イケニエヒーロー青井くん

トマトふぁ之助

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翡翠挽回 上:グリーン編

嵐の手前

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 鼻先が触れる。くたくたに脱力した腰を支えられ、清一は大鬼とのキスを深めた。牙の腹に舌が擦れて気持ちいい。何度も角度を変えて甘ったるく口づけを繰り返しているが、それだけで既に数十分を費やしている……バルドも観念したらしく、「延長」を強請った青年妻の口から貪るように舌を啜る。対面座位で深々と後孔を杭打たれた清一は、家出以前の甘えたな妻にすっかり戻ってしまっていた。
 「ん、あっ……♡あっ、あ」
 「可愛い」
 「ひぅ……っ♡」
 「ヒヒ……ッ♡おうおう目ぇ蕩かして、可愛いなァア……♡」
 ギチギチ歯を軋ませて悪党笑いをするバルドの太い首に腕を回し、分厚い背中に縋り付く。可愛いだの愛してるだのと吹き込まれながら腰を揺すられるたび、清一の腸壁は淫らにさざめきだつ。バルドは焦らすように腰を揺りたて、睦言の返事のようにきゅうと締まる雄膣をじっくりと堪能した。
 首元へ必死に縋りつく清一はもう喘ぎを殺す余裕もないようで、結腸奥を突き上げるたびに全身びくつかせて肉の快楽に溺れている。瞳はチカチカと眩い光に潰されたように遠くを見つめていた。
 「……バルド♡すき、すき……っ♡」
 「クク、愛してるぞォ……♡なぁもっと言ってくれよ……出て行かれて寂しかったんだぜ」
 「ン、すき、お、俺だって……!寂しかったぁ……っ♡!!アッ♡あン……ッ♡好き、ひゅきぃ……っ♡」
 きゅ♡きゅきゅ……♡とそれは恋しそうに締めつける男サキュバスの下腹をオーガの巨根が深く抉り込む。とろとろに蕩けた声音で青年は夫の名前を呼ぶ。すっかり番いの形に慣らされたそこは、出て行かないでくれと抽挿のたびに絡みついて異形の根を引き止める。縦割れた後孔に食い締められ、たまらずバルドが息を荒げた。
 「ックソ……!!」
 「あ、アッ♡ひィッ♡は、激し……ッ♡!!」
 繋がったまま寝台に押し倒し、人間の小さな手を縫い止める。贅肉の削がれた剣士の長い脚を担ぎ、バルドは丁寧に……弱点を引き潰すように、もはや貪られるだけの青年妻を執拗に責め立てた。
 「ンぐッ♡ふぅうっ……♡!!」
 長いストロークで柔らかく火照った腸壁を一息に擦り上げたかと思えば、ごりごりと腹筋を破るよう臍の下を苛めてやる。弱い箇所を攻めてやるたび清一が面白いように啼き声を上げるので、覆い被さるバルドの顔にも次第に不穏な影が差していく。
 「———ッハハァ……♡」
 「イく、イ、イっちゃ……♡!!ヒィいいいンッ♡♡♡!!」
 つま先が跳ねる。腰を振る大鬼の影の中、天を仰いで酸素を取り入れようとする青年の口をバルドが塞ぐ。艶かしいキスと同時に、組み敷かれた青年が一際大きな絶頂を迎えた。
 「あ、あ、あ……っ♡♡♡」
 清一の呆けた目尻から一筋、喜悦の涙が伝う。バルドの興奮しきった呼吸さえ心地よくて、深々と杭打たれた下腹の熱に背筋が勝手にびくついてしまう。イキ癖のついた清一を抱き込み、バルドは汗ばんでしけった髪にもう一度キスを落とした。
 「……愛してる」
 「ん、う……おれも……っ♡」
 「お前らさえ無事でいてくれりゃあ———他に何にもいらねえんだ」
 清一の呼吸が落ち着くまで、バルドはそうして妻の耳元へ愛の言葉を囁き続けた。昏く瞬く金の瞳が僅かに揺れたような気がして、清一は手を伸べて夫の頭を撫でた。角の輪郭をなぞり、頬を擦り寄せる。
 「大好き」
 傲岸不遜で威丈高、嫌味なほど自信家の夫は時々ひどく危うげに見える。清一から———かつて潰した鬼の片目に、恭しくキスをした。
 「———俺が守るよ。あなたも、ダグも……あ、安心して」
 首を撫で付けながらそんなことを宣えば、逆光に翳ったバルドの顔が一瞬苦しげに歪んだように見えた。清一は内心動揺する。今、俺はもしかしてバルドを傷つけてしまったのだろうか?
 よく見ようと目を凝らすがそれは叶わなかった。清一の腰を鷲掴み、大鬼は誤魔化すように律動を再開したのである。
 「……ぅあッ♡あ、急に———ンんッ♡!!」
 「……誰が、誰を守るだってェ?勘違いするなよ、赤端の件を差っ引いてもお前はまだ全快してねえんだからなッ!!」
 「あ、クソ、それズル……ッ♡!!ひ、卑劣だぞ!!畜生、さっき仲直りしたばっかだろ……っ♡!?馬鹿!アホ、ぅん♡ンッ……♡!!」
 「ぐ……ッ!唇、噛むなって……!!」
 慌てて動きを止めた大鬼の下で、青年は呼吸を整えながら不満そうにシーツをかく。未だ下腹を貫く熱塊に時折ペースを乱されながら、清一は当座の目標を宣言する。
 「は、はーっ……♡は……♡ふん、腐っても魔王軍幹部だもんな、プライドが傷ついたってわけか。今に見ていろ……!お、俺は今度こそプロの用心棒として、ン♡……お前に腕が立つって認めさせてやるんだからな……うぁっ♡ぜ、絶対———役に立ってみせるぞ!」
 「……ちげえよ。お前が強いのは知ってるよ」
 「えっ」
 些かの沈黙の後、返ってきたバルドの答えは意外なものだった。
 「当たり前だろ、何度も言ってるじゃねえか……ただな、魔界はお前が思ってるより怖ァいとこなんだ。わかるな?」
 「う、うん……?じゃあ何でさっき怒ったんだ?」
 「怒ってねえって……ちょっとな、思い出したンだ。お前がどんなに困った野郎かってことをな」
 大鬼の目が据わっているように見えるのは気のせいだろうか。威圧感に清一は後退りしかけるが、深々と繋がっている部分がそれを許さない。
 「っあ♡そこ、ぐちぐちって……♡やめ……っ♡」
 「怪我させたくねえし……危ない目にも遭わせたくねえ。でも我慢するぜ!お前のやりてえことに意見はするが止めはしねえよ……だから、せめて、な」
 「あっア、ヒッ……♡♡♡!!」
 柔らかく湿った肉の洞、バキバキに勃ち上がったままのオーガペニスが腹筋の裏を不穏に抉る。根本の鱗は前立腺を甘く噛み、えげつなく開いた雁首は火照った肉襞をゆっくりと往復していく。……バルドは再び己の妻に覆い被さり、オーガと比べれば細い腰をがっちり掴んで固定した。
 「———たっぷり魔力吸わせて———誰のモンかわかるようにするくらい、お前は許してくれるだろ?」

