15 / 409
異世界居候編
15.狂喜乱舞する尻尾とお風呂で大騒ぎ(2)
しおりを挟むまだまだだけど、及第点かな。
ひっそり感動しながら食べていると、おかわりの声が上がった。それで急遽、追加でおかずを作ることになった。
肉はトリミング済みのものがないし、あっても漬け込む時間がなくて無理。豆腐もないので、お浸しと出汁巻き卵だけで許してもらった。
出汁は大量に作ってスミレの【異空収納】に保管してあるので、卵さえあれば、出汁巻き卵をいつでも作ることができる。焼き方のコツさえ掴めば、スミレとサツキにも作れるようになるだろう。
夕食後、食卓の周囲には仰向けになる者が続出した。
ぽっこりお腹のサイネが俺の膝に頭を載せている。頭を撫でずにいられないほどに可愛らしい。軽く指の腹で掻くように撫でているのだが、心地良いのかずっと満足そうに微笑んでいる。
「ふぅ、もう食べれないのです。ユーゴは凄いのです」
「げぷ、同感なのじゃ」
マツバラさんの膝にはウイナの頭が載っている。どうやらマツバラさんはウイナの方に懐かれたようだ。俺と同じように優しく撫でている。とても微笑ましい。
カタセ君はマモリ見習いの二人と一緒に食器を片付けている。俺が動こうとしたら、手振りで止められた。苦笑しつつ戯けた敬礼で、ごめんお願いと心で伝えると、笑顔で頷いてくれた。
「いやー、美味かった。久々にめっちゃ食うた。おかしいやろ、あの卵も肉も。ほんであれ、とろぉっとしたタレ掛かった揚げ豆腐。どれもこれも食うたことないぞ。冗談なしになんぼでも飯入ったわ。味噌汁一つとっても全然違うやんか」
「うむ、食べる前から違ったからな。口が欲していた」
「ほんまそれな。匂いで白米いける感じやったからな。それで、あー、ユーゴ。悪いけど、明日も作ってくれんか?」
多分そうなると思っていたし、俺もどうせなら美味いものが食べたいので快く了承した。
俺の返答を聞いたリンドウ、ウイナ、サイネが喜びの声を上げたが、スズランは「うむ、それはいいな」と一言発しただけで澄ました顔をしていた。だが、尻尾が狂喜乱舞していたので、一番喜んでいたのはスズランなのだろうと思う。
食事が済み、少しの休憩を挟んだ後で、俺たち渡り人はリンドウの指示でスミレに風呂場へと案内された。
脱衣所があり、棚に籠。規模は小さいが、銭湯で見るような光景で、奥にある引き戸を開くと、広い洗い場と木製の浴槽があった。
浴槽は四五人入ってもまだ余裕がありそうな大きなもので、名前はヒノキ風呂。
見た目もヒノキ風呂そのままで良い香りもしたが、スミレによるとただそう呼ばれているだけで、ヒノキが使われているかは不明らしい。
そもそもヒノキを知らなかった。釈然としないが、こちらでは木材で作られた浴槽をヒノキ風呂というのだと解釈することにした。もうそれで良いや。異世界だし。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
435
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる