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あとがき
解説のようなもの
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
不条理小説というものは、仄めかすだけ仄めかして全て謎のまま終わってもよいのですが、個人的にその種の丸投げは、夢オチと等しく好きではありません。ですから、「これは広義のミステリでもある」と主張しても怒られない程度には、謎に対する答えを提示したつもりです。
【ここからネタバレを含みます】
シンイチが行く先々で耳にする「不登校中の児童の列に車が突っ込んだ」というニュースは一体何か? 果たして積み重なったストレスが限界を超えたシンイチが関係者を皆殺しにしたのか(シンイチが事故のニュースを耳にするたび、被害者の数が増えていく)? いや事故現場のドライバーはシンイチではない? もはや欲望に突き動かされる化物と化した妹は同情の余地のないモンスターなのか? 母親は一方的被害者なのか? なぜ母親の元にあの指輪があるのか? 回想シーンにしか登場しない父親の役割は?
第1話から順に第29話まで読んでいただいた場合に、このような疑問が浮かぶかと思います。本編は29話で終りますが、もう少し補足を加えたくなり、「断章」として四話加えました。
断章からは、また新たな疑問が生じると思います。「バタフライ・エフェクト」の赤いスカートの女の子(第15話の女児)は、誰の、なんの犠牲になったのか。やはり赤いスカートの女児が登場する最終話「ドライブ」のシンイチの父親らしき男性の仕業なのか。
時系列を考えれば、「ドライブ」はシンイチが少年の頃、「バタフライ~」は彼が二十四歳の出来事だから、同じ少女であるはずがない。しかし、これは不可解な事象が勃発する不条理な世界なので、捻じれた時空が繋がっているのかも? たまたま赤いスカートを履いていた別の女児だとしても、会社員のシンイチが久々に実家に戻った際、父親は自家用車で出かけて不在でした。ではやはり、「ドライブ」でどうやら初めて被害者を山に捨てに行くことにした父親が、その後も犯行を重ねた結果が「バタフライ~」なのでしょうか。
「バタフライ~」の少女も痛ましい事故で亡くなる不登校児童の中に含まれていたことを思えば、彼女の死にはシンイチが関与していると思われます。彼が直接的に手を下したのではないとしても(それとも、父親と同じ嗜好が実は彼にもあるのか?)、女児の運命がシンイチと路上ですれ違ったことによって、不幸な結末に向かうべく影響されてしまったとか? (エピソードのタイトルが「バタフライ・エフェクト」である)
「青髭」に登場するアヤらしき少女のお相手の男性も彼の父親なのか。そして、本編で散々「嘘つき」呼ばわりされていたハルカは、本当に嘘つきなのか。さらに
主人公シンイチは、何も気付いていない、か弱い被害者なのか。
少年時代の彼に、父親の悪行の責任を負わせるのは理不尽というものでしょうが、真面目で誠実な青年のようでありながら、彼女の裏切りに直面して行き場がなくなった時にようやく実家に取り残された母親のことを思い出すなど、自分勝手な側面も見られます。彼は父親がどういう人間なのか、気付いていなかったのでしょうか。彼の人生における最初の大きな不幸は妹との一件のように見えますが、その妹も幼い頃は父親の被害者だったかもしれないことを、彼は、そして母親は、全然知らなかったのでしょうか(それとも、母親が述べるように、妹は嘘つきなのか)。
恋人の浮気だって、見て見ぬふりというよりは、見たくない・知りたくないことは脳が認識しないように半ば強制的に蓋をしていたのかもしれません。それはそれで、決して彼だけの落ち度ではない因果の故でしょうか。
断章はそれぞれ一話で完結しているため、どこから読んでもよいのですが、一応(最終話)とした「ドライブ」が締めであるべきかと思います。この小説のトーンに馴染まない男二人で指輪を買いに行く「リング」が入っているのは、主人公シンイチを不幸にし過ぎたことを反省し、少しは幸せだった頃のことも書きたくなったのと、やはり、これを読む時点で読者は、これより少し前に彼の身に何が起きたか、さらにこの後起きることも知っているので、一層やるせない気持ちになるだろうなあという計算もありました(腹の中が真っ黒なので、すみません)。
最後に、みなさんの一番の懸念事項は、シンイチの恋人アヤがどうなったのかということかもしれません。浮気現場を押さえられた彼女は激高した恋人に縊られて果てたのか、それとも、第20話でアヤから電話があったことをハルカが述べていたからには生きているのか(では、ハルカは噓つきではない)?
第28話で実は自宅の居間にいることが判明する母親ですが、ずっとそこにいたのかどうかは不明です。こっそり出かけて何かをしていたのかもしれません。そうでなければ、第23話、29話で息子の恋人の指輪を手にしている説明がつきません。
美人で賢く、シンイチを心から愛しながら浮気をやめられない、そんなアヤは、虐げられた人生を自らの体を張って生き抜いてきたサバイバーでもあります。シンイチのような真面目一方な男に惹かれたのも、同じサバイバーであることを感じ取ったからかもしれません。
結局、古い謎が新しい謎で上書きされるばかりで、全くすっきりしない結末となりましたでしょうか。大変心苦しいのですが、不条理小説とはそういうもので、いくら待ってもゴドーは来ないし、お城の中には入れてもらえないと、相場が決まっております。
決してわかりやすいとはいえない物語に最後までお付き合いいただいたことに、再度感謝いたします。
不条理小説というものは、仄めかすだけ仄めかして全て謎のまま終わってもよいのですが、個人的にその種の丸投げは、夢オチと等しく好きではありません。ですから、「これは広義のミステリでもある」と主張しても怒られない程度には、謎に対する答えを提示したつもりです。
【ここからネタバレを含みます】
シンイチが行く先々で耳にする「不登校中の児童の列に車が突っ込んだ」というニュースは一体何か? 果たして積み重なったストレスが限界を超えたシンイチが関係者を皆殺しにしたのか(シンイチが事故のニュースを耳にするたび、被害者の数が増えていく)? いや事故現場のドライバーはシンイチではない? もはや欲望に突き動かされる化物と化した妹は同情の余地のないモンスターなのか? 母親は一方的被害者なのか? なぜ母親の元にあの指輪があるのか? 回想シーンにしか登場しない父親の役割は?
