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第六章 商業ギルド対立編
第136話 ユートピア商会
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子供たちが帰ったその日、悠斗は従業員に【生活魔法】を施すため、従業員の部屋を一部屋一部屋訪れている。
「お休みのところ申し訳ございません。皆様に【生活魔法】を付与して回っているのですが……。」
「悠斗様! わざわざこんなところに足を運んで頂きありがとうございます! 主人とカイロはご迷惑をかけしておりませんでしょうか?」
今話しているのは、我が従業員、カイロくんの母親、トリアさんだ。
ちなみにこのトリアさん目と手、心臓に疾患があり、この社員寮に来たときには、ほぼ末期のような状態だった。初めて会った時は、正直、どうしたものかと驚いたものだ。
とりあえず、応急措置としてトリアさんに【聖属性魔法】をかけ、俺特製の上級ポーションを飲ませてあげることしかできなかったが、目も見えているようだし、手も自由に動かせるようなっている。体調も良さそうだ。
これも、カイロくんや、ラオスさんの献身さあってのことだろう。カイロくんと、ラオスさんの献身さには言葉も出ない。俺も見習おう。
「いえいえ、カイロくんや、ラオスさんもとても頑張ってくれています。これも奥様の教育が良かったためでしょう。こちらこそ、よろしくお願いします。」
そう言って、トリアさんに視線を向けると、トリアさんの目には涙が浮かんでいた。
ちょっと止めてほしい。
ただ、カイロくんとラオスさんの現状をありのままに報告しただけでこれである。
ちなみに、こんな感じの従業員の家族は思いのほか多かった。中には、片腕や片足を失っている方もいたほどだ。モンスターに襲われ、片腕や片足を失う人は珍しくない。
あまりに居た堪れなくなった俺は、応急処置として俺特製の上級ポーションを飲ませた後、夜従業員たちが寝静まった頃を見計らいカマエルさんを召喚、迷宮の階層を1階分丸々明け渡すことで【天空ノ外科医】を従業員たちにかけてもらった。
朝目覚めた従業員たちの家族は、涙を流し神に祈りを捧げたそうだ。
このことにより、俺を神と崇める信者のような方々が大量発生してしまったが後悔はしていない。
握力や脚力が戻るまで、しばらくの間、リハビリは必要だけど、その家族は涙を流しながら喜んでいた。
迷宮1階層をカマエルにあげるだけで、部位欠損が治り、命が助かるなら安いものだ。
有能な人材も多いみたいだし、これからはスラムの人を優先して採用していこう。
「悠斗様! お店の名前は何にするの?」
こう質問してくるのは、カイロくん(10歳)である。
どうやら、トリアさんとの会話を聞き、玄関まで出てきてくれたようだ。
好奇心旺盛なカイロくんは、既にレベル50を突破する俺の店の主力戦力である。
いや、何と戦うかは今のところ決まっていないのだけど。
しかし、店の名前か……。
全く決めていなかった……。悠斗商会……? なんか恥ずかしい。
悠斗邸? いや、それはただの家の名前である。
どうしたものか……。
「実はまだ決まってないんだ、カイロくんは何がいいと思う?」
俺がそう言うと、カイロくんは真剣に悩み始める。
いや、そんな真剣に悩まなくても、フワッとした感じで思うがままに言ってもらえばいいんだけどっ?
「う~ん。ユートピア商会なんてどうかな?」
確か、ピアという言葉には、仲間という意味が込められていたはずだ。それにユートピアには理想郷と言う意味もある。
悠斗と仲間の理想郷、なかなか良い商会名じゃないだろうか?
「よしっ! ユートピア商会で行こう!」
そう言うとカイロくんは茫然とした顔で立ち竦んでいる。
「えっ、本当にその名前でいいの?」
「もちろんさ。俺の大事な従業員が決めてくれた商会名だからね。」
何より俺も気に入っている。
こうして悠斗の立ち上げる商会の名前が決定したのであった。
あと数日、従業員たちの教育が終われば、いよいよユートピア商会のオープン記念日だ。
もちろん不安はある。しかし、協力してくれる従業員たちのためにも失敗は許されない。
はっきり言って、十数年、彼らを養うだけの蓄えはあるし、何なら、ヴォーアル迷宮でモンスターを狩ってもらえば、冒険者ギルドや商業ギルドがある限り何不自由なく暮らせるんだけど、できる限り失敗はしたくない。もちろん勝算もある。
悠斗は一層気を引き締めると、カイロくんたちに【生活魔法】を付与し、次のお宅に向かうのであった。
翌日、俺は数名の従業員を連れ、オープン前のユートピア商会に来ている。
悠斗は従業員と共にガラス張りの扉からユートピア商会の中に入ると、広い店内を見渡し、まずは入って右手側に目を向ける。
まずは生鮮食品売り場からラックと冷蔵ショーケースを設置していこう。
元の世界にあるスーパーは、入り口に野菜や果物の青果食品コーナー、そこからグルっと回るように肉、魚、お惣菜といった順番に並んでおり、お店の真ん中にはカップ麺やお菓子といった日持ちするものや日用品が置かれていた。
ユートピア商会でも、それにならって商品を配置する予定だ。
とはいえ、まずは商品を置くための棚やショーケースを置く必要がある。
悠斗は棚やショーケースの設置する場所を書いておいた図面を従業員たちに渡すと、図面に書き込まれている設置場所に、収納指輪から取り出した棚やショーケースを次々と取り出していく。
あとは、従業員さんたちと協力してバランスよく棚を配置するだけで、スーパーの土台は完成だ。
ちなみにこの冷蔵ショーケースは、元の世界のコンビニをイメージしたものだ。
ジュースやお酒が並んでいる扉式の冷蔵庫を想像して貰えば分かりやすいだろうか?
