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ドグマ組騒動編

3.エドワード・マクレーンという男(3)

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 ここまで思い出したところで、俺は折返し地点であるイノリノミヤ神社に到達した。朱鳥居には汚れの一つも見えず、相変わらず、管理がしっかりとなされていると感じる。信徒が如何いかに真面目かがよく分かる。

 鳥居をくぐって、竹箒で境内を掃除中の日替わり管理担当者と朝の挨拶を交わす。今日は若い狼人の女性だった。気の強そうな顔立ちに赤い毛並が合っている。

 そういや、赤毛の狼人って見たことないな。なんか得した気分。

 獣人は種別によって、色がほぼ決まっている。狼人の場合は黒か青。赤は相当に珍しい。全種共通しているのは灰と茶。メッシュが入って一色でなかったり、濃淡の差は当たり前のように目にするが、決まりから外れた色を見るのは初めてだった。

 まぁ、毛色が何にせよ、信徒会所属であることは間違いない。白衣と白紋入りの紫袴で分かるので、いちいち確認する必要がないのは楽でいい。

 勿論、偽ることは可能だが、信仰心の高いイノリノミヤ神教信徒のすべてを敵に回し、マモリ衆から命を狙われるという話が常識として世間に浸透しているので、そんな馬鹿をする者はいないという認識でいる。

 一応、リンドウさんに事実確認をしたところ「そんな訳あるかい」とのこと。世間で言われていることは単なる噂だと分かったが「けど誰かはやるかもしれんな」と笑いながら言われたので、あながち間違いとも言えないのかもしれない。

 イノリノミヤ神教信徒は真面目であるがゆえに、実は結構過激なのだ。

 神社前での祈り方は既に聞いていたので、それを行う。ひざまずいてうつむき、組み合わせた両手を額につけて瞑目めいもく。祈りが済んだら、また狼人の女性のところへ行く。

 お布施は禁止されているので、俺の個人的な感謝の気持ちとして、信徒会の所属者にはお手性のお菓子をプレゼントしている。

 今日も暑いですねと声を掛け【異空収納】から取り出したミルクアイスキャンディーを狼人の女性に渡すと、一口食べて大感激された。

「これはどちらで買えるのですか? 信徒会の皆にも教えてあげたいのですが」

「これは俺が作ったものなので、売ってないんですよ」

 狼人の女性は俺が作ったと知って驚いて、買えないと分かってがっかりしてと、僅かな間に表情と動きがコロコロと変わって忙しかった。

 【異空収納】が使えるか訊くと、小首を傾げて「はい、使えますけれど」との返答があったので、面白い動きを見せてもらったお礼に、俺の【異空収納】に保管してあったミルクアイスキャンディーを三十本ほど渡した。

 アワアワしながら遠慮している姿が可笑しくて笑いながら延々と手渡し続けた。

 人を驚かせるのは楽しいし可笑しい。フィルによれば、俺は幸せ愉快犯とのこと。面白いあだ名をつけられたものだと思う。

「信徒会の皆さんでどうぞ。いつも掃除をありがとうございます」

「こちらこそありがとうございます! 皆喜びます! あの、お名前を伺っても? 私はローズと言います。信徒会の会長をしております」

「会長さんでしたか。俺はユーゴと言います。この街を拠点にしている冒険者です。それじゃあ、また」

 ローズさんに何度もお辞儀をされながら、俺はイノリノミヤ神社を後にした。

 ジョギングの再開と共に、俺はまた情報の整理を始めた。
 
 
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