悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

文字の大きさ
31 / 89
第一章

第31話:愚者・セザール城代家老視点

「みゃああああ」

 その巨大な体躯から発せられる神々しさと強大な力からは想像もできない、思わず吹き出してしまうような可愛いらしい声を発するバロン。
 以前はもっと禍々しい強大な力だけを発する魔獣が護りを固めていたが、今では表に出てくるのは一柱のバロンだけになった。
 そのバロンがまた城へ侵入しようとした者を口に咥えて持ってくる。

「ありがとうございますバロン様。
 全てを調べた上で解放したしますので、ご安心ください」

「みゃああああ」

 バロンの姿が見えなくなったが、恐らく塔に戻ったのだろう。
 公爵と夫人が幽閉されている塔には、多くのモノが潜入しようとした。
 我ら公爵家の者が発見捕縛する前に、塔どころか領都に入ったとたんに、バロンやその前に派遣されていた魔獣が捕らえてしまうので、最初は苛立つ事もあった。
 だが今では仕方がない事だと諦めている。
 キャメロン様の使い魔に我らごときが太刀打ちできるはずがないのだ。

「セザール城代家老、この者は公爵への密書を持っております」

 驚くほど迂闊で愚かな奴がいる。
 どこの王侯貴族かは分からないが、証拠が残る密書を送るなんて、キャメロン様に殺してくれといっているようなものだ。
 今大陸で噂されているのはリアナ様の事だけだが、少し調べればその全てにキャメロン様が手助けしている事など直ぐに分かる。

 この点に関してだけは、キャメロン様も迂闊な点が多々ある。
 リアナ様の事に関してだけは、自分の危険を後回しにされる。
 もしかしたらワザと自分に敵が来るように仕組まれているのかもしれない。
 キャメロン様のリアナ様への愛情は、溺愛と表現するほかない。
 それなのに、ろくに調べもせずにリアナ様を欲得だけで手に入れようとするなんて、命知らずにもほどがある。

「密書を調べて相手を特定するのだ、それと直ぐに祐筆に書き写させろ。
 こちらに残すのは書き写した物だけでいい、密書はキャメロン様に送るのだ」

 さて、本物の密書は使い魔に預けてキャメロン様に届けてもらおう。
 一緒にこれまでの密書の内容を検討した結果も送ってもらう。
 私はちゃんと敵を見極めていられているだろうか。
 密書に書かれている差出人が、送り主と同じとは限らない。
 書かれている差出人をキャメロン様に殺させようとする黒幕がいるかもしれない。

 キャメロン様を欺く事など不可能だが、我らを騙す事はできるかもしれない。
 我らに、いや、私に領地を任せるだけの力がないとキャメロン様が判断されたら、容赦なく城代家老を解任されてしまうだろう。
 キャメロン様はリアナ様を危険に晒す存在を絶対に許されない。
 それは敵味方関係なく、一切の容赦をされない。
 いや、譜代の家臣は殺されずに役目を解かれるだけだから、敵味方で処分は違っているな。

「準備が整いました、セザール城代家老。
 重臣それぞれの見解を書いた報告書も準備できております」

 さて、今回は誰が解任されるのだろうな。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!

雲乃琳雨
恋愛
 「お前、悪魔が憑いているぞ」 はあ? 失礼な!  母が亡くなりすっかり我儘に育った子爵令嬢のピニオンは、社交界では悪役令嬢と呼ばれている。最近になって父が平民の再婚相手と、亡くなった母と髪と目の色が同じ義妹を連れて来た。ピニオンが反発してさらに荒れると、婚約者から婚約破棄され、義妹には怪我をさせてしまう。父に修道院で行儀見習いとして暮らすように命じられた。戻れる条件は令嬢らしくなること。  ある日、修道院で暮らすピニオンの前に、悪魔祓いの聖騎士カイゼルが現れた。悪魔が憑いていると言われる。なんて失礼な奴!  修道院から連れ戻されることもなく、放置されて3年が過ぎてしまった。すっかり平民らしくなったピニオンの前に、またカイゼルが現れた。  平民化した悪役令嬢と、悪魔のような聖騎士と、本物の悪魔が絡む恋愛未満な二人のロマンチックラブコメディ。   一章で一旦終了します。

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。