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宿場町~裏社会編
20.宿場町に到着したなら毒の沼地で遊びましょう(4)
しおりを挟むデモディアを倒したことで、能力値に変化が出ていないか確認すると、魂格が二に上がっていた。フィル以外は全員魂格上昇。フィルが上がらない理由は、一人だけ魂格が十を超えているから。現在は十二。
幼年期のマイナス補正が解けるまで、里を出ることも魔物を狩るのも許されなかったらしいが、隠れて小型の魔物を狩って魂格を上げていたという。
「また無茶したね。死ぬ可能性あるでしょそれ」
「そうは言っても暇だったし。考えられる? 二十年も能力値が激減してるんだよ。人族は八歳とかで解除されるのにさ。外見もそうだけど、里の若いエルフは皆文句垂れまくってたよ。不公平だーって」
「多分っすけど、魔力量や術の威力も落ちるってことはないでしょ。暇潰しと命を天秤にかけるタイプには見えないっすよ、フィル君は」
「うっ、ヤスヒトって鋭いよね。確かに術の威力を確認してから行動したよ。ただやっぱり威力も魔力量も落ちてはいたから、デビラビって兎みたいな小さな魔物しかまともに狩れなかったよ。お陰でまったく危険はなかったけど。まぁ、僕が狩りをしたのは、何か手伝わないと里に居辛かったっていうのもあるんだけどね」
「気遣い癖はそれが原因か。もう里を出たんだ。忘れろ」
「それが染みついちゃってるんだよねぇ」
フィルが肩を竦める。自分から苦労話を聞かせたので、取り敢えず頭を撫でておいた。よしよし、よくやった。褒めてるんだから睨むなよ。
この世界の不思議な点なのだが、幼年期は物凄く戦いにくい仕様になっている。子供が争いに駆り出させられることを憂いた神が与えた慈悲というのが一般論だが、子供から抵抗する力を奪っているとも言える。
つまり人攫いや奴隷商人の格好の餌食ということ。神様詰め甘し。
俺はフィルが説明してくれるまで、年齢補正というものがあることすら知らなかった。知らないといえばステボのパーティー機能もそうだ。
これはヤス君も知っていたが、ステボでパーティー設定しておかないと魂格を上昇させる為に必要な褒賞値の共有ができないらしい。所謂、経験値のことだが、この褒賞値というものについても俺は首を傾げている。
褒賞値は魔物を殺さないと得られない。人や他の動物では駄目。そういう仕様になっている。これも戦争や動物の無闇な淘汰を防ぐ為に神が慈悲をどうのこうのというのが一般論だが、魔物は動物ではないのかと思う。
聞いた話では、魔物は魔素を多く取り込んでしまう環境下に置かれた動物が変異したものなので、俺としてはどうにも腑に落ちていない。魔物になってからは魔物同士で繁殖するとはいえ、始まりが動物なのは変わらないのだから。
これまで誰とも話したことがなかったので、歩きながら皆に訊いてみたところ、ヤス君が真っ先に口を開いた。
「それなんすけど、俺も考えてたんすよ。どうして経験値って表示じゃないんだろうって。それで行き着いたのが、神の褒賞でした」
吹き溜まりなどから魔素を移動させるには、動物などの動く生き物に吸わせて運ばせるしかない。
ただ、吸わせただけでは世界に還元されないので、魔素を溜め込んだ生き物を殺す必要がある。そんな内容の話をヤス君がしてくれた。
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