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カナン大平原編

29.カナン大平原を越えよう(29)

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 ローガ一味を発見したのは翌日の昼だった。カナン大平原の中央目印だというオベリスクを思わせる石柱。

 その黒く滑らかな石碑せきひらしきものを越えてしばらくしたところで、ローガ一味は車座になって食事をとっていた。

 発見したのはヤス君。隠れる場所も何もないので、探知で気づいてからは比較的背の高い草むらを、匍匐ほふく前進で移動しながら近づいた。

 【箱庭】で移動する方が良いのだが、仮に使えない場合どうするのかという訓練も兼ねていたので敢えて使わなかった。

 残り五十メートルほどまで近づけたが、ローガ一味が周囲を警戒しだした。どうやら探知を使っている者がいた模様。

「へー、優秀っすね。もう気づかれました」

「あ、やっぱそうなんだ。何人いるか分かる?」

「二十四人っすね。【箱庭】が寿司詰め状態になりますよ」

「積み重ねれば大丈夫だろ」

 すっ、とサクちゃんに視線が集中する。

「最近、サクちゃんのサイコパス値高いよね」

「僕もそれは思う。しみじみ思う」

「サクやん、人は布団や座布団じゃないんすからね」

「フハッ、やめろ。子どもを諭すように言うな。情操教育いらん」

 緊張感がないまま接敵。臨戦態勢を整えた敵が数人こちらに向かって駆けてくる。

 ヤス君が【箱庭】の出入口を出したので「それじゃお願いね」と声を掛けて俺はその中に入った。

 皆の返事が出入口が閉じるまで聞こえたのが少し面白かった。

 ヤス君との打ち合わせでは、敵は上から降ってくるはずなので、部屋の中央付近に【過冷却水球】を設置していく。

 間もなく、手足をばたつかせ叫び声を上げながら一人目が降ってきた。そのまま【過冷却水球】に直撃。何個かぶつけて体育座りさせて拘束し、口も塞いで移動。

 そうこうしているうちに二人目が降ってきたので、また同じようにする。武器の曲刀も手放されているので、一応凍りつかせて逆方向に寄せる。

 驚いたのが、二人目が心詠唱で石礫いしつぶてを放ってきたこと。こういうこともあるのか、と思いつつしっかり意識を刈り取らせてもらった。これからは全員そうしよう。

 部屋の隅から順に一人、二人ときっちり並べていく。その整頓作業が完了した頃に三人、四人と降ってくるので段々楽しくなってくる。

 なんとなく、反対側の隅には一人分の余裕を作っておこうと思う。最後に長い棒を嵌めたら全消しだな。とか馬鹿なことを考える。

 実際は、ぎゅうぎゅう詰めが可愛そうだからそうしているだけで、他意はない。十五人目をカッチリ嵌め込んだところで、敵が落ちてくる間隔が狭まった。

 落ちものゲームのレベルアップみたいだな。

 なかなか楽しませてくれるじゃないか。と、心でニヤけていると、夢で見た赤毛の男が仰向けに降ってきた。
 
 
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