トラウマを抱えたDKがトイレに入れない話

こじらせた処女

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第一章

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「っ…」
「おい、どうしたんだよ。入らないのか?」
「っぁ、いや…ごめん、先生のとこ行かないといけないの忘れてた」
「ふーん、早くしねーと授業遅れるぞー」
「わかったー」
 生徒が行き交う廊下を歩く。心臓は痛いくらいにうるさくて、息が苦しい。

青いタイルの床を踏めなくなった。その症状の原因は3日前のあの出来事だろう。触れられる、AV、裸体…日常に転がっているあの日を連想させる材料は平気だったのに。
「なんで…」
全身から汗が吹き出る。なのに寒い。
なんで、よりにもよってここなんだ。入口に立つと、あの日の情景が蘇る。鮮明に、声が耳元で響き、あの感触が一気に全身をめぐる。
それでも、排泄するものが無くなる訳ではない。依然として俺の下腹は膨れたまま。
「っぅん、」
2時間目の体育で飲んだ水、ついさっき飲んだ牛乳が溜まっているのだ。結構切羽詰まっていたのに。大きな、おしっこの波。行き場がなくて、思わず足踏みをする。遠くで用を済ませた同級がそこを出る。青いピクトグラムは見えているのに。我慢する必要なんて無いのに。
 俺は、トイレに入れなくなった。

「あー時田、遅かったな。ってどうしたん?」
「わり、ちょっとしんどくて…早退するって言っといてくれね?」
この膀胱を抱えたまま、あと2時間を乗り切るビジョンが見えない。
「わかったー。…大丈夫か?めちゃくちゃ顔色悪いけど。一人で帰れるか?」
「過保護かよ…流石に帰れるわ。まあサンキューな。帰って寝るわ」
「お、おお…お大事にー」

校門を出る付近でチャイムの音が鳴る。本当に帰って良かった。今は歩いているから緩和されているけれど、椅子に座った状態で50分の授業を耐え抜ける自信がない。現に今も、30分の帰宅まで我慢するのにギリギリ、といったところ。出すはずだったものを引っ込めるのが一番苦しい。下腹がひっきりなしに疼いて、気持ち悪い。誰も人が通らないのを良いことに、ギュッと前を押さえる。
「っぅ…」
早く、早く、早く。
「あ、時田、いた!」
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