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第19話追放13日目

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 車騎将軍バークレー侯爵トーマス卿。
 驃騎将軍ポウィス侯爵セオ卿。
 二人は国王達が横死しても、諦めることなく戦い続けていた。
 国王達が魔女の手先になる事を潔しとせず、魔力を暴走させて死んだ事を知っても、自分達も誇り高く死ぬことを望み、神殿勢と戦い続けていた。

 絶望的に追い込まれているからこそ、誇り高く戦っていた。
 民から兵糧を徴発することを潔しとせず、太陽神殿を襲撃して軍資金と兵糧を確保し、それを使って戦い続けていた。
 五将軍家として、侯爵家として存続することを考えず、歴史の正義の将軍として名を残すことを選び、絶望的な戦いを続けていた。

 局地的な戦いでは、二人の将軍は神殿勢を圧倒していた。
 配下の騎士達も誇り高く戦った。
 味方に参陣する誇り高き騎士や徒士が全くいない訳でもなかった。
 だが、利を追う者、日和見する者よりは圧倒的に少なかった。
 味方が徐々に傷つき死んでいくのに対して、神殿勢は日々数を増やしていた。

 それでも二人の将軍は心折れなかった。
 魔に心を奪われた、不甲斐ない子供のせいで傷つき汚れてしまった名誉を回復するため、一族の者達が再び胸を張って家名を名乗れるようにするため、命を捨てて戦い続けていた。
 そんな彼らが、弱き者達を背負って逃げるスケルトンと遭遇した。

「将軍閣下!
 民がスケルトンに誘拐されています。
 魔女の配下かもしれません。
 直ぐに助けましょう」

 騎士長の一人がバークレー侯爵に提案した。
 バークレー侯爵はそのまま突撃命令を下そうとしたが、何か違和感があった。
 何がおかしいのかと問われたら、明確に答えられないほど小さな違和感だった。
 だがそれをバークレー侯爵は無視しなかった。
 魔境や魔窟で幾千幾万と戦った戦士の勘が、攻撃命令を下すなとささやいた。

「状況を見極めろ。
 あのスケルトンと民の全てを見ろ。
 疑問に感じるところを全て報告しろ」

「民が泣いていますが、悲しそうには見えません」
「老人はスケルトンに祈っています」
「民をお姫様抱っこしているスケルトンの背中には、荷物が背負われています」
「背負われている民の中には、何か食べている者がいます」
「スケルトンが置いていったとみられる板がありました」

 騎士がバークレー侯爵に手渡した板には、
「逃げなさい。
 もうこの国は駄目です。
 魔がこの国を支配して民の怨嗟の声を求めて酷政を行います
 少しでも早くこの国から逃げるのです」
 と書いてあった。
 誰かがスケルトンを使って民を助けているのが明白になった。
 バークレー侯爵の頭にオリビアの名が浮かんだ。
 同時に小さな希望の光が胸の中に灯った。
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