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それぞれの成長 パーティー編

13.ダンジョンはゲーム感覚で入る場所ではない(2)

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 サクちゃんがサブロをベッドの上に置き、隣に腰を下ろして撫で始める。

「はぁー、もう完全に竜の子供だよなー。格好良いよなー」

「ああ、サクちゃん、竜が好きなんだ。それでか」

 俺はサブロを挟んでサクちゃんの隣に座る。撫でられて目を細めているサブロのお腹を指の腹で掻くと、サブロはコテンと寝そべった。

 もっと掻いて、とねだっているように見える。サクちゃんがそんなサブロの様子を見て微笑む。

「竜は、そうだな、好きだな。だが、竜に限ったことじゃないんだよ。特殊な生き物に憧れてるんだ、俺は。例えば、北欧神話に出てくるフェンリルとかスレイプニル、エジプトだとホルス、国は知らんが、グリフォンやフェニックスとかな」

「なるほどー。神話好きだったんだね」

「ああ。今じゃ考えられんが、子供の頃は幻想世界を夢見てたんだよ。小学生の頃なんて、飼ってた猫が寝て起きたら虎みたいに大きくなってるんじゃないかって真剣に思ってたからな」

 サクちゃんが眉を下げて笑う。

「どうせなら、虎みたいな魔物を従魔にしたいな。昔夢見てたことが、ここなら現実にできる。虎なら背中にも乗れそうだしな」

「じゃあ、従魔の勾玉が二つ以上は必要になるってことだね」

 従魔の勾玉? とサクちゃんが訊き返してきたので、それに関しての説明をする。事情を話し終える頃に、扉が三度ノックされた。

 返事をすると、扉が開いてフィルが部屋に入ってきた。

「分かったよ。ウェズリーダンジョンでも四十階層で従魔の勾玉がドロップするみたい。共通レアドロップなんだって」

「共通ってことは、どこのダンジョンでも落ちるってこと?」

 フィルが自分のベッドに腰を下ろして「うん、そうらしいよ」と首肯する。

「アルネスダンジョン四十階層限定レアドロップは『狂気の山高帽』と『気狂い曲芸師のナイフ』で、どっちも装備すると巧力が十上昇するんだって」

「え、能力値上昇すんの⁉ ドロップ装備凄くない⁉」

「そうなんだよ。盲点だったけど、階層主って結構良い物落とすみたいでさ、特に三十階層は人気。四十階層以降は事故死する確率が高いのと苦労に見合わないから不人気なんだって」

 ウェズリーダンジョン四十階層の主であるマーダードールベアのレアドロップは『ドールコア』と『殺人熊の手』とのこと。ドールコアは人形の核にすると命令可能な無機物生命体を作れるアイテムで、殺人熊の手は手袋型の武器らしい。

「レアドロップがあるってことは通常ドロップもあるってことだよな?」

「うん、ある。だけどそれは周回してれば嫌ほど見ることになると思うから、人目の少ない今のうちにダンジョンに向かっちゃおう。サブロは目立つから」

「ちょっと待って、周回って?」

「従魔の勾玉がないと、サブロが目立ってしょうがないでしょ? 魂格が上がる度に大きくなるとしたら、宿に泊まるのも難しくなっちゃうんだからね」

 言われてハッとした。確かにそうだ。闇竜というくらいだからかなり大きく成長しても不思議はない。外に置いて自分だけが街に入ると言うのも忍びないし、何より心配だ。結局は従魔の勾玉を入手する必要があるという訳だ。
 
 
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