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それぞれの成長 パーティー編
26.精神感応はヤス君の旅を見せる(3)
しおりを挟む「信じるかどうかは任せるけど、全部本当。俺がここにいるのは、サーヤの遺したものを知りたくて、いつかシンドゥー王国を旅するつもりだったからだよ」
でも、とヤス君は肩を竦める。
「話を聞く限りじゃそのシンドゥー王国は内乱中な訳だろ? 旅はしばらくお預けだなって思ってる。ただサーナと会えたから、別に当分はしなくても良いかなとも思ってるけど」
ヤス君は照れ笑いしながら頬を掻く。確かに見間違えるほどそっくりな子孫と出会ったんだから、目的は達したようなもんだなと思う。羨ましい。
「ヤスヒト様、いえ、ヤスヒトは『自動車』という乗り物を作れる?」
ヤス君が「は?」と目を丸くして首を傾げる。
「どうしたんだよ急に?」
「答えて!」
凄い剣幕で言われてヤス君が「う」とたじろぐ。
「まぁ、本物は無理だけど作れるな。さっきのも二輪だけど『自動車』だし」
サーナが「やっぱり! あれがそうなのね!」と言ってヤス君に詰め寄る。
「初代様の残した異世界物語の中に出てくるの! それに乗って『ドライブ』っていうのを楽しむって! ヤスヒトは本当に異世界から来た人なのね!」
「いや、だから、最初からそう言ってるだろ」
「だったら、お願い! シンドゥー王国を救うのに力を貸して! 『自動車』って凄く速い乗り物なんでしょう⁉ それがあれば戦えるわ!」
ヤス君は呆れたような顔で「気性まで遺伝してんのかよ……」と呟く。それからサーナの肩に手を遣り押し返すと、深々と溜め息を吐いてかぶりを振った。
「救うって言うけど、どうするんだ? 姉ちゃんを殺すのか? 悪いけどさ、俺は誰が王だろうが別にどうでもいいんだよ。シンドゥー王国が存続さえしてれば旅行はできる訳だし、変に首も突っ込みたくない訳」
「そんな⁉」
「まぁ落ち着けって」
ヤス君は興奮するサーナに何があったかを最初から話すように言った。事情を聞いた上で、どうするかを考えるとも。サーナは目を細め、ヤス君に疑わしげな視線をぶつける。
「考えるだけ、とは言わないわよね?」
「あのさ、確認だけど、日サロ行ったサーヤじゃないよな?」
日サロ? とサーナが眉を顰める。ヤス君は「何でもない」と言って手を振る。どうやらサーナはサーヤと受け答えまで似ているようだ。
「とにかく、話を聞いた上で判断するから、さっさと話せ」
「王族に命令って、あんた相当ね。まぁいいわ。私もそっちの方が気が楽だし」
「王女が聞いて呆れるな」
ヤス君の軽口に「うるさいわね!」と言い返し、サーナが視線を落とす。
「さっきも言ったけど、始まりは一週間前の王殺しよ。父様は可もなく不可もなくって感じの人で、よくマリーダから『王らしくない』って叱られてたわ」
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