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宿場町~裏社会編
13.ビンゴの祝福(2)
しおりを挟む少し時間が経過し――。
「いいよ、乗ってきな」
アルネスダンジョンの宿場町まで徒歩で向かう予定だったが、街の門で、通りがかった小人の行商人ビンゴさんの幌馬車に同乗させてもらうことになった。
荷台には荷物が大量に積んであるが、二人は乗れる。一人が御者の隣に座れるので計三人は乗れる。
つまり、一人は馬車の横を並走するか、縁に掴まり、荷台後部の外側に設けられた狭い足場に中腰で立った状態で乗る必要があるということだ。
「ここは、背の低いフィルが縁に掴まるべきではないかと思うんだけども」
「いや、僕は握力ないから確実に落っこちる自信があるね。それに、ビンゴさんと会えたのは僕が冒険者ギルドで依頼を受けることを提案したからだと思うんだ」
「確かに一理あるっすね。依頼も受けれましたし、時間のズレでこうして馬車に乗れることになったのは大きいと思います。ただ、声を掛けて交渉したのは俺っすから、そこは考慮して欲しいっすね」
ぐぬぬぬ。
俺は窮地に追い込まれ、サクちゃんに顔を向ける。サクちゃんは勝ち誇った顔をして口を開いた。
「ブロンズの依頼を受けれたのは、俺がいたからだろ?」
俺は両手両膝を地面につけて絶望のポーズを取った。
運の数値がステボにあれば俺は最下位だったに違いない。
ついでに冒険者ギルドで依頼を受けよう。とフィルが言ったとき、トイレに行くから待っててなどと言わなければこんなことにはなっていなかった。俺のいないうちに勝手に受けちゃうんだもんな。
だが決まってしまったものは仕方がない。
さてどうしたものかと俺は気持ちを切り替える。馬車の速度に合わせて走るのはキツいが中腰で固定されるのもまたキツい。
ここはビンゴさんに訊くのが早い。どちらが楽か訊いてみた。
「知らん、人による」
何でもいいから早くしてくれと言われ、俺は素直に「はい」と応じて頭を下げ、馬車の後部で掴まり立ちの準備をした。
積み荷は食料品で、宿場町まで運ぶらしい。そこでダンジョン産の鉱物資源や魔石、魔物の素材を買い取り、アルネスの街の冒険者ギルドで売るのだとか。
御者台の隣にヤス君が座り、フィルとサクちゃんが荷台に上がり窮屈そうに座る。
そして俺は恐怖による動悸を感じながら掴まり立ちを開始する。どのくらいの振動があるのだろう。腰を痛めないか非常に心配だ。
馬車が動き出す。徐々に速度が上がって行き、振動も大きくなってくる。
うおー! くるぞくるぞー!
ん? んん?
しばらく待ったが、ジョギングに毛の生えたような速さが維持されている。それ以上の加速はなく、揺れも予想よりは小さかった。
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