。
ドラゴニュートの牙と爪を使って武器を作り、皮と鱗を使って防具を作ると言う方法だった。
しかもその加工法まで教えると言う親切さだったが、問題は素材であるドラゴニュートを狩るのが難しいと言う事だった。
そこで東西交易で得た莫大な富の一部を使い、アシュラムの従者に選ばれなかった、身体強化を成し遂げた者に、ドラゴニュートを狩らす事にした。
だが従者に選ばれなかった者の中には、強硬策に出てもカチュアの婿になろうとする者がいた。
子供さえ孕ませてしまえば、どうとでもなると、愚かな事を考えていた。
「姫様。
見事ドラゴニュートを斃したヘイグ殿でございます」
「ヘイグ。
よくドラゴニュートを斃してくれました。
褒美を与えますので、よく身体を休め、次の戦いに備えてください」
重臣の一人が、ドラゴニュートを狩ったヘイグと言う戦士を、カチュア姫に謁見させていた。
ダンスを踊る事は認められなかったが、拝謁の栄誉は与えられたのだ。
だがヘイグはそれだけで満足しなかった。
不意に動いてカチュア姫を人質にしようとした。
いや、人目を気にせず、その場で犯す心算だった。
魔獣を斃し身体強化を成し遂げたヘイグには、戦闘侍女や護衛の騎士など者の数ではなかった。
彼らを薙ぎ払い、カチュア姫を確保するのは簡単だと考えていた。
だがそうはいかなかった。
カチュア姫には水精霊の守護があるのだ。
民の祈りの御陰で、水精霊は力を取り戻しつつあった。
カチュア姫が居を定める場所には、水道が引かれ泉が作られているのだ。
準備が整ったので、罠を仕掛けたのだ。
心卑しき者共に見せしめとして殺す相手を誘い出したのだ。
ヘイグは身体の穴と言う穴から、激しく渦を巻いた水が入り込んだ。
その痛みは余りに激烈で、身体強化を成し遂げたヘイグでも、泣き叫び暴れ回るほどだった。
ヘイグ以外にも悪心を抱いていた者はいたが、皆顔を青くして震えていた。
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