 結局半日延長した。シャツガーターにソックスガーター迄付けたまま、ベッドで二回、風呂で一回。そこからははっきり覚えていない。バルドはそれこそ繁殖期の獣が如く清一を抱き続け、己の魔力を思う様刷り込んだ。オーガの分厚い胸ですやすや眠り、ふらふらと身支度を整える頃———洗面台の鏡に映った青年の瞳には、色濃い金冠がくっきり浮かびあがっていた。
 「色が抜けたらまた仕込んでやるよ」
 バルドは舌を出して下衆笑いをする。
 腰を支えられながら部屋を出ると、入室許可を下した時と同じ席にリリスが座り、それはにこやかに宿泊料を請求してきた。清一は法外なオプション料金に目眩がしたけれど……もう一つある心で、月イチなら使えるなと考えたりもした。

 結果息子の迎えには無事間に合い、夫婦仲は元通り。バルドは姑の小言を聞かずに済んだ。めでたしめでたし、そういう具合である。
 「母上~!!見てて下さいね!!」
 ダゴンの稽古をみてやりながら、バルドはその後方で見守る清一にため息をつく。酔いと感覚過敏で絶不調の筈だが素知らぬ顔でルイゼと世間話などしている。奴の痩せ我慢は一級品だ。補給用の石を滞在先へ送りつけねばなるまい。
 「……父上。あの、母上、どこか具合悪いんですか?」
 「…………ちょっと心配ごとでな。腹が痛えんだってよ。気にするこたぁない」
 息子のアタマをひと撫で、バルドは作り笑いをする。本当にこいつらは、揃いもそろって難儀な性質をしている。
 「嵐にもならねえ旋風がきそうって、それだけの話だ」
 オーガの頭領は一笑に付した。
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