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明かされる真実編

19.はじめてのおつかい(4)

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「おい! そこの二人!」

 突然、聞き覚えのある野太い声が背後で響いた。振り返ると、不審者を見るような目をしたジオさんが大股で歩み寄ってきていた。

「そこで何をしている!」

 そう問われたのは、間違いなくリンドウさんとスズランさん。二人も声に反応して既に振り向いていた。

「ああ、なんや、ジオか。わしや」

 リンドウさんが中国被り面を脱ぐ。すると、ひょっとこのお面が出てきた。

「誰だよ!」

 ジオさんに問われて「すまんすまん」と、ひょっとこのお面を外すと、サングラスと付け髭で飾られたリンドウさんの顔が現れる。

 ジオさんは声の時点で気づいていたのか哄笑した。

「何の悪ふざけですか、リンドウさん」

「いや、それがな――」

「しっ! 出てくるぞ!」

 スズランさんに注意され、二人が黙る。と、ほぼ同時にリンドウさんに手招きされてジオさんが路地に駆け込んだ。

「ジオ! お前、これ被れ! あとこれ着ろ!」

「え⁉ な、何で⁉」

「ええからよせえ!」

 リンドウさんが【異空収納】から中国被り面と黒いローブを取り出し差し出す。ジオさんは戸惑いながらもそれを受け取って着用した。

 路地から顔を出す異様なトーテムポールが三段になる。

 間もなく店の扉が開いて、ウイナちゃんが半べそをかいて出てきた。その頭をサツキ君が撫でている。

 そして何故かボンゴイさんも半べそをかいて出てきた。最後尾はサイネちゃんで、手を伸ばしてボンゴイさんの背中を撫でている。

「ボンゴイ、怖いと言って悪かったのじゃ」

「ううん、いいのよ。自分でも分かってるから」

「生まれ持ったものはしょうがないのですよ」

「ありがとう、サイネちゃん、優しいのね」

 ボンゴイさんは、所謂いわゆるオネエさんだ。とても繊細で優しい方なのだが、外見とのギャップで辛い思いをされている。

「ボンゴイ、ウイナはお肉が足らなくなったらまた来るのじゃ。もう友達なのじゃ」

「ウイナちゃん……」

 ボンゴイさんが涙ぐむ。それを見て俺まで涙ぐむ。振り返ると、中国被り面が三つ震えていた。感動が台無しだよ。

「ありがとう。そのときはお菓子を用意して待ってるわね。おつかい頑張って!」

「うむ、ありがとうなのじゃ! それではまたなのじゃ!」

 ウイナちゃんは手を振って歩き出す。それをサイネちゃんに「そっちは違うのですよ。お野菜のお店はあっちなのです」と止められて慌てて戻る。一行はサイネちゃんの案内で次の目的地、青果店へと向かった。

「よし、次は青果店だな。どの店に行くと思う?」

「分からん。しばらく歩いて追うしかないやろ。ジオ、お前暇か?」

「え? いや、暇じゃないっすよ。これでも仕事置いて来てるんですよ? 黒いローブ姿の、顔を隠した二人がいるって聞いて、すっ飛んで来たんですから」

 アルネスの街では、ハンを名乗った黒いローブの男が指名手配されている。それだけならいざ知らず、顔まで隠していれば怪しまれるだろう。今はそれが三人。

 いつの間にやら、辺りには人だかり。それも冒険者らしき者たちが路地を囲うような状態。それはそうだろう。指名手配犯は名を上げる格好の獲物でもある。

 剣呑な雰囲気が漂う中、リンドウさんが手の平を拳の腹でぽんと打つ。

「よし、スズラン。三人は探知で追っとるから、少し飛ぶぞ」

「うむ、頼む」

「え⁉ あ、ちょっと⁉」

 リンドウさんとスズランさんが【影転移】で移動する。やはり俺も一緒に連れていかれたが、移動したのはすぐ側。一つ先の路地だった。

「二人逃げたぞ!」

「こいつは逃がすな!」

 そんな声が上がり、集まった冒険者たちに襲撃されるジオさんの姿が確認できた。ジオさんは「馬鹿野郎! 俺だ!」と叫んでいるが、中国被り面の効果は絶大なようで、誰にも分かってもらえていなかった。
 
 
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