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宿場町~裏社会編

26.初絡まれテンプレ展開とダンジョン特急探検隊(4)

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 遅れてぞろぞろやってきた衛兵たちの中にドニーの姿があったので声を掛けて挨拶。何があったかを話すと、大笑いした。

「アッハッハ! 十五人もいて新米冒険者二人に太刀打ちできなかったって言ってるんですか! しかも脅されてるって! 恥ずかしくないんですかね!」

「プッ、確認した。シルバー階級一名、ブロンズ階級十四名だ」

 衛兵たちが失笑する。ドニーの明るい笑い声が引き金になり和やかな空気になったが、それをぶち壊す者が一人。

「ふざけんな! 何笑ってやがる! 先に手を出したのはそいつだ! 俺たちは何もしてねぇし言ってねぇ! それにな、階級と能力は関係ねぇんだよ! 衛兵の癖にそんなことも知らねぇのか!」

 シルバー階級のゴロツキ冒険者が喚き散らしたが、そのことでヤス君が憤慨。

「階級と能力は関係ないって、それ俺のだろ! お前分かってなかっただろ!」

盗人猛々ぬすっとたけだけしいな」

「まぁまぁ、学んですぐ使ってるんだから、褒めてあげたら?」

 え? フィル? どうした?

 フィルがどういった立場で辛辣しんらつな言葉を吐いているのかははなはだ疑問だが、それはさておき、俺も皆と同じくこのゴロツキの面の皮の厚さはどうなっているのかと憤慨、いや、もう呆れ果てていた。

 先に言った者の前で、あたかも自分が考えたように堂々と丸パクリをかます恥知らず根性には恐れ入る。ある意味、尊敬に値する度胸とも受け取れなくはないが、決して受け取りたくはない。バットがあったら打ち返しているところだ。

 何にせよ、嘘はいかんよ。嘘は。

「ドニー、先に手を出したのは俺で間違いない。だけどそれ以外は――」

「ああ、大丈夫です。ユーゴさんたちが悪くないっていうのはもう皆分かってますんで。ただ、皆さんが『領主と冒険者ギルドマスターの客』と名乗ったという話が出てまして、それは身分詐称の中でも大罪ですから、どうしたものかと」

「詐称じゃないよ。確認取ってもらえば分かる」

 スッと全員の顔から血の気が引いた。目が泳ぐ者もいる。

「まぁ、はなっから分かってたことだけれども、衛兵の中にもこいつらに協力してたのがいるでしょう。ドニー、君はそんなことないよね?」

「い、いえ、ありません! イノリノミヤ様に誓って!」

 ドニーがビシッと敬礼する。イノリノミヤ神教の信徒だったのか、と思っているうちに他の衛兵も敬礼した。ザッと音が揃うのが心地良い。

「俺たちが一筆書くから、領主に判断を仰いで。ドグマ組とやらの名前も出してるし、芋づる式に引っ張られてくると思うよ。ところで、こいつらって罪の度合いだとどうなるかな?」

「ハッ、領主の客人に対する侮辱ぶじょく行為は極刑、一族にも罪が及びます!」

「そんな重いの? じゃあ、どうしようか? 何て書く?」

「こいつら、胸糞悪いっす。とんでもない酷いことしてきてる感じっすね。八つ裂きでも足らないと思いますんで、刑罰内容について書いて欲しいっすね」

「ヤスヒトがそこまで言うってことは相当だな。じゃあ、八つ裂き後の胴鋸挽どうのこびきか、足の先から鋸挽きで輪切りにするかとかじゃないか?」

 えぇ……?

「君たち、周り見なよ」

 ゴロツキ十五人だけでなく衛兵たちも全員顔面蒼白、泡を吹くものや失禁者まで現れ、許しの懇願こんがんもあったが俺たちは誰も相手にしなかった。

 というか、俺は唯一サイコパスじゃないと思っていたサクちゃんの残酷過ぎる提案に思い切り引いて、相手にする余裕がなかったというだけだ。さっきのは反省を促す為の脅しだと信じたい。
 
 
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