第1話から順に第29話まで読んでいただいた場合に、このような疑問が浮かぶかと思います。本編は29話で終りますが、もう少し補足を加えたくなり、「断章」として四話加えました。
断章からは、また新たな疑問が生じると思います。「バタフライ・エフェクト」の赤いスカートの女の子(第15話の女児)は、誰の、なんの犠牲になったのか。やはり赤いスカートの女児が登場する最終話「ドライブ」のシンイチの父親らしき男性の仕業なのか。
時系列を考えれば、「ドライブ」はシンイチが少年の頃、「バタフライ~」は彼が二十四歳の出来事だから、同じ少女であるはずがない。しかし、これは不可解な事象が勃発する不条理な世界なので、捻じれた時空が繋がっているのかも? たまたま赤いスカートを履いていた別の女児だとしても、会社員のシンイチが久々に実家に戻った際、父親は自家用車で出かけて不在でした。ではやはり、「ドライブ」でどうやら初めて被害者を山に捨てに行くことにした父親が、その後も犯行を重ねた結果が「バタフライ~」なのでしょうか。
「バタフライ~」の少女も痛ましい事故で亡くなる不登校児童の中に含まれていたことを思えば、彼女の死にはシンイチが関与していると思われます。彼が直接的に手を下したのではないとしても(それとも、父親と同じ嗜好が実は彼にもあるのか?)、女児の運命がシンイチと路上ですれ違ったことによって、不幸な結末に向かうべく影響されてしまったとか? (エピソードのタイトルが「バタフライ・エフェクト」である)
「青髭」に登場するアヤらしき少女のお相手の男性も彼の父親なのか。そして、本編で散々「嘘つき」呼ばわりされていたハルカは、本当に嘘つきなのか。さらに
主人公シンイチは、何も気付いていない、か弱い被害者なのか。
少年時代の彼に、父親の悪行の責任を負わせるのは理不尽というものでしょうが、真面目で誠実な青年のようでありながら、彼女の裏切りに直面して行き場がなくなった時にようやく実家に取り残された母親のことを思い出すなど、自分勝手な側面も見られます。彼は父親がどういう人間なのか、気付いていなかったのでしょうか。彼の人生における最初の大きな不幸は妹との一件のように見えますが、その妹も幼い頃は父親の被害者だったかもしれないことを、彼は、そして母親は、全然知らなかったのでしょうか(それとも、母親が述べるように、妹は嘘つきなのか)。
恋人の浮気だって、見て見ぬふりというよりは、見たくない・知りたくないことは脳が認識しないように半ば強制的に蓋をしていたのかもしれません。それはそれで、決して彼だけの落ち度ではない因果の故でしょうか。
断章はそれぞれ一話で完結しているため、どこから読んでもよいのですが、一応(最終話)とした「ドライブ」が締めであるべきかと思います。この小説のトーンに馴染まない男二人で指輪を買いに行く「リング」が入っているのは、主人公シンイチを不幸にし過ぎたことを反省し、少しは幸せだった頃のことも書きたくなったのと、やはり、これを読む時点で読者は、これより少し前に彼の身に何が起きたか、さらにこの後起きることも知っているので、一層やるせない気持ちになるだろうなあという計算もありました(腹の中が真っ黒なので、すみません)。
最後に、みなさんの一番の懸念事項は、シンイチの恋人アヤがどうなったのかということかもしれません。浮気現場を押さえられた彼女は激高した恋人に縊られて果てたのか、それとも、第20話でアヤから電話があったことをハルカが述べていたからには生きているのか(では、ハルカは噓つきではない)?
第28話で実は自宅の居間にいることが判明する母親ですが、ずっとそこにいたのかどうかは不明です。こっそり出かけて何かをしていたのかもしれません。そうでなければ、第23話、29話で息子の恋人の指輪を手にしている説明がつきません。
美人で賢く、シンイチを心から愛しながら浮気をやめられない、そんなアヤは、虐げられた人生を自らの体を張って生き抜いてきたサバイバーでもあります。シンイチのような真面目一方な男に惹かれたのも、同じサバイバーであることを感じ取ったからかもしれません。
結局、古い謎が新しい謎で上書きされるばかりで、全くすっきりしない結末となりましたでしょうか。大変心苦しいのですが、不条理小説とはそういうもので、いくら待ってもゴドーは来ないし、お城の中には入れてもらえないと、相場が決まっております。
決してわかりやすいとはいえない物語に最後までお付き合いいただいたことに、再度感謝いたします。
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第7話までの感想です。素晴らしい文才ですね、引き込まれます
(トーマスとの出会いがあまりにも唐突なのが、ちょっとだけ・・・)
コメントありがとうございます。
弱冠唐突でしたでしょうか(汗)。
この先に何が起こるか、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。