この冷蔵ショーケースには【時属性魔法】の【鮮度維持】を付与しているため、扉が閉じている間は、中に入っているモノの鮮度が保たれ、【氷系統の魔石】をはめ込んでいるため、冷たい状態でお客様に品物を提供することができる優れものである。また、バックヤードから商品の補充ができるため、先入先出で常に新鮮なものをお客様に提供することができる。
他にも、アイランドタイプのショーケースや棚を設置することで、まるで本物のスーパーのような店内となってきた。
次に悠斗が向かったのは、入り口から左手前にある家具などインテリア用品を置くインテリアフロアである。
このインテリアフロアには、悠斗と従業員が作成した、家具やカーテン、収納用品や絨毯なども置いていく予定である。
この広々とした空間に、ショールームの様に家具を展示していき、お客の購入意欲を煽っていく。
そして、入り口から左手奥にあるのは、仮設機材を宣伝するための建築資材コーナーだ。
これから販売する仮設機材足場がどれだけいいモノなのかをアピールするため、実際に足場を組み立て購買意欲を沸き立てる。
もちろん、安全帯やヘルメットなどの宣伝も忘れない。小規模な資材館のように、足場や安全帯、ヘルメットなどを棚に設置していく。
さて、ここまで準備をすれば十分だろうか。
従業員たちの研修が終わり、ユートピア商会の開店まであと数日、悠斗はより一層気持ちを引き締めるのであった。
「お休みのところ申し訳ございません。皆様に【生活魔法】を付与して回っているのですが……。」
「悠斗様! わざわざこんなところに足を運んで頂きありがとうございます! 主人とカイロはご迷惑をかけしておりませんでしょうか?」
今話しているのは、我が従業員、カイロくんの母親、トリアさんだ。
ちなみにこのトリアさん目と手、心臓に疾患があり、この社員寮に来たときには、ほぼ末期のような状態だった。初めて会った時は、正直、どうしたものかと驚いたものだ。
とりあえず、応急措置としてトリアさんに【聖属性魔法】をかけ、俺特製の上級ポーションを飲ませてあげることしかできなかったが、目も見えているようだし、手も自由に動かせるようなっている。体調も良さそうだ。
これも、カイロくんや、ラオスさんの献身さあってのことだろう。カイロくんと、ラオスさんの献身さには言葉も出ない。俺も見習おう。
「いえいえ、カイロくんや、ラオスさんもとても頑張ってくれています。これも奥様の教育が良かったためでしょう。こちらこそ、よろしくお願いします。」
そう言って、トリアさんに視線を向けると、トリアさんの目には涙が浮かんでいた。
ちょっと止めてほしい。
ただ、カイロくんとラオスさんの現状をありのままに報告しただけでこれである。
ちなみに、こんな感じの従業員の家族は思いのほか多かった。中には、片腕や片足を失っている方もいたほどだ。モンスターに襲われ、片腕や片足を失う人は珍しくない。
あまりに居た堪れなくなった俺は、応急処置として俺特製の上級ポーションを飲ませた後、夜従業員たちが寝静まった頃を見計らいカマエルさんを召喚、迷宮の階層を1階分丸々明け渡すことで【天空ノ外科医】を従業員たちにかけてもらった。
朝目覚めた従業員たちの家族は、涙を流し神に祈りを捧げたそうだ。
このことにより、俺を神と崇める信者のような方々が大量発生してしまったが後悔はしていない。
握力や脚力が戻るまで、しばらくの間、リハビリは必要だけど、その家族は涙を流しながら喜んでいた。
迷宮1階層をカマエルにあげるだけで、部位欠損が治り、命が助かるなら安いものだ。
有能な人材も多いみたいだし、これからはスラムの人を優先して採用していこう。
「悠斗様! お店の名前は何にするの?」
こう質問してくるのは、カイロくん(10歳)である。
どうやら、トリアさんとの会話を聞き、玄関まで出てきてくれたようだ。
好奇心旺盛なカイロくんは、既にレベル50を突破する俺の店の主力戦力である。
いや、何と戦うかは今のところ決まっていないのだけど。
しかし、店の名前か……。
全く決めていなかった……。悠斗商会……? なんか恥ずかしい。
悠斗邸? いや、それはただの家の名前である。
どうしたものか……。
「実はまだ決まってないんだ、カイロくんは何がいいと思う?」
俺がそう言うと、カイロくんは真剣に悩み始める。
いや、そんな真剣に悩まなくても、フワッとした感じで思うがままに言ってもらえばいいんだけどっ?
