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それぞれの成長 パーティー編

7.それなりに派手なのに影が薄い(3)

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 どうにか声掛けが間に合った。サクちゃんが飛び掛かってきた右の一頭を足先から滑り込むようにして躱し、半月斧を通り過ぎ様に横薙ぎに振る。

 それを横目で見つつ、俺は襲い掛かってきたドーベルリザードに向かい両手の平の間から新術【迅雷ジンライ】を放ちつつバックステップ。黄色い残光の帯を引いて【迅雷】がほとばしりドーベルリザードに直撃する。

 ジジジジッと音が鳴り、ドーベルリザードは体表に細かな火花と稲妻を走らせて痙攣。光の明滅が終わると煙を上げて地に倒れ伏した。

 う、うわー、恐ろしいなこの術……。

 観察も程々に残り一頭に目を遣ると、サクちゃんが半月斧の柄で突進攻撃を弾いているところだった。俺はそれを見ながら【障壁】を体の周囲に纏う。

 その後【浮遊】で僅かに体を浮かし、風術推進で高速突進を仕掛け、攻撃を仕切り直しに着地したばかりのドーベルリザードの顔面に【砕破】を打ち込んだ。

 軽快な破裂音を発して、ドーベルリザードの頭が半壊。軽く血飛沫が飛んだが【障壁】が受けてくれているので問題はない。

 腕を振り抜くと同時に術を解除。慣性で流れる体を着地と同時に足でブレーキをかけて止める。加速が凄くてちょっと怖かった。

 額の冷や汗を袖で拭いながら、ふぅっと息を吐く。

「な、何だ今の⁉ 【疾駆】じゃないよな⁉」

「ユーゴ⁉ 凄い速かったよ⁉」

 肩で振り落とされまいと必死になっていたサブロも「ピッピギピー⁉」とおったまげーみたいに鳴く。どこで覚えるんだそんなの。

 俺は驚く二人に向かって肩を竦める。

「新術だよ。俺はヤス君の言ってたイメージが掴めなくて、転移が使える気がしなかったから、高速移動に切り替えたんだ。そしたら今の術が出来た」

「それ、俺にも使えるか?」

「風属性を推進力に使ってるから、難しいかな」

 サクちゃんが肩を落としたのとは対照的に、フィルが目を輝かせる。

「風属性ってことは僕にも習得のチャンスはあるってことだね⁉」

 俺は【浮遊】で体を浮かし、素早く移動しながらドーベルリザードの死骸を【異空収納】に収めていく。二人が呆気にとられた様子になる。

「見ての通り、俺は無属性術で体を浮かしてるから念動力を使えないと習得は無理だね。でもフィルなら他に方法があるんじゃないの?」

「風術で空を飛ぶのはコントロールが難しくて事故が多いんだよ……。というか、なんでそんなに平然と空中浮遊できてるのさ⁉ おかしいだろ⁉」

「どうやるんだ⁉ 俺も飛びたい!」

 フィルが地団駄を踏み、サクちゃんが息を吹き返す。なんだかこういうのも恒例行事みたいになってきたな、と思う。

 結局この日は四十一階層の転移装置までで終了し、二人に術のコツを教える羽目になった。

 おかしいな。俺は【迅雷】の威力を試すはずだったんだけどな。

 ダンジョンを出るまで、遭遇した魔物相手に何度か使ったのだが、二人の【迅雷】への反応が余りに薄くて、少し残念な一日だった。
 
 
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