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それぞれの成長 元戦乙女隊編
23.成長する英雄(3)
しおりを挟む「中にいるのはレイジトロルっていう、三メートル近くある太っちょでつるっぱげの巨人だよ。体が真っ赤で、興奮してるというか、怒り狂ってる。なんというか、ただ棍棒を振り回しているだけの乱暴者みたいな感じだね」
「ええと、これは飽くまで仮に、という話なのですけれど、ユーゴさん抜きで戦った場合、アタクシたちだけでどうにかできますかしら?」
俺は顎に手を遣り「んー」と少し考える。この女子たちのパーティーなら攻略は容易だと思うのだが、訊かれたからには真面目に答えたい。それぞれの持つ武器や担当などを考えてシミュレートしてから口を開く。
「余裕でいけると思う。イザベラが前衛、中衛はエリーゼとニーナ、後衛がレノア。イザベラは大剣だからガンガン攻撃をぶち込んでいけばいいよ。長剣と軽盾装備のニーナとエリーゼは敵の意識がイザベラに向いている間に死角や隙を突いてダメージを与え続ける役割に徹する感じかな」
「アタイ、あんまり防御は得意じゃねーんだけど、一人で大丈夫かな?」
「攻撃を受けたらすぐに中衛と交代すればいいんだよ。ニーナとエリーゼは全力で攻撃して敵の注意を引くように動く。その間、イザベラは中衛に移動したレノアに回復してもらう。レノアは三人の邪魔にならない程度に攻撃術をぶつけていけばいいね。前衛二人が被弾したらエリーゼが回復術で対応しつつ牽制に切り替えると安全かな」
「エリーゼと、違う意見、だね」
「そうだな。私はレノア一人を後方支援要員にした三前衛で考えていた。その方が狙いがばらけて良いと思うのだが」
「うん、それなら中に入ってシミュレートしてみればいいよ。それぞれ想像で戦闘してみて。イメージトレーニングは大事だからね」
「ちょ、ちょっとお待ちください。まさかユーゴさん、お一人で戦うのですか?」
俺は「そうだよ」と首肯して扉を開けた。一面真っ白な立方体のような大部屋。階層主の部屋はすべて同じ。とにかく広い。そして中に入るまで主は一切動かない。ただ外を睨みつけているだけだ。
「そ、想像していたよりも棍棒が大きいな」
「う、うん。主と、同じくらい、ある」
「あれをね、めちゃくちゃ振り回してくるんだよ。しかも結構太いでしょ? 至近距離で横薙ぎに振られたら受けるか跳んで避けるしかないんだよね」
「確かに、下手に後方に跳ぶと、最も打撃力のある位置で殴りつけられてしまう可能性がありますわね。素早く下を潜り抜けるという避け方はどうでしょう?」
「それはあんまりお勧めできないかな。もし横薙ぎと振り下ろしを見誤ったら、潰されて死んじゃうよ。相手が大きいと特になんだけど、攻撃時は視界が狭まるんだ。だから判断を誤り易い。なるべくリスクの少ない方法を取るべきだよ」
さて、と言って俺は一歩踏み出す。
「やるとしますか。あ、手は出さないでね。試してみたいことがあるから」
レイジトロルが、ウオオオオ、と雄叫びを上げて棍棒で床を叩きつける。俺は体に【障壁】を纏い【浮遊】を発動。そして右手の中で【迅雷球】を発動し、棍棒を振りかぶって歩み寄ってくるレイジトロルに向かい風術推進で全力加速する。
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