「う~ん。ユートピア商会なんてどうかな?」
確か、ピアという言葉には、仲間という意味が込められていたはずだ。それにユートピアには理想郷と言う意味もある。
悠斗と仲間の理想郷、なかなか良い商会名じゃないだろうか?
「よしっ! ユートピア商会で行こう!」
そう言うとカイロくんは茫然とした顔で立ち竦んでいる。
「えっ、本当にその名前でいいの?」
「もちろんさ。俺の大事な従業員が決めてくれた商会名だからね。」
何より俺も気に入っている。
こうして悠斗の立ち上げる商会の名前が決定したのであった。
あと数日、従業員たちの教育が終われば、いよいよユートピア商会のオープン記念日だ。
もちろん不安はある。しかし、協力してくれる従業員たちのためにも失敗は許されない。
はっきり言って、十数年、彼らを養うだけの蓄えはあるし、何なら、ヴォーアル迷宮でモンスターを狩ってもらえば、冒険者ギルドや商業ギルドがある限り何不自由なく暮らせるんだけど、できる限り失敗はしたくない。もちろん勝算もある。
悠斗は一層気を引き締めると、カイロくんたちに【生活魔法】を付与し、次のお宅に向かうのであった。
翌日、俺は数名の従業員を連れ、オープン前のユートピア商会に来ている。
悠斗は従業員と共にガラス張りの扉からユートピア商会の中に入ると、広い店内を見渡し、まずは入って右手側に目を向ける。
まずは生鮮食品売り場からラックと冷蔵ショーケースを設置していこう。
元の世界にあるスーパーは、入り口に野菜や果物の青果食品コーナー、そこからグルっと回るように肉、魚、お惣菜といった順番に並んでおり、お店の真ん中にはカップ麺やお菓子といった日持ちするものや日用品が置かれていた。
ユートピア商会でも、それにならって商品を配置する予定だ。
とはいえ、まずは商品を置くための棚やショーケースを置く必要がある。
悠斗は棚やショーケースの設置する場所を書いておいた図面を従業員たちに渡すと、図面に書き込まれている設置場所に、収納指輪から取り出した棚やショーケースを次々と取り出していく。
あとは、従業員さんたちと協力してバランスよく棚を配置するだけで、スーパーの土台は完成だ。
ちなみにこの冷蔵ショーケースは、元の世界のコンビニをイメージしたものだ。
ジュースやお酒が並んでいる扉式の冷蔵庫を想像して貰えば分かりやすいだろうか?
この冷蔵ショーケースには【時属性魔法】の【鮮度維持】を付与しているため、扉が閉じている間は、中に入っているモノの鮮度が保たれ、【氷系統の魔石】をはめ込んでいるため、冷たい状態でお客様に品物を提供することができる優れものである。また、バックヤードから商品の補充ができるため、先入先出で常に新鮮なものをお客様に提供することができる。
他にも、アイランドタイプのショーケースや棚を設置することで、まるで本物のスーパーのような店内となってきた。
次に悠斗が向かったのは、入り口から左手前にある家具などインテリア用品を置くインテリアフロアである。
このインテリアフロアには、悠斗と従業員が作成した、家具やカーテン、収納用品や絨毯なども置いていく予定である。
この広々とした空間に、ショールームの様に家具を展示していき、お客の購入意欲を煽っていく。
そして、入り口から左手奥にあるのは、仮設機材を宣伝するための建築資材コーナーだ。
これから販売する仮設機材足場がどれだけいいモノなのかをアピールするため、実際に足場を組み立て購買意欲を沸き立てる。
もちろん、安全帯やヘルメットなどの宣伝も忘れない。小規模な資材館のように、足場や安全帯、ヘルメットなどを棚に設置していく。
さて、ここまで準備をすれば十分だろうか。
従業員たちの研修が終わり、ユートピア商会の開店まであと数日、悠斗はより一層気持ちを引き締めるのであった。
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