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群青懐胎:ブルー編
契りの杯
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翌日バルドは人間界にひとっ飛び、宝飾職人に話をつけて急ぎ指輪を作らせた。
邪悪に煌めく金の指輪。獅子の頭を象った大ぶりのリングは、青井の薬指に吸い付くようにぴったりと嵌まった。
「その金は年代物だぞ。大抵の厄は寄せ付けん」
バルドの酒器コレクションのうち、ビンテージのビアカップを鋳溶かして作らせたと言う。どこか禍々しいそれを青井は指の腹でさする。
「ペアで作った?」
「応。人間界じゃそれがしきたりなんだろ」
「うん。……俺もはめたい、指貸して」
———青井はバルドの手を取った。ごつごつとした赤鬼の手は皮膚が分厚く、筋肉に巡る血潮で常に温かい。並べて眺めた二人の指の太さがあまりに違うので、思わず青井は見下ろす大鬼と目を合わせ、少し笑った。
「……病める時も、健やかなる時も。富める時も貧しき時も……何だこりゃ。決まり文句かァ?」
「わざわざ調べてきたのか?」
「職工の爺に貰った。口約束じゃ心許ねえな。契約書作るぞ」
バルドの執務室でそれは行われた。幾分文言はオーガ流に弄られたが、その誓いは紛れもなく番い契約を意味するものとなった。
「いついかなる時も二心を持たず……これじゃ魔王の従属契約書だな。やめやめ。いついかなる時も互いを信じ……浮気せず……浮気の範囲ってなんだ?一緒に文面考えてくれよ」
「そこまで厳密に決める必要あるかな」
「ある。例えばよ……お前の手がナンパ野郎に握られたとするだろ。相手の指が吹き飛ぶ仕様にしてえ」
「いないよそんなやつ……」
この鬼ほど奇特な男は他にいない。
誓約書は殆どをバルドが考えたが、散々こねくり回した結果、内容はどんな状況下でも相手を守り信じ合うという内容に尽きた。ペナルティは無い。だからこれは、本当にただこれからそうありたいと願う、二人の約束事を書き留めただけの書面であった。
「一緒にやってくれるか?セーイチ」
大鬼が笑う。跪き、目の高さを合わせ、青年の手を取って。
頷く伴侶の目元を拭う。
以後ブルー改め青井清一はバルドの伴侶として、魔界に腰を落ち着けることとなる。
指にかかる重みは青年を繋ぎ止めていた。波乱に満ちた世界から遠ざけ、守るように。
———その胎で。根はただ静かに、芽吹きの時を待つ。
邪悪に煌めく金の指輪。獅子の頭を象った大ぶりのリングは、青井の薬指に吸い付くようにぴったりと嵌まった。
「その金は年代物だぞ。大抵の厄は寄せ付けん」
バルドの酒器コレクションのうち、ビンテージのビアカップを鋳溶かして作らせたと言う。どこか禍々しいそれを青井は指の腹でさする。
「ペアで作った?」
「応。人間界じゃそれがしきたりなんだろ」
「うん。……俺もはめたい、指貸して」
———青井はバルドの手を取った。ごつごつとした赤鬼の手は皮膚が分厚く、筋肉に巡る血潮で常に温かい。並べて眺めた二人の指の太さがあまりに違うので、思わず青井は見下ろす大鬼と目を合わせ、少し笑った。
「……病める時も、健やかなる時も。富める時も貧しき時も……何だこりゃ。決まり文句かァ?」
「わざわざ調べてきたのか?」
「職工の爺に貰った。口約束じゃ心許ねえな。契約書作るぞ」
バルドの執務室でそれは行われた。幾分文言はオーガ流に弄られたが、その誓いは紛れもなく番い契約を意味するものとなった。
「いついかなる時も二心を持たず……これじゃ魔王の従属契約書だな。やめやめ。いついかなる時も互いを信じ……浮気せず……浮気の範囲ってなんだ?一緒に文面考えてくれよ」
「そこまで厳密に決める必要あるかな」
「ある。例えばよ……お前の手がナンパ野郎に握られたとするだろ。相手の指が吹き飛ぶ仕様にしてえ」
「いないよそんなやつ……」
この鬼ほど奇特な男は他にいない。
誓約書は殆どをバルドが考えたが、散々こねくり回した結果、内容はどんな状況下でも相手を守り信じ合うという内容に尽きた。ペナルティは無い。だからこれは、本当にただこれからそうありたいと願う、二人の約束事を書き留めただけの書面であった。
「一緒にやってくれるか?セーイチ」
大鬼が笑う。跪き、目の高さを合わせ、青年の手を取って。
頷く伴侶の目元を拭う。
以後ブルー改め青井清一はバルドの伴侶として、魔界に腰を落ち着けることとなる。
指にかかる重みは青年を繋ぎ止めていた。波乱に満ちた世界から遠ざけ、守るように。
———その胎で。根はただ静かに、芽吹きの時を待つ。
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