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それぞれの成長 パーティー編

19.マーダードールベアーズアトラクション(4)

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「思ったんだけどさ、ここって各能力値の鍛練になってない?」

「む、言われてみればそうだな。ファーストステージが脚力、セカンドステージが腕力と体力、ラストステージが巧力か」

「あー、本当だ。よく気づいたね、ユーゴ」

「なんとなくね。作ったのは間違いなくこの世界の神でしょ? 何かしらの意図があるんじゃないかと思ったら、そういう結果に結びついたんだよね。ほら、命懸けの鍛練ってさ、能力値の伸びが大きくない?」

 二人とも首肯した。サクちゃんはドグマ組長との戦闘後、フィルはこのセカンドステージをクリアした時点でステボを確認し、能力値の上昇に目を見張ったと答えた。

「じゃあ、ここって神様が用意した鍛練場なんだね」

「だと俺は思う。下層に入る前ってところが、特に」

「そうだな。中層を楽に越えれるくらいの能力値になると、普通に鍛練してても伸びが悪くなってくるもんな」

「へー、そうなんだ。僕はまだ腕力と脚力は普通に伸びてるよ。君たちと違って、筋トレが甘いからなんだろうね。……で、誰から行く?」

 俺が挙手し、サブロを抱っこした状態で綱に足を載せ、すぐに【浮遊】を使ってゴール。二人がクリアするのを座って待つ。

 二番手はフィル。風術を上手く使ってバランスを取りながら着実に進む。

「ユーゴ!」

 残り三十メートルほどになったとき、何を思ったのか、手を振って声を掛けてきた。その所為でバランスが崩れる。

「ちょ⁉ 何やってんの⁉」

 焦って立ち上がり、救いに向かおうとしたが、フィルが綱の上で跳躍した。その直後、加速してゴール地点に飛んできた。「うわああ」と二人で絶叫する。

 俺は慌ててフィルを受け止める。ゴール地点はアトラクションルームの出口と思しき両開きの扉があるだけのさして広くもない足場。あって二十五平米くらいだろう。

 位置がずれていれば落下。勢いを止められなければ扉か壁に衝突。俺がいるからしたことなんだとは思うが、こんな場所で実験なんてしなくとも良いだろうに。

「危ないことするなー。【風壁】の裏から突っ込んだんだろ?」

「当たり。何枚か重ねてアクセル掛けた感じ。実は高い所が苦手でさ、もう足がガクガクしちゃってて、これは無理だと思って、一か八か」

 フィルは青い顔をして腕の中で震えていた。高所恐怖症だったか。

「気遣いするなって言ってんのに、まだ我慢してんのか」

「仕方ないだろ。我慢しないとクリアできないんだから」

 フィルは仏頂面で言う。地面に下ろすと、すぐに扉のある壁際に移動して腰を下ろした。壁を背もたれにしてげんなりしている。気づかなくてごめんな。

 こりゃ、アトラクションルームを周回するのは無理……ん?

 俺はまたも顎先に指を当てる。パーティーだと時間を食うが、俺とサブロだけなら物凄い速度で周回可能なのではないだろうか。

 【浮遊】を使ってもペナルティーは発生していないし、もしこれでドロップアイテムまで出たら、パーティーを二つに分けるというのも手かもしれない。

「ユーゴ」

 声を掛けられて顔を上げると、フィルが綱の方向を指差していた。サクちゃんがスタートしたのだと思い振り返ると、中間地点の綱に両手でぶら下がっていた。

「え、何してんの? ていうか、もうあんなとこにいんの?」

「全力疾走してジャンプしてぶら下がったんだよ。体操選手かって思った」

 サクちゃんは鉄棒の逆上さかあがりをするように綱の上に体を載せた。そこから器用にバランスを取ってまた綱の上に立った。

 凄いな、と感嘆の息が漏れたのも束の間、サクちゃんが綱の上を走り出す。そして途中で跳躍し、そのままゴール地点に到達した。
 
 
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